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女性記者セクハラ被害事件簿 第13号(長崎県警捜査二課長による女性記者へのセクハラ事案)

【加害者】長崎県警の捜査二課長/警視(38歳)

 

【被害者】民放テレビ局の女性記者(20歳代)

 

【明るみに出たきっかけ】

2006年9月8日に発覚し、各社が報道

 

【事件の概要】

長崎県警の捜査二課長(警視)が、2006年4月から5月にかけて複数回、夜回り取材で長崎市内の官舎を訪ねてきたテレビ局の女性記者を部屋に招き入れた。

 

報道によると、この二課長は千葉県出身。1991年に国家II種試験に合格し警察庁に入ったいわゆる準キャリア組。今年3月、山梨県警捜査2課長から県警捜査2課長に着任し、長崎市内の県警官舎に単身赴任していた。

 

当時、捜査二課は対馬市発注工事をめぐる不正入札事件を捜査し、大詰めを迎えていた。マスコミ各社は連日、捜査二課の幹部や捜査員に取材攻勢をかけていた。

 

女性記者を部屋に入れた二課長は「ネタ(捜査情報)がほしいのか」などと言って、髪をなでたり肩を抱いたり、性的関係を求める発言をするなどのセクハラ行為をした。二課長は酒に酔っていたときもあったという。

 

記者は、精神的ショックで休職。記者が8月末、弁護士を通じて県警本部長あてに調査と厳正な処分を求める申し入れ書を提出したことで問題が発覚した。記者が所属する民放も県警に抗議し、調査を求めたという。 

 

【顛末】

長崎県警は、地方公務員法の信用失墜行為に当たると判断し、9月14日付で減給10分の1(3か月)の懲戒処分にした。警視は同日付で警察庁長官官房人事課付に異動し、15日付で依願退職した。

 

県警監察課の調査に対し二課長は事実関係を認め、「記者に好意を持っていた。休みの日も官舎に来るので自分に好意を持っていると思った。セクハラとの認識はなかった」と説明。

 

女性記者は弁護士を通し二課長に慰謝料を請求しているという。

 

テレビ局の上司は「言語道断の行為で、処分は当然だ。県警は責任を持って再発を防止してほしい」と語る。

 

県警本部長は「部下を指導監督すべき幹部警察官がこのような事案を起こしたことは非常に残念。被害者と関係者、県民におわび申し上げる。今後再発防止と信頼回復に向けて努力したい」とするコメントを発表。

 

【ブログ主のコメント】

またもや、警察関係者によるセクハラ事件であり、書く気が失せてくる。だけど、この連載を完遂させるべくもう少しがんばろう。

 

それにしても、「ネタ(捜査情報)がほしいのか」と言いながらセクハラ行為をするって、あまりにも露骨すぎて、むしろ作り話のような気もしてしまう。

 

なお、本件に関する2ちゃんねるの書き込みが残存している。その中には、次のような書き込みがある。

「女性が所属してるテレビ局はどうなの? いくら取材とはいえ、女性一人で男性の部屋に行かしちゃいかんだろ。」

「この放送局は夜に単身でいる男性の部屋に取材に行くように若い女性社員に指導しているのだろうか?会社として警官への非難のコメントを出しているのならそういうことだろう。例えが悪いが、ライオンの前に毒入り生肉出して喰らうのを待っている、という姿勢を否めない。」

 

日本のマスコミの取材慣行を知らない人であれば、このような疑問を持つのも当然であろう。しかし、筆者が、以前のブログ記事セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業で紹介したとおり、日本のマスコミでは「夜討ち」「夜回り」といって、男女問わず、記者が、警察関係者や政治家・官僚などの自宅に出向いて非公式に取材することはごくごく一般的のことである。足繁く通って、取材対象者から顔と名前を憶えてもらわなければ、いいネタにありつけない、という考え方がマスコミには根強く存在するのだ。

 

一方で、この手の問題が発生するや、警察サイドから、「夜回り取材」を敬遠する意見があがることもある。本件事案に際しても、県警幹部が「問題を起こしたくないから、夜回りに来ても会わないようにする」と発言するなど、県警の中で、夜回りを回避する動きが強まったようだ。

 

このような夜回り自粛の動きについて、地元・長崎新聞では、「夜回りのような非公式な取材ができなければ単なる『発表ジャーナリズム』に陥り、出したい情報誌か知らされず、隠された情報は明らかにできない」というマスコミュニケーション論の専門家の意見を紹介するとともに、被害を受けた女性記者が勤務するテレビ局の「県警がきちんと再発防止策を打ち出すべきで、夜回りを規制するのは問題のすり替えだ。絶対に受け入れられない」との見解を引用する形で、批判的論調で記事にしている。

 

個々の記者は、夜討ちが非効率で不毛だという認識を有しているものの、デスクなどは「夜討ち通いをしていいネタを取るのがジャーナリズムの神髄だ」「どこの社も夜討ちしているので、自社だけ(幹部宅に)行かない訳にはいかない」などと若手をけしかける。かくして、今なお、全国あちらこちらで、若い記者たちが県警幹部の自宅を訪ね、明るみに出ていないだけで、同様のセクハラが日々発生していることであろう。

 

【予告】

今回は、長崎県警捜査二課長によるセクハラ事案を取り上げたが、次回は、その1か月後、同じく長崎で、長崎市役所の部長が引き起こし衝撃的な結末を迎えた事例を紹介する。

 

【出典】

西日本新聞2006年9月9日朝刊

・読売新聞2006年9月15日朝刊

長崎新聞2006年9月15日朝刊

 

 

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