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女性記者セクハラ被害事件簿 第10号

 

【加害者】大阪府警淀川署の副署長/警視(58歳)

 

【被害者】共同通信大阪支社社会部の女性記者(25歳)

 

【明るみに出たきっかけ】

大阪府警による処分の発表(2003年7月18日)

 

【事案の概要】

副署長は2003年7月16日夕、取材に署を訪れた共同通信大阪支社の女性記者を飲食に誘い、午後6時から11時頃まで、大阪市淀川区の居酒屋など2か所で飲酒。午後11時すぎ、「夜は危ない。遅いからホテルに1人で泊まっていったら」などと言ってビジネスホテルまで連れて行き、客室内で無理やり肩を抱き寄せたり、抱きついたりしたとされる。副署長はかなり酔っていた。

 

共同通信社によると、記者は副署長が日常的な取材対象者だったため、「(副署長の勧めを)断ると今後の取材に支障が出る恐れがある」と判断。ホテルで副署長と別れるつもりだったが、副署長がフロントで部屋のカギを受け取ったためやむなく一緒に入室。客室内で抱きつかれたので「やめてください」と振り払って退室し、その際に転倒して左足に軽い打撲傷を負ったという。

 

【顛末】

共同通信社からの抗議と厳正な対処の申し入れを受けて、大阪府警は事実関係を把握。府警は18日付で副署長を減給3カ月の懲戒処分にした。副署長は同日依願退職した。「女性の心を傷つけた。責任を感じている」と話しているという。

 

淀川署長「署員を指導すべき立場の幹部職員の行為で誠に申し訳ない。関係者に深くおわびしたい。」

 

【ブログ主のコメント】

本ブログで連載中の「女性記者セクハラ被害事件簿」も今回で10回目。それにしても、これまで取り上げた10回の事例中、半数以上が警察関係者によるセクハラであり、同じような手口のわいせつ行為が続き、毎回お読みいただいている読者の方は、飽き飽きされているかも知れない。

 

新聞報道によると、副署長は府警交通部の経験が長く、3月から現職に就いたばかりだったようだ。警察の交通部といえば、刑事ドラマやサスペンス物での扱われ方からイメージできるように、警察組織の中で、最も地味な部署の1つである。殺人事件など凶悪犯罪を手掛ける刑事部とは対極に位置する交通部は、「お巡りさんの墓場」と見なされている。

 

長らく交通部勤務で、ショボい交通事故などの対応ばかりしていた警察官が、定年間際にようやく副署長に出世するや、署の広報官として、30歳以上年下の大学を出たばかりの若い記者たちから囲まれチヤホヤされる日々である。

 

飲みに誘うと、女性記者であっても、断られることなく付き合ってくれる。しかも、延々5時間にわたって2人きりの長酒。あたかも自分が大物になったかのような勘違いをしてしまったのであろう。

 

それにしても、本件は、事件発生から処分に至るまでの経過が短すぎる。コトが起きたのが16日の夜で、その2日後には、副署長は処分されている。迅速な処分対応として評価する向きもあろうが、府警のような超巨大組織において、言い方は悪いが、この手の不祥事に対する処理スピードとしては異例である。府警と共同通信の間で、別の大きなトラブルでも抱えていたのか、何らかの事情があったに違いない。

 

【予告】

「女性記者セクハラ被害事件簿」も今回で10回を数えた。残り10件ほどあるが、ちょうど半数の紹介を終えたところで、次回は、これまで取り上げた10件についての概要説明を行う。

 

【出典】

・読売新聞2003年7月19日朝刊

朝日新聞2003年7月19日朝刊