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女性記者セクハラ被害事件簿 第7号

  

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前回の女性記者セクハラ被害事件簿 第6号では、セクハラを起こした北海道警の元署長が、自死に至るというショッキングな事例を取り上げた。今回は、内部告発で明らかとなった読売新聞支局内でのセクハラ事件を取り上げる。

 

【加害者】読売新聞大阪本社の男性記者(30歳)

 

【被害者】入社2年目の読売新聞大阪本社の女性記者(25歳)

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊現代』2000年3月18日号でのスクープ報道

 

【事件の概要】

読売新聞・大阪本社社内で、明らかに、「内部告発」と見られる怪文書が出ている。このような書き出して、『週刊現代』の記事は始まる。怪文書の中身は、こうだ。

大津支局で1昨年、入社2年目の女性記者●●●●(原文では実名)に対する逆さ吊り事件が発覚した。

支局の部会の宴席で、90年入社の××××記者が●●の両足を持って、逆さづりして振り回した。支局員全員がいて、△△△△支局長も「もっとやれ」と拍手を送り、宴席は大盛り上がり。

これをきっかけに●●は退職した。(中略)この支局は当時せくはら支局として本社内でもうわさがひろまっていたが、かいしゃはなしのつぶてをきめこんだ。

 

 『週刊現代』の記事によると、加害者の男性記者は、相当の問題児だったらしい。後輩が少しでも取材でヘマをしたり、生活態度が悪かったりすると、平気で殴り倒したという。調子に乗ると、道を歩いているときにほかの男性記者をアスファルトの路上に引き倒したうえ、引きずったこともあったようだ。

 

新聞社の支局の記者は、取材先から帰り、その日の原稿をまとめ終わると、「反省会」代わりに酒を飲んで話し合うことがよくあり、大津支局もそれは同じだが、違うのは、この男性記者の横暴だった。やはり、この男性記者から暴力を受け、読売新聞を退社した記者は、『週刊現代』の取材に次のように答えた。

 

「●●さんは、××の命令でみんなの食事を作らされたうえ、酒が入って酔っぱらうと、『あの記事はなんだ!』などと難癖を付けられて柔道の払い腰のように床に投げ倒されたそうです。

そして、××は彼女の両足をつかむと、そのまま持ち上げて引きずりまわしたそうです。●●さんは、『私はいつもスカートをはかないからよかったけど……。服はひどく汚れてしまった』と言ってました。」

「●●さんが、『逆さ吊り』のように引きずられたのは1回だけではありません。彼女は、『もう、数えきれないくらい』と言ってました。××と行動していた間約1年以上にわたって、繰り返しやられたと聞いてます。」 

 

【顛末】

被害者の女性記者は、この暴力先輩記者の存在だけでなく、それを看過する支局長や、会社の体質に疑問を感じたこと、さらには交際していた男性が転勤になったことが重なって、99年4月に読売新聞を退社した。

 

女性記者は、退社前後に進退を本社の上司に相談したことで、この暴力記者や支局長の行状が明らかとなった。そのためかどうかは不明であるが、99年春の人事で、暴力記者は大阪本社の「整理部」に、支局長は「販売企画調査部」に異動になった。

 

週刊現代』の取材に対し、読売新聞大阪本社広報宣伝部は、ファックスでこうコメントを寄せた。

 

「当該記者の行為について調査委し、支局長はじめ責任者が事情を聞いたことはあります。後輩の指導の一環だったと判断しましたが、その方法には不適切で相手に伝わらない面があり、誤解を受けることのないよう注意を促しました。

その後一方は退職し、一方は移動して別の部署で働いていることもあり、個別具体的な内容については控えます。」

 

【ブログ主のコメント】

  後輩女性の足を持ち上げて『逆さ吊り』のように引きずる、というのは明らかに常軌を逸しているが、今回の事案は、これまで本ブログで取り上げてきた、女性記者が取材相手からセクハラ被害を受けてきた事件とは異質のゴシップだ。

 

本件が半ば興味本位で週刊誌に大きく取り上げられたのは、ふだんは社会正義をふりかざしセクハラ問題に対しても厳しく追及する立場の言論機関において、そのモラルを追及しうるスキャンダラスなエピソードだったからであろう。

 

エキセントリックで横暴なパワハラ上司はどこの社会にも存在するが、マスコミの世界は特にイゲツナイらしい。生活は不規則で長時間激務にさらされ競争が激しくストレスフルな職場環境で、心を病み、片やうつで寝込む記者が少なからず存在する一方、他方で、狂暴化し、後輩などに日常的に暴力を振るう記者が発生するようだ。

 

長時間勤務などの働き方の問題や、セクハラ・パワハラなどの社会問題に対して、問題提起しその改善を訴える社会の木鐸であるまさにマスコミこそが、最も過酷な勤務環境で、セクハラ・パワハラの温床である、という根源的矛盾がある。

 

ちなみに、女性記者セクハラ被害事件簿では、これまで全国紙では、読売新聞記者が、加害者、被害者であるケースが続いたが、これは偶然である。今後は、共同通信NHK、朝日や毎日新聞の事案も取り上げるので乞ご期待。

 

【予告】

今回の女性記者セクハラ被害事件簿第7号はいかがであっただろうか。次回の第8号では、高知での事例を取り上げる。

 

【本ブログ内の関連記事】

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