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女性記者セクハラ被害事件簿 第5号

 

 

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前回の女性記者セクハラ被害事件簿 第4号では、秋田地検次席検事によるセクハラを取り上げた。今回は、警察庁記者クラブ内で発生したセクハラ事案である。

 

【加害者】読売新聞男性記者(35歳)

 

【被害者】日本テレビ女性記者(30代後半)

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊文春』1999年9月16日号で報じられた

 

【事件の概要】

1999年8月31日夜、東京は霞が関警察庁記者クラブ内での出来事である。

 

同日、警察庁の幹部と記者クラブの懇親会(1次会)が開催された後、記者十数人が場所をクラブ内のソファに移して二次会を開始した。

 

懇親会には、翌9月1日から警察庁に配属が決まっていた読売新聞男性記者も参加していた。この読売記者は、1987年に読売新聞社大阪本社に入社し、福井、和歌山、大阪本社社会部を歴任。1998年3月に東京本社社会部に転じ、金融破綻などを取材していた。大阪府警のころは「花の捜査一課」を担当するなど、敏腕の事件記者で、東京が警戒するほどスクープを抜きまくっていたという。

 

そんな読売記者であったが、一次会では目立つ振る舞いはなかったが、二次会が始まると、酒が回ってきたのか態度が豹変する。

 

「自分は大阪でスクープを連発してきたんや。東京モンなんかに取材がでけるか」と毒づいたかと思うと、同席した時事通信の記者をつかまえ、「共同通信があるんやから、アンタらなんか必要あらへん」などと暴言を吐き始めた。

 

同席していた記者達は不愉快になったのか1人、2人と席を立った。すると暴言記者の矛先は、日本テレビの女性記者に向かう。

「何で女がおるんや! 女なんかが取材しとるようだから東京はアカン。」

 

いきなり罵倒された日テレ記者が反論すると、暴言読売記者の態度はますますエスカレート。日テレ女性記者の顎を手のひらで持ち上げたり、肩に手を回したりしながら、「(読売の)系列局なんやから、やらせろ」「おい、ホテルへ行こか」などと、セクハラ発言を繰り返した。

 

女性記者が、いい加減にしてください、と何度注意しても、暴言読売記者は「オンナが何を言っとるんや!」と開き直って、髪や胸、尻などを触り始め、憤慨した女性記者が席を立つまで、卑猥な言葉を大声でわめき散らしていたという。

 

【顛末】

翌9月1日、事態を重く見た記者クラブの幹事社が女性記者から事情を聴取。臨時クラブ総会を招集して、正式に読売新聞社に抗議した。読売側は全面的に非を認め、記者クラブ日本テレビに謝罪した。

 

暴言読売記者は、相当酩酊していて記憶がない状態だったらしいが、社会部長とデスクから厳しく注意され、結局、警察庁担当から外されたようだ。

 

被害者側の日テレ女性記者は、『週刊文春』の取材に対し、「確かに不愉快な行為があったのは事実です。でも、会社間の話し合いも決着してますし、すでに謝罪も受けています。相手の記者の将来もありますので、私の口からは何も申し上げられません」と語ったという。

 

【ブログ主のコメント】

 ふだんは物静かで生真面目な人が、アルコールが入った途端、態度が豹変し、周囲の人に悪態をついたり絡んできたりすることは珍しくない。アルコールの影響で、前頭葉が麻痺して理性のタガが外れ、さらに交感神経の緊張によって情緒が乱れてしまうのだ。タチの悪い酒乱はどこにでもいる。

 

本件は、深酒に起因するいわゆるわいせつ行為に至らない程度のセクハラ言動である。もちろん、女性の立場からすると、酒に飲まれてしまったことは何ら言い訳にならない人権侵害行為であろうが、必ずしも、週刊誌が飛びつくようなネタではない。

 

だけど、本件セクハラは、わが国の捜査機関の中枢、警察庁の庁舎内で発生していること、さらには、加害者・被害者とも日頃は社会正義を振りかざす立場のマスコミ記者であったことから、スキャンダラスでゴシップ性ありと判断されたのであろう。

 

ちなみに、記事では加害者の所属は「読売新聞記者」となっているが、読売関係者なら「彼は、読売新聞大阪本社から出向者であって東京本社プロパーではない」、とこだわるだろう。というのも、朝日新聞毎日新聞など、他の全国紙は「東京本社」「大阪本社」という言い方をしても全国同一法人であるが、読売新聞は、東京、大阪、西部の三本社は、それぞれ資本関係が異なる別法人なのである。従って、朝日や毎日の大阪本社の記者が東京に異動するのと、読売新聞大阪本社の記者が東京に出向するのとでは全く意味が違う。

 

もともと大阪の人たちは、東京に対して一方的にライバル意識とコンプレックス意識を持つ傾向にあるが、本件暴言セクハラ記者も、東京本社の記者に対し負い目を感じつつ、「警察取材では、東京の記者なんかに負けないぞ」と肩肘を張っていたのであろうことが容易に想像がつく。

 

この記者は、東京の人事評価でバツがついて、大阪に送還された後、汚名返上で大活躍されたのだろうか。それとも、腐ってしまったのか、予後が気になるところである。

 

最後に1点、付記。本件を報じた『週刊文春』の記事の見出しは、『「やらせ」より悪質!読売新聞「やらせろ」記者』というゴロ合わせ。テレビ番組では、しばしばやらせが問題となるが、この記事が掲載された時期は、ちょうど、フジテレビの人気番組『愛する二人別れる二人』でやらせが発覚し、「やらせ」という言葉が流行語となっていた時期である。みのもんた美川憲一が司会をつとめるこの番組では、一般公募の夫婦を登場されることを謳い高視聴率を誇っていたが、実際には、偽夫婦を演出させていることが、奥さん役の女性が自殺したことでバレて、突如番組が打ち切りとなったのである。

 

【予告】

今回の女性記者セクハラ被害事件簿第5号はいかがであっただろうか。次回の第6号では、北海道警察の署長が道新女性記者にセクハラし、加害者である署長は自死に至った二重の意味でショッキングな事例を取り上げる。

 

【本ブログ内の関連記事】

女性記者セクハラ被害事件簿 第4号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/01/211700

 

女性記者セクハラ被害事件簿 第3号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/30/200500

 

女性記者セクハラ被害事件簿 第2号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/29/195855

 

女性記者セクハラ被害事件簿 第1号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/29/021540

 

1993年からの第1次女性記者セクハラ問題ブームを振り返る

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/25/030210

 

セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930