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社会ノマド、社会の窓、流浪しながら漂泊する社会を見つめます

ヒューマンライツ・ナウの#Me Tooシンポジウム(その2:共同通信の残念な記事)

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 (写真は、共同通信が配信した伊藤詩織氏の発言の風景)

 

前回の6月12日付本ブログ記事において、2018年6月8日に開催されたヒューマンライツ・ナウ主催のシンポジウム「メディアで起き始めた#Me Too 声をあげられる社会をつくるために」のことを取り上げた。

 

自称「ジャーナリズム・ウォッチャー」を標榜するブログ主としては、本シンポジウムの内容もさることながら、各メディアが本シンポをどのように報道したか、についても非常に関心がある。

 

ブログ主もこのシンポを傍聴していたが、シンポには大勢のマスコミ関係者が取材活動を行っていた。受付机上の参加者リストや記者が腕に巻いている腕章などをチラ見したところでは、朝日、読売、毎日のいわゆる全国3紙の記者が参加していることが確認された。

 

おそらく、主催者は全国紙で報じられることを期待していたと思うし、ブログ主としても、全国紙がどのように報じるかウォッチしていたが、結局、全国3氏ではこれまでのところ、本シンポジウムについて一切報じられていない。

 

2か月前に、週刊新潮で福田財務前次官によるセクハラ発言が報じられ、この間、セクハラ問題について膨大な報道がなされたが、全国紙的には、そろそろこの問題も「賞味期限切れ」なのだろうか。ストレート・ニュースとして取り上げるべき新たなネタを期待して記者を取材に出したものの、記者からの取材メモには目新しい内容がなく、各社デスクは掲載見送りの判断を下したのあろう。

 

あるいは、記者は原稿を用意したものの、そこで触れられたシンポの内容が、セクハラ温床のマスコミの体質を批判し体質改善を求めるものであり、まさに自社の体質について核心を突かれており体質改善など不可能だと考えるデスクが、原稿をゴミ箱送りにしたのかも知れない。

 

ともあれ、全国3紙では本シンポは報道されなかったものの、前回のブログ記事では、BuzzFeed Japan、しんぶん赤旗共同通信の3者が報じていることを紹介した。シンポから1週間以上が経過しているが、改めてインターネット上で、本シンポがどの程度取り上げられているかを確認するため、先ほど、「セクハラ」&「シンポ」でGoogle検索を行ってみた。

 

6月17日昼前の時点で、「セクハラ」と「シンポ」の2語のGoogle検索でトップに並んだ29件のうちに、19件が6月8日開催のシンポジウムに関する記事であった。この19件のうち、2件が「しんぶん赤旗」の記事と、それを引用したライブドアの記事である。また、1件は、機関誌連合通信社の記事、もう1件は、手前味噌ながら本ブログsyakai-no-madoの6月12日の記事であった。

 

19件のうち、これら4件を除く15件が、共同通信の記事およびこれを引用した地方紙及びニュースサイトの記事である。具体的には、共同通信社直営の47NEWSサイトが6月8日22時11分に掲載した「性暴力を許さない社会でシンポ セクハラに耐える風潮を変えよう」という記事がGoogleのトップに位置しているが、以下、基本的に本記事を引用した中日新聞東京新聞佐賀新聞沖縄タイムス静岡新聞山形新聞、日刊スポーツ、信濃毎日、福島民友、ロイター、ORICON NEWS、So-netBiglobe、Web東奥の記事が並んでいる。

 

で、今回の本題は、共同通信の記事の内容についてのコメントである。

 

先ほど、「セクハラ」&「シンポ」のGoogle検索の結果、冒頭は共同通信の配信記事であり、以下、中日新聞からWeb東奥まで、「基本的に」冒頭の共同の記事を引用したものであると書いた。基本的に、ということは例外もある。

 

その例外が、日刊スポーツのネット記事である。共同通信社47NEWSには、22時11分掲載の記事が載っているが、日刊スポーツの記事は、共同通信の記事であるが、20時08分掲載となっている。まず、この記事を引用する。

 

セクハラ被害者孤立させない 都内でシンポジウム

[2018年6月8日20時8分]

 

前財務事務次官のセクハラ問題発覚後、メディアで声を上げた被害者へのバッシングが深刻だとして、被害者を孤立させず、性暴力を許さない社会の在り方を話し合うシンポジウムが8日、東京都内で開かれた。

 

エッセイストの小島慶子さんは「メディアで働くとは、セクハラに耐えてなんぼだという暗黙の了解をいよいよ変える時だ」と話した。

 

シンポジウムは「メディアで起き始めた#MeToo 声をあげられる社会をつくるために」。国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが主催した。ジャーナリストの伊藤詩織さん、ビジネスインサイダージャパンの浜田敬子統括編集長らが参加した。(共同)

 

この記事の掲載時間は20時08分となっているが、6月8日のシンポジウムは18時から21時までの3時間にわたって開催され、20時過ぎという時間はシンポの最中である。共同通信は、この後、シンポ終了後の22時頃に再度記事を配信し、多くの地方紙等はこちらの記事を使っているが、20時の時点の記事は途中経過を速報したものである。

 

ふつう、新聞社の記者は、自社の降版時間(原稿最終締め切り時間)を意識して原稿を執筆すればいいが、加盟社によって降版時間が異なることから、共同通信は、大きなイベントや事件があるときには、都度、新しい情報を追記し何度も更新して記事配信し続けることがある。

 

今回のシンポについても、21時~22時頃が降版時間である早版向けに、19時半頃のシンポの休憩時間を利用して記者とデスクとやり取りをし、20時頃に配信したのであろう。伊藤詩織氏が登壇するのはシンポの後半であり、日刊スポーツのネットに掲載された共同記事の執筆時点では、伊藤氏はまだ登壇していない。

 

21時にシンポジウムが終了した後、20時頃の配信記事をリライトし、遅版に間に合うよう22時頃に加盟社に配信した写真付の記事が、共同通信社47NEWSに22時11分に掲載されている「性暴力を許さない社会でシンポ セクハラに耐える風潮を変えよう」記事である。どうでもいい細かな点であるが、共同通信が自社サイト47NEWSに掲載したのが22時11分であるが、加盟社に対しては、自社サイトへの掲載解禁は22時を指定して、21時30分ごろ配信していたものと思われる。というのも、47NEWSの掲載時間は22時11分であるが、いくつかの社(例えば沖縄タイムス福島民友)は、22時00分に記事を掲載している。

 

次に、多くの加盟紙等がウィブサイト上で引用している22時ちょっと前配信の記事を引用する。

 

 

性暴力を許さない社会でシンポ セクハラに耐える風潮変えようと

 

前財務事務次官のセクハラ問題発覚後、メディアで声を上げた被害者へのバッシングが深刻だとして、被害者を孤立させず、性暴力を許さない社会の在り方を話し合うシンポジウムが8日、東京都内で開かれた。「セクハラに耐えてなんぼという風潮を変える時だ」との意見が上がった。

 

シンポジウムは「メディアで起き始めた#MeToo 声をあげられる社会をつくるために」。国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが主催。

 

ジャーナリストの伊藤詩織さんは、元TBS記者に性的暴行を受けたことを告発する著書を出版。シンポジウムでは、被害後に「(加害者から)合格だよ」と言われたことを打ち明けた。

 

ようやく、今回のブログ記事の本題であるが、このシンポに参加したブログ主としては、共同通信が配信し多くの地方紙やネットニュースサイトなどで掲載されたこの記事には違和感を抱かずにはいられない。具体的に言えば、3つのパラグラフで構成された記事のうち、第1パラと第2パラは普通の記事だ。でも、最後のパラグラフは全く持って理解不能だ。

 

伊藤詩織氏が性暴行を受けた後に、「(加害者から)合格だよ」と言われた事実については、伊藤氏がこれまで著書や講演等で触れていない新たな真実として、共同の記者は注目したのであろうか。300字ほどの短い文章で、3時間にわたって議論が繰り広げられたシンポの内容を集約するのはプロの記者にとっても非常に難しい作業であると思われるが、「合格だよ」という発言を特記して取り上げることが、本シンポの趣旨に照らして殊更重要なことなのか、甚だ疑問である。

 

この手のイベントに、言葉は悪いが「客寄せパンダ」的に引っ張り出される伊藤詩織氏としては、自らの言動が社会的に注目の的になることを自覚しており、当日も、発言内容にはとかく気を遣っている様子であったが、パネルディスカッションの際にポロリと発言した「合格だよ」という一言が、取り立てて重要な発言とは思えない。

 

加害者から「合格だよ」と言われた事実を記事の中で紹介することを、伊藤氏自身が強く望んだのであろうか。おそらく、否であろう。たぶん、主催者たちも、脈絡もなく「合格だよ」という発言を取り上げた共同通信の記事のことを苦笑しているに違いない。

 

てなことで非常に残念な共同記事であったが、さらに考察を進めて、ではどうして、「合格だよ」のフレーズが配信されるに至ったのかを考えてみよう。

 

共同通信が記事を配信する時には、加盟社のデスクが喰い付いて、紙面掲載に至るかどうかを常に意識する。どんなに高尚な記事を書いたところで、加盟社のデスクが、ウチの読者にはウケないと判断すれば、配信を受けても記事化されずボツとなってしまう。結局、社会的関心事項に迎合し、一般読者、一般国民のレベルに合わせて配信記事が、加盟社において高い頻度で採用(紙面掲載)されることになる。

 

そうすると、伊藤氏が、レイプ魔・山口敬之に犯された後、レイプ魔から合格判定を受けたという非常にゲセワな逸話が、一般国民ウケするという判断が、共同通信の記者やデスクに働いたのであろう。

 

ここから先は、全く根拠のない妄想的憶測であるが、もしかすれば、この記事を書いた記者自身が、全く同じ経験をしていたのではないか、とすら思えてくる。5月31日付本ブログ記事女性記者不倫事件簿 第8号(共同通信女性記者と公務員の不倫関係)においても紹介したが、共同通信社は女性記者がらみの性的トラブルの多い会社であり、2013年5月には、今藤悟総務局次長券人事部長(懲戒解雇された)が、就活中の女子大生に「個人指導してやる」と言ってホテルに誘って襲いかかるというトンでもない不祥事が発覚して大騒ぎとなった。

 

かかる前科のある共同通信なので、もしかして、6月8日のシンポを取材した記者自身が、入社に際して、人事担当者から性暴力を受け、その結果として合格を勝ち取ったという経験の持ち主であり、その事実を暗に知らしめたいがために、伊藤氏の「合格だ」のフレーズをわざわざ取り上げたのではないか、とすら思えてくる、そんな記事であった。

 

 ちなみに、共同通信がインターネット掲載用の配信記事としては、上記のとおり、伊藤詩織氏について「シンポジウムでは、被害後に「(加害者から)合格だよ」と言われたことを打ち明けた。」の一文で終わっているが、最終稿では、この後に次の2文が続いているようなので、参考までに紹介しておく。

「メディアで働くとは、暴力やハラスメントをのんで生きていかなければいけないのかと、ものすごいパニックになった」と話した。

エッセイストの小島慶子さんは「メディアで働くとは、セクハラに耐えてなんぼだという暗黙の了解をいよいよ変える時だ」と話した。

 

 

散々、共同の記事をディスっていながら、フォローするのもナンだが、「メディアで働くとは、暴力やハラスメントをのんで生きていかなければいけないのかと、ものすごいパニックになった」という伊藤氏のコメントもきちんと取り上げるのであれば、文脈的に「合格だよ」というフレーズの意味も了解可能となるではないか。

 

ヒューマンライツ・ナウの#Me Tooシンポジウム(その1:記事紹介)

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このところ、本業が繁忙期に入って多忙な上に、妻から家事分担を命ぜられたので、余暇時間を確保できず、ブログ更新がすっかり滞ってしまった。更新が滞ると永久休止に陥りかねないので、細々とでも更新を続けるよう努めることにしよう。

 

さて、女性記者のセクハラ被害や不倫事例についての紹介と解説を続け、すっかり「女性記者下半身トラブル専門家」気取りのブログ主であるが、「取材」活動の一環(?)として、去る6月8日(土)に、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ」主催のシンポジウム「メディアで起き始めた#Me Too 声をあげられる社会をつくるために」に参加してきた。

 

18時から21時までの3時間にわたって、専修大学の定員250名程度の講義室がほぼ満員状態であったことから、セクハラ問題に対する社会的関心の高さを伺い知ることができた。

 

このシンポジウムについての個人的感想を述べる前に、まずは、当日の議論の概要について紹介しよう。と思いつつ、既にBuzzFeed Japanの小林明子氏が6月9日付で記事を書いているほか、しんぶん赤旗共同通信の記事がインターネット上で閲覧可能なので、シンポの概要については、これらの記事で把握していただきたい。

 

なお、次回は、本シンポを取り上げた共同通信の記事について考察する。

 

(参考)

BuzzFeed NEWS  小林明子記者

「ダサい武勇伝」をやめない限り、メディアのセクハラ体質はなくならない

https://www.buzzfeed.com/jp/akikokobayashi/mediametoo?utm_term=.pc4QVWOoO#.tmy7Ab4m4

 

新聞赤旗 2018年6月10日

声上げられる社会に 国際NGO セクハラ根絶へシンポ

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-06-10/2018061015_02_1.html

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」は8日夜、セクハラや性暴力を無くす社会の実現を考えるシンポジウム「メディアで起き始めた#Metoo 声をあげられる社会をつくるために」を専修大学(東京都千代田区)で開催しました。

 

エッセイストの小島慶子氏は、「メディア業界のハラスメントに耐えて当然という“暗黙の了解”を変える時だ。そうでなければ、メディアがハラスメントを正面から報道することはできないし、社会は変わらない」と発言しました。

 

ビジネスニュースサイト編集者の浜田敬子氏は、「一人ひとりの働き方を尊重すれば、ハラスメントが生まれにくい職場になると感じる。働き方とハラスメントの問題は表裏一体だと感じる」と話しました。

 

ネットメディアの古田大輔創刊編集長は、日本のメディア業界が圧倒的に男性優位で、世の中に男性中心の雰囲気を生み出していると発言。「メディア自身が、発信している情報が女性の社会進出に寄与できているかを検証すべきだ」と主張しました。

 

ジャーナリストの伊藤詩織さんは、ガーナで5月に開かれた世界報道自由デーについて講演。「#Metooの動きで、スウェーデンでは法律が変わった。同国の首相が、法律を変えることで社会は被害者の味方だと示せると話していたことに、とても感動した」と話しました。

女性記者セクハラ被害事件簿 第24号(朝日新聞の社内セクハラ事例を通じ、同社の体質を考える)

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 (写真は、週刊文春の記事とは直接関係ありません。詳細は、【ブログ主のコメント】をお読みくだされ)

 

 

 【加害者】朝日新聞論説委員(経済担当)の男性

 

【被害者】朝日新聞経済部の女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊文春』2018年5月31日号(5月23日発売)が報道

 

【事案の概要】

朝日新聞社の社内で、上司が女性記者にセクハラをした疑い事例があるということを同社関係者から聞きつけた週刊文春が報じた。本年3月、経済部の歓送迎会が開かれた。女性記者は幹事の一人で、その後、男性の上司とバーに流れた。朝日新聞の中堅社員が証言する。

 

「そこで上司は女性記者に無理やりキスを迫り、自宅にまで上がりこもうとしたそうです。女性記者は、後日、被害を同僚記者らに打ち明けたとか」

 

その後、上司は経済担当の論説委員となり、以前と変わらず働いているという。

 

文春が女性記者に取材を申し込むと、「ごめんなさい、広報を通していただけますか」。上司の男性は「それは広報に聞いて頂けますか」との回答であったという。

 

文春が朝日新聞広報部に確認を求めると、次のような回答であった。

 

「ご質問いただいた個別の案件につきましては、お答えを控えます。当事者の立場や心情に配慮し、保護を優先する立場から、ご質問にお答えできない場合があることをご理解下さい」

 

【ブログ主のコメント】

まず最初に断っておくが、ブログ主は朝日嫌い、朝日憎しの立場の者ではない。むしろ、朝日新聞は、トータルに判断すれば、比較的まともな新聞社だと思っている。正直言えば、ブログ主が知り合いの朝日記者にこっそり提供したネタが、朝日新聞の3本社(東京、大阪、西部)版全てで1面アタマを飾ったことも何度かある。それ位、ブログ主は朝日のよき理解者であると自認している。

 

だけれども、2週間前に、週刊文春に報じられた社内セクハラの一件は余りにもイタダケナイ、というか情けな過ぎる話だ。広報が「当事者の立場や心情に配慮し、保護を優先」てな発言は、見事なまでの最悪の広報対応だ。

 

朝日新聞』2018年5月3日の紙面で、東京編集局長補佐・藤原泰子氏(元人事部ハラスメント担当)が、「セクハラ問題、朝日新聞はどう対応する」という記事で、次のようなことを書いている。

 

朝日新聞社は1999年にセクハラ防止規定を整備。2013年にはハラスメント対応などの事案を専門的に担当する専従チームをおいています。社外からのセクハラに具体的に行動を起こし、それを報じたケースもあります。

 

保健師や外部相談機関などの窓口も用意され、社内の研修を進めています。また、半年ごとに会社に提出する書類で、上司に知られず人事部に相談できる仕組みもあります。社内向けハンドブックでは「セクハラを我慢してまでとってこなければならない契約もネタも本社にはありません」と宣言しています。

 

過去の具体例にあがったケースは、相談を受けていたら、当然会社としてきちんと対応する事案です。 しかし、座談会で話が出たように、それでも窓口への相談をためらう人たちが少なくないのが課題です。1月下旬の本紙フォーラム面の「#MeToo」特集で、メディアで働く人たち191人に聞いたアンケートでも、セクハラに遭ったことがあると答えた119人中7割近くが誰にも相談しなかったと答えています。

 

朝日新聞の記者のうち女性は2割ですが、最近は新人記者の半分近くは女性です。「権力取材」の場から女性を排除することはありえません。

 

また、非公式の場での1対1の取材は、公式発表が真実かを検証し、隠されている不正や背景を明らかにするために必要な手段の一つ。情報源の秘匿は、男女問わず大事なルールです。

 

そういうときに、セクハラから身を守るノウハウをどうやって共有するか。被害相談のハードルを低くし、上司が相談をきちんと受けとめる環境をどうつくるか。会社としても重い課題として取り組むとともに、セクハラを許さない社会にするために、世の中の意識を変えていくきっかけにしたいと考えています。

 

おいおい、元人事部ハラスメント担当が紙面で大見栄切っていることと、週刊文春が報じた社内セクハラへの対応とでは、まるっきし正反対ではございませんか。大人の社会には、オモテとウラ、ホンネとタテマエというものがあって、オモテのタテマエ論の綺麗ごとが、リアルワールドでは通用しないことは当たり前ではござりまするが、それにしても、この2か月間、セクハラ問題が大きな社会問題となり、社会正義を標榜し、セクハラに甘い社会、企業体質を厳しく追及してきた急先鋒の朝日新聞自身が、社内セクハラを放置するという最悪の杜撰な対応をしているという、笑い話にすらならない現実。

 

女性記者セクハラ被害事件簿第23号で取り上げたように、西日本新聞では、送別会の後、後輩女性記者にキスをした男性記者に対し出勤停止10日間の懲戒処分を下している。今回の朝日の論説委員は、後輩女性に無理やりキスを迫っただけでなく、自宅にまで上がりこもうとしたというではないか。西日のキス魔よりも、朝日の論説委員のほうが更に悪質だ。なのに、一切お咎めなし!?

 

本件セクハラをもって、一部のネトウヨが主張するように社長がクビになるような話ではないと思う。だけど、セクハラ加害のオッサンが、何ら処分を受けることなく、毎日、ノウノウと論説会議に参加して社論を決める議論に加わり、そのことに他の論説委員のオッサン、オバハン達の誰も異議を唱えない状況って、今どきのまともな大企業では考えられないことだ。

 

セクショナリズム官僚主義がはびこる朝日新聞のことだから、経済部出身の論説委員に処分を下せば、政治部-社会部-経済部の3部間のパワーバランスが崩れるのでこれを回避することを最優先するという、部外者には全く意味不明のウチワの理屈でもって、関係者に口封じをしてホトボリが冷めるのを待って水に流そう、という魂胆なのであろう。

 

一時期、慰安婦問題で保守反動勢力から叩かれまくった朝日新聞ではあるが、最近は「ノーと言える朝日新聞」をキャッチフレーズに、朝日新聞を中傷する記事に対しては徹底的に法廷闘争に持ち込む強気の経営戦略をとっているらしい。

 

でも、保守反動勢力に対してノーと言うことは当然大事だけど、それ以前にセクハラに対してノーと言える社内環境を整備しなければ、(ブログ主もその一人である)リベラル勢力からもソッポを向かれちゃいますよ。朝日さん。

 

繰り返すが、ブログ主は決して朝日嫌いではなく、むしろ朝日シンパであるが、東京編集局長補佐・藤原泰子氏(元人事部ハラスメント担当)の署名記事に触発されて、おいおい、と言いたくなる事例をオマケとして2例付記しておこう。

 

まず1例目。元朝日新聞記者の秋山千佳氏が、4月17日、フジテレビの番組に生出演し、福田次官のセクハラ発言疑惑についてのコメントとして、新人時代に取材相手からセクハラ被害に遭い、会社の先輩に相談したものの、「我慢しろ」と言われたと告白をしている(冒頭の写真は、秋山氏の告発を取り上げたテレビ番組のシーン)。

 

秋山氏の発言内容を再現すると、「取材相手に突然胸をわしづかみにされ、社に戻って男性の先輩に相談したところ、『これくらい我慢しろ』といわれてしまった」「(当時)その場ではショックで何も言えない。とても受け止められなかった」「私の場合は、ほかの会社の先輩記者に相談して解決を図っていった」とのこと。

 

本件の事実関係等ついて、夕刊フジ朝日新聞広報部に照会したところ、秋山氏の9年間の在籍を認めたうえで、「お問い合わせいただいた番組中のご発言については詳細を把握しておらず、コメントいたしかねます」「なお、弊社は『セクシュアル・ハラスメントの防止に関する規定』を定めており、従業員から被害の申し出に対しては、会社として適切に対処しております」との回答であったようだ。お役所そっくりの見事な官僚答弁だなぁ。。

 

次に2例目。女性記者セクハラ被害事件簿第16号で取り上げた事例であり、事案の詳細に関心があれば第16号の記事を読んでいただきたいが、2008年夏の高校野球選手権の最中の出来事。優勝校である静岡の常葉菊川の選手が、甲子園出場のための宿泊中のホテルで、主催社たる朝日新聞の若手女性記者に公然わいせつ行為を働いたのだ。この事例も週刊文春の報道によって発覚したが、この時の朝日新聞社の対応も、藤原泰子氏の言っていることは真逆の事なかれ主義に徹した対応であった。

 

【本ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/08/194300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/20/204300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/19/120000

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が、朝日と毎日の女性記者にしでかしたこと

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

 

・女性記者不倫事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/06/03/194500

女性記者セクハラ被害事件簿 第23号

【加害者】西日本新聞社の男性記者(40代)

 

【被害者】西日本新聞社の女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

毎日新聞』2018年5月26日 西部本社版朝刊

 

【事案の概要】

毎日新聞(西部本社)が、西日(にしび、西日本新聞の略)の40代の男性記者が、同僚の女性記者にセクハラ行為をしたとして、出勤停止10日間の懲戒処分を受けたとの情報を西日関係者から聞きつけ、5月26日の朝刊紙面で報じた。

 

西日関係者によると、男性は2015年5月の送別会で女性記者にキスをした。今年に入って社内調査で確認したという。

 

毎日新聞の取材に、同社広報部は「『事実関係を公にしてほしくない』という被害者の心情などに配慮し、回答を控えさせていただきます」としている。

 

【ブログ主のコメント】

本ブログにおいては、5月20日まで20日回にわたって「女性記者セクハラ被害事件簿」を、また、5月22日から10回にわたって「女性記者不倫事件簿」を連載してきた。

 

キリのいい回数まで続いたので、これらのシリーズを終了しようと思っていたところであるが、その後もチラホラと類似事例が報道されているではないか。てなことで、今後も、女性記者がらみのセクハラ、わいせつ、不倫等のトラブルが発覚すれば、単発的に取り上げることとする。

 

今回のタイトルは、女性記者セクハラ被害事件簿の第23号である。これまで、1993年に発覚した第1号の事案から、2017年に報道された第20号の事案まで、発生時点、または報道時点順に20の事例を網羅的に取り上げてきたが、21号と22号は欠番状態となっている。

 

実は、21号と22号は、昨年と本年に発覚した社会的に大きな問題となった2つの事例を当初は取り上げることも考えていた。しかし、この2例については、既に膨大な論評が存在するため、現時点において本ブログで紹介することは控えることにした。将来的にコメントするかもしれないし、永久欠番になるかも知れない。この2例とは、レイプ魔・山口敬之が伊藤詩織さんを襲った事例と、前・財務次官福田淳一氏がテレビ朝日女性記者を相手にセクハラ発言をした事例である。

 

今回の西日のケースについてのコメントに戻ろう。本件は、毎日新聞西武本社版のみが報道しており、当事者の西日を含め、他社では一切報じられていない。当事者の西日の判断はさておき、他社はそれ程のニュース・バリューはないとの判断であったと思われる。では、毎日新聞西武本社は、いかなる判断の下で本件を報道したのであろうか。

 

想像するに、毎日の記者が同業の西日記者と飲み会の席で、本件セクハラの話題がのぼり、毎日記者が翌日デスクに報告したところ、「今なお、女性記者のセクハラ事例は話題性が残っているし、商売ガタキでもある西日が本件を秘匿していることも面白い。ベタの扱いでも記事化しよう」という判断だったのであろう。

 

対する当事者の西日では、5月1日の朝刊紙面において、社員に対し、過去に受けた業務上のセクハラ、パワハラ被害の調査を実施、対応策を検討する旨を次のとおり、高らかに宣言している。

 

西日本新聞社も調査へ セクハラ、パワハラ

 前財務事務次官のセクハラ問題を受けて、西日本新聞社は社員に対し、過去に受けた業務上のセクハラ、パワハラ被害の調査を実施します。女性、男性、職場を問わず、任意で報告してもらい実態を把握します。被害があった際、上司など職場の対応に問題がなかったかも含め、対応のあり方と防止策を検討していきます。

 

 西日本新聞社就業規則に「セクシュアルハラスメントの禁止」を定め、社員からの訴えに対応しています。また、社員が加害者になることがないよう、社員向けのサイトで「防止のための心構え」や「避けるべき言動」を紹介し、加害者に対して厳しい対応をとる、と明記しています。

 

今回毎日が報じた社内セクハラの事例は、西日が5月1日の紙面で宣言した調査の一環ではなく、それ以前に発覚していた可能性が高い。女性記者が同僚の男性記者からキスをされたのは3年も前のこと。おそらく、彼女はずっとモヤモヤとしたものが残存し、社の人事担当に被害を相談すべきか思い悩んでいたところに、このところの「#Me Too」運動に勇気づけられて、声をあげたのであろう。

 

西日といえば、わが国においていち早く署名記事制度を導入したり、かつて筑紫哲也が論説記事の質が高いと絶賛するなど、古い世代のマスコミ業界人はリベラルな社風と評価する向きもあるようだ。しかし、最近では、裏取りが不十分なまま暴走するタブロイド紙路線に落伍しているとの意見も耳にする。

 

ともあれ、西日は、「『事実関係を公にしてほしくない』という被害者の心情などに配慮」とプライバシーを理由に本件社内セクハラを非公表扱いとしているが、5月1日の紙面で高らかに実施を宣言したセクハラ、パワハラ調査の結果については、まとまり次第、是非とも紙面で詳説していただきたいものである。

 

 

【本ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930
 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/08/194300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号までの概要
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/20/204300


・女性記者不倫事件簿 第1号から第10号までの概要
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/06/03/194500


・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号
 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500


・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 
 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

女性記者不倫事件簿 第1号から第10号までの概要

本ブログでは、以前、「女性記者セクハラ被害事件簿」を20回にわたって連載した。その続編企画として、昨日まで「女性記者不倫事件簿」を連載し、10件の事案を紹介してきた。今回は総集編として、この10事例について概説する。各事例の詳細に関心があれば、リンク先の本文を読んでいただきたい。

 

「女性記者不倫事件簿」というタイトルだけを見て、下品で悪趣味な企画だという印象を受ける方々が多いと思うが、ブログ主は単なるゲセワな興味本位で本連載を続けてきた訳ではない。

 

本連載は、女性記者が当事者となった不倫事案の詳細な検討が、日本における男女間のミクロな権力関係やジャーナリズムの抱える構造的課題などを分析する上で重要な基礎資料になりうるのではないか、との基本的認識のもとに、不倫問題への警鐘と社会的啓発を目的としたものであることを強調しておきたい。

 

 

財務省エリート官僚と週刊誌女性記者が仲睦しく官僚の自宅から出入り度々の巻

女性記者不倫事件簿 第1号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/22/223500

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/23/235200

週刊現代』2007年1月27日号に「財務省エリート主計官と朝日新聞美人記者の不倫生活」という記事が掲載された。男性は、当時は国家予算を牛耳る主計官、現在、新国立競技場整備の責任者である内閣審議官を務める中川真氏。一方の女性は、「文春の四天王」との異名をもつ、やり手のジャーナリストで、当時はAERAの契約記者であった。二人は、不倫を否定しているが、彼女の部屋から二人が仲良く出入りするところが何度か確認されている。

 

宮崎県知事東国原英夫の自宅に日テレ新人女性記者がお泊り

女性記者不倫事件簿 第2号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/25/010600

2007年2月13日、宮崎県は東国原知事宅に、日本テレビの新人女性記者が21時頃に入室して11時間ばかり滞在し、退室したのは翌朝8時であった。日本テレビは、「国民の関心事である東国原知事の動向を詳細に伝えるべく、担当記者が熱心に取材を行ったものです。今回、取材については軽率のそしりをまぬがれない部分もあったと考えております」、「知事と食事した後、知事とは別の部屋で休んだ。(記者は)東京の本社と原稿のやりとりをしていた」とコメントを発表。

 

上田清司埼玉県知事は、かつて週刊誌女性記者と…

女性記者不倫事件簿 第3号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/26/005600

現在、全国知事会会長の要職につき、47都道府県知事のリーダーとして、地方分権地方財政など諸課題で国との交渉の前面にたつ上田清司埼玉県知事。上田知事が2003年8月に初当選した時には、清新なイメージの「改革派」として名をはせていたが、実は、その時期、週刊誌の専属記者として、芸能などを中心に取材していたに女性と不倫関係にあったことが『週刊文春』の記事で発覚したのだった。

 

テレビ東京女性記者とみずほCB頭取、密会用マンションで逢瀬を重ねる

女性記者不倫事件簿 第4号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/27/111000

リーマン・ショックのきっけとなったサブプライムローン関連の証券化ビジネスで、わが国でも一部金融機関が深刻な被害を受けていた。その一つ、みずほコーポレート銀行で、証券化ビジネスを推進した戦犯である齋藤宏頭取が、テレビ東京の日銀クラブ担当女性記者と不倫関係にあることが、写真週刊誌『フライデー』の激写で発覚した。二人が、路上でキスをするシーンや、密会用のマンションに出入りするハレンチな現場が紙面に大きく掲載された。

 

 

新聞社女性記者との不倫告発文書がばら撒かれた兵庫県警警視

女性記者不倫事件簿 第5号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/28/193000

2008年の暮れ、兵庫県警や在阪のマスコミ関係者に、県警の警視(50歳)と、さる新聞社の20代の女性記者との不倫を記載した告発文書が送付された。しかも、警視が不倫を認めたという手書きの「退職願」が、添えられていたのであった。『週刊新潮』の取材に対し、警視は、退職願は妻の知人に無理やりかかされたものと弁解した。結局、警視は県警の監察から事情聴取を受け、本部長から訓戒の処分も下った。

 

NHK若手女性記者と千葉県警警部補がラブホテルや温泉旅行をお楽しみ

女性記者不倫事件簿 第6号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/29/235736

千葉県警刑事部捜査二課長補佐の男性警部が、NHK入局3年目の独身若手女性記者と不倫関係にあることが発覚し、警部に戒告処分が下された。警部は、真面目な性格でスポーツマンタイプ、一方の女性記者は合コン大好きキャラ。二人は、県内のラブホテルに出入りしたり、群馬県まで温泉旅行に行ったりしていたようだ。

 

東京地検課長との不倫事案を通じて、NHK記者に不祥事が多発する核心的要因を考察

女性記者不倫事件簿 第7号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/30/221000

2016年の年明け早々、東京地検では、総務部の企画調査課長であるベテラン事務官(53歳)が2段階降格となった。表向きの処分理由はパワハラであったが、司法クラブに所属に在籍するNHK女性記者との「不適切な関係」が処分の真相のようである。女性記者は二回りほど若く、2年前の春に司法クラブに異動してきてから関係がスタート。課長の妻が、夫の所持品からNHKのタクシーチケットを見つけ、勤務先に報告したことから発覚した。

 

共同通信女性記者と男性公務員の場合

 女性記者不倫事件簿 第8号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/31/213000

2016年3月頃、福岡市で、共同通信の女性記者と取材先の男性公務員との間に不適切な関係があり、関係者間でトラブルが生じているとの情報が、『ニュースサイト ハンター』の編集部に飛び込んできた。公務員は、不倫は否定したが不適切な関係があったことを認め自ら辞職した。一方、女性記者は特段処分されることなく、福岡を離れ別の勤務地に異動となった。

 

ロサンゼルス市長とテレビ局記者の色恋物語

女性記者不倫事件簿 第9号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/06/01/234152

2005年から2013年までロサンゼルス市長を務めたビヤライゴーサ氏は、同市初のヒスパニック系市長であり、市長時代には数々の政策で業績をあげた全米でも有名な政治家だ。そんなビヤライゴーサ市長であるが、2007年6月に離婚を表明した。原因は、テレビ局の女性記者との不倫であった。交際は長期にわたっていた模様で、発覚後、記者は左遷の憂き目にあい、退職に追い込まれた。

 

米国CIA長官と女性ジャーナリストが愛人関係となり、国家機密が漏洩!?

 女性記者不倫事件簿 第10号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/06/02/222000

2011年9月にCIA長官に就任したペトレイアス氏は、2012年11月に突如辞職した。女性ジャーナリスト(軍事研究者)との不倫関係がFBIの捜査で発覚したことが原因だ。CIA長官就任前のペトレイアス氏は、アフガン駐留米軍の司令官であったが、女性ジャーナリストが2010年の1年間従軍取材中に関係が深まったようだ。彼女が、「恋のライバル」に脅迫メールを送ったことがきっかけで、FBIの捜査につながった。

 

 

【本ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/08/194300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/20/204300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/19/120000

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が、朝日と毎日の女性記者にしでかしたこと

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

女性記者不倫事件簿 第10号(米国CIA長官の場合)

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(写真は、不倫関係にあった米国CIA元長官のペトレアス氏と、ジャーナリストのブロードウェル氏)

 

 

【男】米国CIA長官のDavid Howell Petraeus氏(60歳)(発覚時点)

 

【女】ジャーナリスト(軍事研究者)のPaula Broadwell氏(40歳)(同)

 

【明るみに出たきっかけ】

FBIの内偵調査を受け、CIA長官が辞任を表明した

 

【事案の概要】

2011年9月6日付でCIA長官に就任したDavid Howell Petraeus(デイビッド・ペトレイアス)氏は、イラク戦争やアフガン戦争で活躍した退役陸軍大将であり、軍部だけでなく、政界においても人望が厚く、軍出身の閣僚として将来は大統領候補になり得ると目されていた人物である。

 

そんなペトレイアス長官であるが、2012年11月9日に、既婚女性と不倫していたことを理由として突如CIA長官を辞職した。

 

相手の女性は、ペトレアス氏がアフガン駐留の司令官だったときに同行取材し、ペトレアス氏の伝記も出版していたジャーナリストのPaula Broadwell(ポーラ・ブロードウェル)氏である。

 

二人の出会いは、2007年にさかのぼる。ブロードウェル氏が、ハーバード大学ケネディ行政大学院の修士課程の学生だったときだ。同大学院で講演したペトレアス氏に、ブロードウェル氏が講演後に軍事行政を研究していると自己紹介したのが発端だ。ブロードウェル氏は自分の研究についてペトレアス氏に説明し、同氏はカードを彼女に送った。博士論文についてもアドバイスした。

 

ペトレアス氏が2010年、アフガニスタン駐留米軍司令官に就任すると、ブロードウェル氏は学位論文のための研究結果を本に出版することを決意した。アフガンでペトレアス氏の周辺を取材する異例の許可を受け、約1年間に6回アフガン入りした。

 

アフガニスタンでペトレアス氏はジャーナリストたちと一緒にジョギングしていたが、ブロードウェル氏もジョギング仲間の一人だった。学生時代、陸上競技を得意とし、後にトライアスロンの競技にも出た経験のあるブロードウェル氏は、ペトレアス氏と競り合う快走ぶりを発揮し、そのことが二人の距離を急激に縮めるきっかけとなった。

 

かくして、既婚の二人は、「禁断の恋」に陥っていったが、ブロードウェル氏の「嫉妬」によって破局を迎えることになる。

 

ブロードウェル氏は、ある女性がペトレイアス長官と不倫関係にあるのではないかと疑いを抱き、「恋のライバル」たるこの女性に脅迫メールを送りつけたのだ。女性は脅迫メールを受けとったことを匿名で米連邦捜査局FBI)に訴えた。FBIが捜査を開始したところ、ブーメランのごとく跳ね返り、ペトレイアス長官とブロードウェル氏自身の関係が発覚してしまったのである。

 

(ちなみに、ブロードウェル氏が「恋のライバル」と邪推した女性については、アフガニスタン駐留米軍司令官のジョン・アレン海兵隊大将とも「不適切なメール」をやり取りしていたことが発覚し、こちらについてもFBIが調査する騒ぎとなった。)

 

ペトレイアス長官は同僚に宛てた手紙の中で、辞任の理由について「37年に及ぶ結婚生活の後、私は不倫という大きな過ちを犯してしまった。これは夫としても、またCIAのような組織のリーダーとしても許されることではない」と述べている。

 

ある米当局者によると、米連邦捜査局FBI)はペトレイアス長官が、女性ジャーナリストと不倫関係にあるとの情報を入手し、国家安全保障上の危険の有無を見極めるために調査を行ったという。ブロードウェル氏の自宅も、FBIの家宅捜査を受けたようだ。ペトレイアス長官がブロードウェル氏に送ったメールや見せたノートが情報漏洩の可能性があることも判明した。ただ長官に不正行為はなく、捜査は、あくまで長官が不倫を理由に脅迫される恐れがあったためとしている。

 

二人の不倫発覚後の1か月間、米国の報道番組は、この話題で持ちきりだった。ただ、メディアの論調は、ペトレアス氏は私生活では過ちを犯したものの、イラクアフガニスタン駐留米軍司令官として活躍した英雄であることは間違いない、といったものが大半であった。オバマ米大統領も会見で、ペトレアス氏のスキャンダルが「彼のたぐいまれなる経歴」の中の「ほんの1つの過ちだった、ということに落ち着く」よう願っている、と彼を擁護した。

 

ペトレアス氏は2013年より、南カリフォルニア大学の教授を務めている。2017年にドナルド・トランプ政権が発足した際には、国務長官の候補の一人であった。

 

Wikipediaによると、2015年1月、FBIと司法省が、機密情報漏洩につきペトレアス氏の起訴を勧告、2015年4月23日、連邦裁判所はペトラウス氏に2年間の保護観察と10万ドルの罰金刑を宣告した。

 

【ブログ主のコメント】

スパイと不倫、情報漏洩の話題は、映画の世界でもリアルワールドでも枚挙に暇ない。ソ連国家保安委員会(KGB)はCIA工作員が美女に弱いことを熟知していて、ハニートラップ要員をワシントンに派遣していたようだ。ソ連崩壊後、CIAは初めて女性の民間人偽装工作員をモスクワに派遣したところ、ロシア連邦保安局(FSB)要員と恋に落ちてしまったという話題もある。

 

現場のスパイだけでなくCIAのトップの不倫も歴史上事欠かない。1950年代アイゼンハワー大統領のCIA長官を務めたアレン・ダレス氏と、女スパイ、メアリー・バンクロフト氏の関係しかり。70年代の激動期、CIAの外国首脳暗殺計画などの文書を公開したウィリアム・コルビー長官は離婚して若い女性と再婚している。

 

今回のペトレイアス長官とブロードウェル氏の事例については、ブロードウェルはスパイではなく、ジャーナリスト(厳密には、彼女は職業ジャーナリストではなく、研究者のようだ)であったが、いずれにしても、CIAのトップが、愛人に国家の安全保障にかかわる機密情報をいとも簡単に提供してしまうというのは、組織全体の危機管理意識の低さを見事に表している。

 

ともあれ、米国のケースと比較すると、わが国における女性記者がらみの不倫事案などスケールが小さすぎるように感じられる。わが国では、「西山事件」の判例が尾を引いているのか、安全保障がらみの情報が流出することはない。筆者は、不倫を肯定したり推奨するものではないが、女性記者が取材対象者と不倫をするのであれば、大物を相手に選び、特定秘密の保護に関する法律に抵触しない範囲の機密情報をドシドシ抜いていただきたいものである。

女性記者不倫事件簿 第9号(ロサンゼルス市長の場合)

今回は、2007年に発覚した、米国ロサンゼルス市長とテレビ局の女性記者の不倫について取り上げる。

 

【男】米国ロサンゼルス市長Antonio Villaraigosa氏(54歳)(発覚時点)

 

【女】テレビ局の記者Mirthala Salinas氏(34歳)(同) 

 

【事案の概要】

 

ロサンゼルス市のAntonio Villaraigos(アントニオ・ビヤライゴーサ)市長は2007年6月8日、20年間連れ添った夫人(49歳)と離婚する意向を表明。スペイン語放送のテレビ局「Telemundo 52」では、これを報じるニュースの中で、Mirthala Salinas(ミルタラ・サリナス)記者が「(離婚のうわさは)本当でした。多くの人はあぜんとしています」などとコメント。

 

この時点では明かされていなかったが、その後、サリナス記者こそが交際相手だったと発覚。

 

7月初め、市長はメディアなどの追求に屈する形で、「職務に関係することとは思えないが」としつつ、同記者との不倫関係を認めた。サリナス記者も同時に、「仕事上のつきあいから関係が発展した」と、事実を認めるコメントを発表。

 

サリナス記者は、前年8月、上司に交際の事実を告げ、一旦は市政担当から外れていたが、市政担当時代には市長の出張にも同行していた。2005年には、市長が夜間に一人で同記者のアパートを訪ねる姿も目撃されており、交際は長期にわたっていた模様だ。

 

テレビ局は、7月5日付で記者を休職扱いとし、報道倫理上の問題がなかったか内部調査を行うこととした。結局、サリナス記者はリバーサイドに転勤を命ぜられ、後に退職した。

 

ビヤライゴーサ市長は2005年に初当選し、ロサンゼルス市の歴史上初のヒスパニック市長である。離婚、不倫騒動を乗り切って、2009年には再選し、2013年まで市長を務めた。市長時代には、学校教育、都市交通、公共安全などの分野で数々の成果を上げたと評価されており、2012年9月の2012年民主党全国大会において、ヒラリー・クリントン大統領選挙キャンペーンの全国共同議長も務めた大物政治家である。

 

ビヤライゴーサ氏は現在、カリフォルニア州知事選に出馬中であり、2018年6月5日に予備選挙が実施される。

 

 

【ブログ主のコメント】

ブログ連載の「女性記者不倫事件簿」であるが、国内の事例はネタが尽きたので、今回と次回は米国での事例を紹介する。

 

それにしても、洋の東西を問わず、似たような不倫が発生しますな。

 

わが国での類似事例としては、女性記者不倫事件簿の第2号で宮崎県知事宅へのテレビ局記者のお泊まり、第3号で埼玉県知事と週刊誌記者との不倫について取り扱ってきた。明るみに出ていないだけで、自治体首長(知事や市町村長)が女性記者と不適切な関係に陥る事例は少なからず発生していることは報道関係者などの間ではよく知られている。

 

筆者は、女性記者の不倫事案は、典型的には次の3類型あると説明してきた。

 

 ① 仕事面、生活面などで悩み多き入社間もない20代の若手女性記者が、取材相手であるそこそこの社会的地位にある男性に悩みを打ちあけ親密になるうちに、体を許す関係に発展するパターン

 

 ② 記者として脂が乗った入社10~20年程度の女性記者が、社会的地位と名誉を築きあげた取材相手の巨星(各界のビックネーム)に憧れ、巨星としても愛嬢と同年代か愛嬢より若年であろう記者に情欲をかき立てられ人目を憚られる恋に発展するパターン

 

③ 新聞社やテレビ局の正規雇用記者と異なり、会社の後ろ盾のない契約あるいはフリーの女性記者が、女の武器を活用して取材相手に接近し、枕取材、ハニートラップをしかけるパターン

 

今回のロサンゼルス市長とテレビ局記者の関係は、まさしくパターン②に該当するとみていいだろう。日米で不倫事情は大差ないようだ。

 

そして、第4号記事でも取り上げたが、パターン①とパターン②とでは発覚した場合に、正反対の顛末を辿りがちなことも特徴的である。前者の場合、女性は何らおとがめ無しで男性側が不利益処分されることが多いのに対し、後者の場合は、女性側が配置転換などの不利益を被り、巨星たる男性側は一切社会的去勢を受けることなく平然と乗り切る傾向にある。

 

今回のロサンゼルス市長とテレビ局記者のケースにおいても、女性記者は左遷の憂き目にあって退職を余儀なくさせられたのに対し、市長は悪びれることなく職に留まり続けることができたのであった。不倫の顛末についても、見事に日米共通なのでありまする。

 

【出典】

・『産経新聞』2007年7月8日朝刊

・『読売新聞』2007年7月20日朝刊

wikipedia

   Antonio Villaraigos

   California gubernatorial election, 2018