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豪雨被災を巡る、愚かな倉敷市長発言と、愚かな朝日新聞・小沢邦男記者の記事

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 大規模に冠水した岡山県倉敷市真備町の状況などについて説明する伊東香織市長=2018年7月8日夕、倉敷市役所、小沢邦男撮影(朝日新聞WBE記事より転載)

 

7月9日は、朝刊休刊日であった。朝、WEBの朝日新聞DIGITALを開くと、トップは、“「避難者、着替えが足りない」倉敷市長、支援呼びかけ”という見出しの記事(7時38分配信)が掲載されていた。

 

本文を読むまでもなく、見出しから胡散臭さいというか愚かしい内容の記事であろうことが推測されたが、本文は、全く持って予想を裏切らない愚かな内容であった。

 

記事によると、岡山県倉敷市の伊東香織市長は8日の会見で約8千人の避難者は何も持たずに逃げてきた人ばかりだといい、「みなさん着替えが足りない。シャツやズボン、下着も靴も靴下も」と支援を呼びかけたんだって。

 

この記事を見て、ブログ主は、直感的に二つのことを予測した。

 

まず1つ目。この記事がツイートなどで拡散され、一般市民から大量の衣類等が倉敷に送付される、あるいは、どうすれば支援できるか、という電話が市役所等に殺到するであろうこと。

 

もう1つは、どこぞやの大手衣類メーカーなり販売業者が、善意を装って、売名のために支援を申し出るであろうこと。

 

で、だ。たった今、朝日新聞のWEBを開いてこの記事をもう一度確認すると、フェースブックのシェアは4000を超えているではないか。この手の「〇〇足りない、ヘルプ!」系の記事って、情緒的な人たちには大ウケなのだ。だからこそ、朝日は、こんな記事を配信したのだろうけど。

 

で、もう一つ、わたくしの予言がズバリ的中、朝日新聞17時13分配信記事に、“ゾゾ、被災の倉敷市に衣料品7千点寄贈 前沢社長が表明”という記事があるではないか! この朝日の記事によると倉敷市長の「着替えが足りない」の支援を呼びかけに触発され、前沢氏がツイッターでその発言を伝える記事を紹介するとともに、「倉敷市と相談の結果、ZOZO(ゾゾ)グループとして衣類、下着、子供服を中心に約7千点を避難者向けに提供させていただくことにしました」などと書き込んだんだって。

 

17時13分配信記事には、わざわざ前沢氏のツイッター記事も写真で貼り付けており、よく見ると7時38分配信の支援呼びかけ記事も載っている。自社(朝日新聞)が、「被災者支援の懸け橋」になったと自己陶酔に浸りたい気持ちも理解できなくはないが、冷静に判断しなはれ。被災者支援の善意を装った比較的大企業に対し無料広告の場を提供し、同社の売名行為に加担しているだけっすよ。

(ゾゾが、売名行為ではなく、ピュアな善意だというのであれば、朝日に対し、記「我々は売名を目的とした支援ではないので、記事化は見送ってほしい」と記事化を拒否すれば良かったのだ。そうすれば、後日になって、さらに美談になったかも知れないっすよ。)

 

そもそも論に戻ろう。7時38分配信記事の末尾には「市長は、8日夕までに自衛隊や消防が住民ら1850人を救出したと説明。一方、死者や行方不明者、取り残されたままの要救助者は「救出作業で手いっぱい」などと市として把握できていない」と記載されてあるとおり、8日の時点では、取り残された要救助者の救出作業と、行方不明者の捜索活動が現場での最最最優先事項であった。そのためには、消防や医療チームのマンパワーを確保し、同時に、救出に必要な機材・資材、救命処置に必要な医療機器、医薬品等を被災地に安定的に供給することとが、まずもって重要である。

 

次いで、数多く存在する避難者の生存を維持するために、とにかく、水と食料の供給が最優先事項となる。極論を言えば、飲料用の水さえあれば、健常成人であれば食料無しでも3日程度は生存可能である。もちろん乳児の生存のためには、粉ミルクが必須であるし、小学生以下の小児には生存のため何かしのカロリー補給は維持したいところだ。また、急性疾患患者の生存に不可欠な一部医薬品なども欠かすことができないが。酸素療法、透析治療等の患者は、広域搬送が必要となる。すなわち、病人を除けば、水と粉ミルク、小児のための最低限の食料などさえあれば、ギリギリ2~3日は乗り切ることができるのであり、その次のステップとして十分な食料の確保が重要となる。

 

食料の次に重要なのが、排泄系の対応だ。トイレットペーパーや生理用品、オムツ(乳幼児、高齢者用)の確保も緊急性の高い物資である。

 

では、衣類の優先順位はいかがであろうか。はっきり言う。取り残された要救助者や行方不明者が大量に存在する中で、そして、一部被災地域では飲食物の供給もママならない状況下で、衣類の供給など2の次、3の次でいいのだ。衣類のような不急の物資の調達や搬送に労力を割く暇と余裕があれば、とにかく、救命用資器材と飲食物、トイレットペーパーの確保を優先すべきだ。

 

着の身着のままで逃げてきた被災者は、着替えの服さえ存在しない状況であり、新しい衣類に取り換えたいという願望は理解できなくはないが、生きるか死ぬかの極限状態において、衣類を1週間、2週間替えなくても、風呂に入らなくても、基本的に生命に直結することはない(ある種の皮膚疾患などあれば別であるが)。

 

衣類を1週間、2週間替えなくても、というのはいささかオーバーであるが、通常は、1週間も待つことなく、通常は、他の自治体や関係省庁、業界団体からの支援によって必要な医療の供給は確保されるはずである。売名行為企業が、支援を申し出なくても、である。

 

ポピュリズム政治家が、マスメディアを前に「みなさん着替えが足りない。シャツやズボン、下着も靴も靴下も」と叫びたくなる気持ちも理解できないではない。だけど、真の政治家であれば、市民に向けて、こう語りかけるべきである。

 

「着替えが足りなくて不自由している被災者の皆さん。現在、新しい衣類の供給を、関係行政機関や関係団体などに要請中です。安定的に確保できるまでにあと数日はかかるかも知れませんが、その間、飲食物やトイレットペーパーやオムツは絶対に不足しないよう尽力します。今なお、取り残された要救助者の救出作業と、行方不明者の懸命な捜索活動も続いています。心苦しですが、着替えの不足については、今しばらく我慢してください。」と。

 

愚かな市長が「みなさん着替えが足りない。シャツやズボン、下着も靴も靴下も」と口走り、これを愚かな朝日新聞記者が記事化することで何が起こるか。倉敷市宛ての膨大な古着の殺到である。東日本震災でも見られたお決まりの光景であるが、全国津々浦々から、善意の押し付けで、個人宅の押し入れに眠っている大量の古着が、サイズがバラバラの箱に詰め込まれ、倉敷に向けて配送される。

 

塵も積もれば、ではないが、個々人が発送した大量の古着を積んだ宅配業者のトラック群は、ただでさえ道路事情の悪く、慢性的に渋滞している被災地の渋滞に拍車をかけることとなり、真の緊急物資(飲食料等)の供給や緊急車両の通行に支障を来す結果にもなる。

 

未分類状態の古着が大量に届いた被災地では、自治体職員等が、その仕分け作業に労力を割く必要が生じる。そして、最終的には、善意で押し付けられた大量の古着のうち、2~3割程度は掃けていく(貰い手が見つかる)が、残り6~7割は、貰い手も見つかることなく、残存してしまう。善意で提供されたものを焼却する訳にもいかず、将来の被災に備えてと理由をつけて、自治体の倉庫を埋め尽くすことになる(実際には、こっそり焼却処分することも多いが)。

 

分別のある市長であれば、このような事態を予測して、「着替えが足りない」などと口走ったりしないであろうし、分別のある新聞記者であれば、仮に市長が「着替えが足りない」などと口走ったところで聞き流して記事にはしないであろう。

 

全くもって、愚かな発言と愚かな記事であった。

 

参考までに、朝日の2つの記事を転載しておく。

 

「避難者、着替えが足りない」 倉敷市長、支援呼びかけ

小沢邦男 2018年7月9日07時38分

 

岡山県倉敷市の伊東香織市長は8日、会見で大規模に冠水した同市真備町について、避難所に約8千人が身を寄せていると説明した。避難者は何も持たずに逃げてきた人ばかりだといい、「みなさん着替えが足りない。シャツやズボン、下着も靴も靴下も」と支援を呼びかけた。市は個人からの物資の支援は現在受け入れていないが、ほかの自治体からの支援は受け入れている。

伊東市長によると、避難者は、小学校など真備地区の4施設に計3513人。市内のほかの地区の避難所にも計4708人が身を寄せているが、そのほとんどが真備地区から移ってきた人たちだという。避難者の健康状態については「透析が必要な方は地区外の病院への転院をお願いしている。重篤な方がいるとは聞いていない」とした。

 真備町地区では住宅が約9千戸あるが、市は浸水家屋は約4600戸と推計。その大半が2階まで水につかったという。

伊東市長は、8日夕までに自衛隊や消防が住民ら1850人を救出したと説明。一方、死者や行方不明者、取り残されたままの要救助者は「救出作業で手いっぱい」などと市として把握できていないとした。(小沢邦男)

 

ゾゾ、被災の倉敷市に衣料品7千点寄贈 前沢社長が表明

2018年7月9日17時13分

 

 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは、豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市の被災者向けに衣料品7千点を支援物資として送ることを決めた。前沢友作社長が9日、自身のツイッターで表明した。ほかの自治体へも必要に応じて支援するとしている。

 倉敷市の伊東香織市長が8日の記者会見で「着替えが足りない」と支援を呼びかけていた。前沢氏はツイッターでその発言を伝える記事を紹介。その後、「倉敷市と相談の結果、ZOZO(ゾゾ)グループとして衣類、下着、子供服を中心に約7千点を避難者向けに提供させていただくことにしました」などと書き込んだ。

 ゾゾタウンに出店している衣料品メーカーの在庫を買い取るかたちで倉敷市に送るという。