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社会ノマド、社会の窓、流浪しながら漂泊する社会を見つめます

女性記者セクハラ被害事件簿 第12号

【加害者】千葉県の自民党県議・岡田啓介氏(54歳)

 

【被害者】朝日新聞千葉総局の女性記者(20代)

 

【明るみに出たきっかけ】

2006年7月12日に各紙が報道

 

【事案の概要】

今回の加害者は、千葉県議で鎌ヶ谷市当選の岡田啓介氏。東海大学を卒業後、鎌ヶ谷駅前で書店を経営。地元JCの理事長を務め、鎌ヶ谷市議から2003年に県議に初当選した叩き上げである。

 

事件が起きたのは、2006年6月30日に千葉市内の料亭で開催された自民党県連政調会と県政記者クラブとの懇親会(党県連主催)の席上のことである。懇親会には、自民党の県議ら7~8人と、クラブ加盟10社から記者十数人が出席していた。岡田県議は、朝日新聞女性記者の隣に座り、無理やり体を触ったり、卑猥な言葉をかけたりした上、女性記者の携帯電話にエッチを迫る卑猥なメールを送信した。

 

女性は中座し、すぐさま上司にわいせつ行為を受けたと報告。朝日新聞は7月4日付で県連に抗議書を送った。

 

【顛末】

岡田県議は10日、わいせつ行為を認める「謝罪文」を朝日新聞千葉総局に持参。「理性と記憶を失うほど酔ってしまった」などとコメント。

 

岡田県議のわいせつ行為を他の出席議員らも目撃しており、自民党千葉県連は岡田県議に離党を勧告。

 

結局、岡田県議は議員辞職に追い込まれた。(ただし、翌2007年4月の県議会銀選挙に再度立候補し、県議に返り咲いている。)

 

【ブログ主のコメント】

岡田県議は当時、堂本暁子県知事と真っ向から対立。県が提案した男女共同参画センター設置条例案を「伝統文化を否定し、男女の区別をなくすジェンダーフリーの拡散になる」と批判し、廃案に追い込む「実績」をあげている。岡田県議は、女なんぞ男の奴隷・附属物だ、という反動的価値観の持ち主で、女性へのセクハラは男性にとって当然の権利だという自らの「良識」と信念に基づきコトに及んだのであろう。

 

参考までに、2006年3月24日の、千葉県議会2月定例会での岡田県議の発言を会議録から引用する。

 私は自由民主党を代表して、今議会に提案のありました議案及び請願について各常任委員長の報告どおり取り扱うことに同意し、ただいまから討論を行います。ただし、その理由は議案第24号並びに25号についてのみといたします。

 

 まず、議案第24号千葉県男女共同参画センター設置管理条例の制定について、否決の立場で申し上げます。

 

 我が党は、男女共同参画社会については従来から推進すべきとの立場であります。男らしさ、女らしさ、あるいは伝統や文化などを十分に踏まえた上で、男女がそれぞれの能力を遺憾なく発揮することは社会参画の理想であり、社会全体の限りない資源であります。その実現に向けてのさまざまな障害の改善、排除や認識の醸成は必要不可欠なものと考え、もって真の男女共同参画社会の実現を心から願い、その実現に向け邁進する所存であります。

 

しかしながら、伝統や文化などを否定したり、男女の違いを機械的、画一的になくし、男女の区別を一切排除しようとするジェンダーフリー思想を肯定し、全国で唯一ジェンダーフリー教育を推進しようとする堂本県政下において推進しようとする男女共同参画は、我が自民党と良識ある県民が実現しようとする男女共同参画とは全く非なるものと断じなければなりません。そして、その活動の核となるであろうことが容易に想像できる男女共同参画センターを県下千葉市館山市柏市の3カ所に設置しようとすることは、ジェンダーフリー思想の拡散につながるおそれが大であり、ひいては千葉県教育界並びに社会全般に大きな混乱をもたらすおそれが多く、とても看過することができないのであります。

 

一方、県が実施した選択式複数回答の県民意識調査の結果によれば、男女共同参画施策推進への要望は全体の0.3%であり、順位は第34位との結果が出ております。大変厳しい財政状況下で施策を推進する本県において、県民要望の優先順位は低く、費用対効果の点においても同意できるものでなく、また、選択と集中を標榜する堂本知事であるならば、県民要望に沿うことが本旨ではないでしょうか。

 

このように、本件は、男女共同参画粉砕を叫ぶ男尊女卑イデオロギーで凝り固まった右派のキモイ中年オヤジが、対極的なイデオロギーを唱道する「憎き」朝日新聞の若手女性記者にセクハラをしたという点で、半ばお笑いネタ的な扱いを受けたが、別の文脈でも重要な論点が存在する。次にこの点について付記。

 

具体的には、「マスコミと政治家の癒着」の問題だ。本件は、「千葉市内の料亭で開催された自民党県連政調会と県政記者クラブとの懇親会(党県連主催)の席上」で発生した事例であるが、そもそも、え?この懇親会ってそもそも何?と疑問を感じる読者もいるのではないか。

 

当時、千葉県は堂本県政下で、自民党は県政野党であるが、国政の最大勢力である自民党の県議と若い記者たちが会食するのは、両者の癒着そのものであり、こんなことでは「権力の監視」などできる訳がない、と。

 

筆者は、年に1~2回程度の頻度で開催されるこの手の懇親会に目くじらを立てる必要はない、との立場であるが、若干気になる点もある。懇親会が行われた場所について、各社の記事を比べると「料理店」「料理屋」「料亭」「高級料亭」と微妙に記載が異なっており、中には、この懇親会が「会費制」であることをわざわざ明記している記事もあった。

 

いずれにしても、飲み放題5000円の居酒屋での懇親会ではなかろう。高級かどうかはさておき、料亭での1人2万円程度の宴会だったのではないか。だけど、若手記者が2万円も自己負担できるはずがない。金持ち朝日、共同、NHKですら、会社から支給される経費は一人あたり1回5000円からせいぜい1万円程度で、貧乏毎日、時事は給料が低い上に交際費はゼロだ。会費制といいながら、おそらく、記者からアリバイ的に5000円程度の会費を徴収し、残額は党の負担であったに違いない。

 

ともあれ、全国紙やNHK、通信社の記者たちは、振り出しの地方勤務時代に、お偉いさん達から料亭接待を受けるという習慣を身に着け、特に女性記者は、お偉いさん達からの宴席でのセクハラのあしらい方を学習した上で、東京にあがっていくのである。

 

【予告】

次回、女性記者セクハラ被害事件簿第13号では、長崎県警捜査二課長による民放女性記者へのセクハラを取り上げる。

 

【出典】

朝日新聞』2006年7月11日朝刊  

共同通信』2006年7月11日配信記事

日刊ゲンダイ』2006年7月12日