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フィリピンでの麻疹(はしか)流行に対し、予防接種は本質的解決にならない

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フィリピンにおける麻疹(はしか)流行の温床であるスラム(イメージ写真)



筆者が昨年4月に書いたブログ記事はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ
を巡って、某医師限定会員制サイトにおいて、「またもや反ワクチン派の素人が、愚かなデマを撒き散らしている」と罵られている。

 

このブログ記事を読んで、小生のことを反ワクチン派とレッテルを貼る医師は、よほど事理弁式能力(知能)が低いヤカラであるとしか思えない。

 

これまでの関連記事を素直に読んでいただくと明らかだと思うが、小生は、はしか(麻疹)ワクチンについては、決して反ワクチンではない。私事であるが、自分の子供にも、はしか(麻疹)ワクチンは打っている。数多あるワクチンの中では、最も臨床的有用性の高いワクチンであると考えている。HPVワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルエンザ・ワクチンといった、凡そワクチンと呼ぶには値しない「百害あって一利なし」のクソと、はしかワクチンを同類扱いするのは誤りだ。

 

筆者は、はしか(麻疹)ワクチンの臨床的有用性自体は否定していない。ただただ、接種率を上げたいがために、医学界や行政が、はしかの健康リスクを誇張し、必要以上に恐怖を煽る不適切な広報をしていることを問題視するとともに、WHO(世界保健機関)が推進するはしか根絶計画なんぞ土台無理で果かない夢物語だ、と主張しているに過ぎない。

 

はしかの健康リスクについて、厚生労働省では、「死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人と言われています。」と主張しており、マスコミ報道でも、はしかは致死性の感染症であると言及されることが多い。沖縄県立中部病院の高山義浩医師は、ハフスポストの記事の中で、「いま、日本では約100万人の出生ですが、その全員がワクチンを接種しないことで麻疹に感染してしまうとしたら、毎年、約千人の子どもたちが死亡するでしょう。」と答えている。https://www.huffingtonpost.jp/yoshihiro-takayama/measles-20180426_a_23421172/

 

だけど、昨年4月のブログ記事「はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ」でも記載したとおり、日本のような先進国において、はしかの死亡率が0.1%というのは嘘っぱちだ。

 

先天性の免疫不全をはじめ何らかの基礎疾患を有する乳幼児が、麻疹ウイルスに感染すると、しばしば重篤化し、最悪の場合、命取りになることは筆者も否定しない。NICUや重症心身障害児施設などでは、絶対に麻疹を持ち込んではいけない。

 

だけど、特段基礎疾患がなく、日本でごくふつうに食生活を送っている子どもであれば、はしかを発症したとしても、1週間程度は、グロテスクな全身皮膚症状がみられるが、たいてい何ら後遺症を残すことなく1~2週間後には全快するはずだ。

 

ただし、衛生状態、栄養状態、医療水準が劣悪な発展途上国においては話は別だ。前置きが長くなったが、今回の本題はここからだ。

 

先日のブログにも書いたが、現在、フィリピンではしかが爆発的に流行しており、今年に入ってこれまでに130名以上がはしかで死亡している。2月19日のNHKニュースでも報じられている。

 

 

フィリピン はしかが猛威 患者8400人以上 130人余死亡

2019年2月19日 16時19分

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190219/k10011820131000.html?utm_int=word_contents_list-items_001&word_result=はしか

日本で感染の拡大が懸念されるはしかですが、フィリピンでは、ことしに入って8400人以上の患者が確認され、130人余りが死亡するなど猛威をふるっていて、ドゥテルテ大統領が国民に予防接種を呼びかける事態となっています。

フィリピンではことしに入ってから、首都マニラがあるルソン島などではしかの感染が広がっていて、現地の保健省によりますと、今月16日までの患者の数は8443人に達し、136人の死亡が確認されています。

はしかで亡くなった人は去年の同じ時期と比べ5倍に増えていて、およそ半数は1歳から4歳の子どもだということです。

こうした事態を受けて、ドゥテルテ大統領はテレビメッセージで、はしかは致命的な合併症を引き起こすおそれがあると警告したうえで、国民に予防接種を受けるよう呼びかけました。

今月11日には横浜市の10代の女性がフィリピンからの帰国後にはしかの感染が確認されていて、マニラにある日本大使館はフィリピンへの渡航者に対して感染が疑わしい場合はすぐに医療機関で受診するよう呼びかけています。

 

このニュース記事を読むと、一見、「はしかは致死性の感染症である」という厚生労働省や医学界の主張を補完しているように思えるかも知れない。しかし、所得格差が著しく、衛生状態、栄養状態、医療水準が劣悪な環境におかれた貧困層の子どもたちの存在が深刻化している発展途上国におけるはしかの流行と、先進国における流行とは全く異次元の現象である。

 

衛生状態の劣悪な環境に居住し、栄養状態の不良の貧困層の子どもたちは、抵抗力(感染症防御のための免疫力)が脆弱であり、元からはしかを発症した際に重症化しやすい境遇におかれている。フィリピンにおけるはしかによる死亡者の大半はスラムに居住する最貧困層の子どもたちであって、途上国であっても衣食住に不自由しない中所得者層以上の階級で、はしかによる死亡者はほとんどいないはずだ。


貧困層の子どもたちを、はしかから救う、という名目でワクチン接種を推進すると、何が起こるのか。確かに、一時的にはしかの流行は抑制されるだろう。しかし、元より栄養状態の劣悪な子どもたちは、免疫応答が不十分であり、ワクチンを接種したとしても、免疫記憶の獲得が不十分で持続せず、数年後には麻疹ウイルスに対する感受性が高まり、ウイルスに感染してしまう可能性が高い。元の木阿弥だ。

 

また、最貧困層の子どもたちが、麻疹ワクチン接種により麻疹ウイルスへの感染が防御され、はしかによる重篤化を免れたとしても、麻疹ウイルスほど重篤性の高くない呼吸器感染症や腸管感染症に罹患し、それによって命を落とす危険性が残存する。

 

麻疹ウイルスほど重篤性の高くない呼吸器感染症や腸管感染症への罹患を防ぐため、例えば、ロタワクチンやRSワクチンが開発されている。これらはそれぞれのウイルスへの感染を防御するためのワクチンであり、ロタウイルスやRSV以外にも脅威となりうる病原体は無数に存在する。

 

結局、途上国における最貧困層の子どもたちをはしかを始めとする感染症から救うには、ワクチン接種というアプローチは限界があり、子どもたちを貧困状態から解放し、衛生状態や栄養状態を改善し、医療水準を引き上げることが、唯一にして最大の解決策である。

 

貧困状態を放置し、予防接種キャンペーンを強化・徹底したところで、何ら本質的な解決にはつながらない。AC(公共広告機構)や「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」の広報に触発されて、途上国の子どもたちのために予防接種のために募金することが尊い善意だと信じている人には申し訳ないが、貧困や低栄養状態を直視することなく予防接種を推進するのはただの自己満足、偽善に過ぎないのだ。

 

 

 

【本ブログ内の関連記事】

・はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/27/010647

・はしか(麻疹)根絶という幻想と脆弱な社会
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/28/015846

・またしても、はしか(麻疹)狂想曲が奏でられている - 麻疹流行を騒ぎ過ぎる不健全な社会
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/17/165000