女性記者セクハラ被害事件簿 第4号
昨日は、女性記者セクハラ被害事件簿 第3号として、1993年2月に報道された石川県警の巡査部長による読売新聞女性記者に対するセクハラ事案を紹介した。今回は、同年12月に報じられた秋田地検次席検事が起こした事例である。
【加害者】秋田地検の中島次席検事(51歳)
【被害者】女性記者
【明るみに出たきっかけ】
写真週刊誌『フライデー』がスクープ報道(発売は、1993年12月24日)
【事件の概要】
1992年11月頃、取材のために秋田市内の官舎を訪れた女性記者に対し、中島次席検事は居間で抱きついて押し倒し、胸を触るなどした。
同じように次席検事から手を握られたり、肩を抱いてキスされるなどの性的嫌がらせを受け、逃げ帰ったという他の女性記者もいたという。
【顛末】
写真週刊誌の掲載号の発売に先立つ10日前の12月14日に、秋田地検は『フライデー』から取材を受け、地検としても内部調査に着手。
中島次席は12月16日から年次休暇を取り、「胃に病変が見つかった」との医師の診断で、22日から入院。事実上、「雲隠れ」か。その2日後の24日に、本件事案について報じた週刊誌が販売された。
24日の記者会見で、秋田地検の検事正は、「上級官庁の仙台高検に調査を依頼した。関係マスコミにも調査に協力してもらい、秋田地検としてきちんと対応したい」と語った。
秋田地検の依頼を受けた仙台高検は同24日、刑事部長らを秋田市に派遣、秋田地検の取材をしていた女性記者のいる報道機関など、関係者から事情を聴き始めた。
仙台高検による調査結果は明らかにされなかったが、中島次席は翌1994年1月10日付で仙台地検に更迭された。さらに、同年3月11日は、法務省は中島次席を1か月の停職処分をうけるとともに、同日、本人が辞表を申し出、数日後に認められた。
【ブログ主のコメント】
前回紹介した石川県警巡査部長のケースと同様に、女性を押し倒して性暴力に及んだ事案である。石川県警巡査部長の事案では、泥酔して抵抗力が減弱した女性記者を部屋まで送ってわいせつ行為に及んだものであったが、今回のケースでは、検事宅に取材に来た女性記者を押し倒しており、微妙に状況が異なる。
石川県警の事案では、加害者・被害者とも深酒しており記憶が曖昧ということもあり、巡査部長は処分されなかったものの、今回のケースでは、女性記者はシラフでの出来事であり、次席検事に弁解の余地なく、当然に処分された。
ここで、次席検事の身分について触れておこう。検察庁法ではなく、検察庁事務章程に定められた職で、高等検察庁及び地方検察庁にそれぞれ1名が置かれ、「所属する庁の検事長又は検事正の職務を助け、また、検事長又は検事正に事故のあるとき、又は欠けたときは、その職務を臨時に行う」のが業務であるが、もはや捜査や公判を直接担当することなく、実態としては、末端閑職管理職である。記者会見に出席し、地検の見解を発表を行うなど、「広報官」としての役割も担っており、日頃から裁判担当記者との関係は密になる。記者たちは、検察情報のリークを期待して、次席検事に接近し、飲みに誘ったり、自宅に夜討ちをかけるのである。明るみに出ていないだけで、中島次席と同様の検事による女性記者へのセクハラはどこでもいたるところで行われているに違い。
なお、仙台地検を退職した中島氏には、後日談がある。退職後、第一東京弁護士会に所属し、いわゆる「ヤメ検」として弁護士稼業に就いていたが、2000年夏、暴力団幹部らと共謀、東京都内の倉庫会社から2000万円の小切手を脅し取ったとして、神奈川県警により恐喝容疑で横浜地検に書類送検されている。
【予告】
今回は、本件事案を報じた写真週刊誌が現時点で入手できておらず、事案の概要等は、簡単な紹介に留まっている。後日、掲載誌を入手出来次第、事案について補足する予定である。
また、次回の第5号では、読売新聞男性記者による同業他社の女性記者へのセクハラ事案について取り上げる。
【文献】
・『朝日新聞』1993年12月25日朝刊、1994年3月12日朝刊
・『毎日新聞』1993年12月25日朝刊
・『読売新聞』2000年8月17日朝刊
・『AERA』1994年1月24日号16ページ
【当ブログ内の関連記事】
・女性記者セクハラ被害事件簿 第3号
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/30/200500
・女性記者セクハラ被害事件簿 第2号
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/29/195855
・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/29/021540
・1993年からの第1次女性記者セクハラ問題ブームを振り返る
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/25/030210
・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930