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社会ノマド、社会の窓、流浪しながら漂泊する社会を見つめます

ヒューマンライツ・ナウの#Me Tooシンポジウム(その2:共同通信の残念な記事)

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 (写真は、共同通信が配信した伊藤詩織氏の発言の風景)

 

前回の6月12日付本ブログ記事において、2018年6月8日に開催されたヒューマンライツ・ナウ主催のシンポジウム「メディアで起き始めた#Me Too 声をあげられる社会をつくるために」のことを取り上げた。

 

自称「ジャーナリズム・ウォッチャー」を標榜するブログ主としては、本シンポジウムの内容もさることながら、各メディアが本シンポをどのように報道したか、についても非常に関心がある。

 

ブログ主もこのシンポを傍聴していたが、シンポには大勢のマスコミ関係者が取材活動を行っていた。受付机上の参加者リストや記者が腕に巻いている腕章などをチラ見したところでは、朝日、読売、毎日のいわゆる全国3紙の記者が参加していることが確認された。

 

おそらく、主催者は全国紙で報じられることを期待していたと思うし、ブログ主としても、全国紙がどのように報じるかウォッチしていたが、結局、全国3氏ではこれまでのところ、本シンポジウムについて一切報じられていない。

 

2か月前に、週刊新潮で福田財務前次官によるセクハラ発言が報じられ、この間、セクハラ問題について膨大な報道がなされたが、全国紙的には、そろそろこの問題も「賞味期限切れ」なのだろうか。ストレート・ニュースとして取り上げるべき新たなネタを期待して記者を取材に出したものの、記者からの取材メモには目新しい内容がなく、各社デスクは掲載見送りの判断を下したのあろう。

 

あるいは、記者は原稿を用意したものの、そこで触れられたシンポの内容が、セクハラ温床のマスコミの体質を批判し体質改善を求めるものであり、まさに自社の体質について核心を突かれており体質改善など不可能だと考えるデスクが、原稿をゴミ箱送りにしたのかも知れない。

 

ともあれ、全国3紙では本シンポは報道されなかったものの、前回のブログ記事では、BuzzFeed Japan、しんぶん赤旗共同通信の3者が報じていることを紹介した。シンポから1週間以上が経過しているが、改めてインターネット上で、本シンポがどの程度取り上げられているかを確認するため、先ほど、「セクハラ」&「シンポ」でGoogle検索を行ってみた。

 

6月17日昼前の時点で、「セクハラ」と「シンポ」の2語のGoogle検索でトップに並んだ29件のうちに、19件が6月8日開催のシンポジウムに関する記事であった。この19件のうち、2件が「しんぶん赤旗」の記事と、それを引用したライブドアの記事である。また、1件は、機関誌連合通信社の記事、もう1件は、手前味噌ながら本ブログsyakai-no-madoの6月12日の記事であった。

 

19件のうち、これら4件を除く15件が、共同通信の記事およびこれを引用した地方紙及びニュースサイトの記事である。具体的には、共同通信社直営の47NEWSサイトが6月8日22時11分に掲載した「性暴力を許さない社会でシンポ セクハラに耐える風潮を変えよう」という記事がGoogleのトップに位置しているが、以下、基本的に本記事を引用した中日新聞東京新聞佐賀新聞沖縄タイムス静岡新聞山形新聞、日刊スポーツ、信濃毎日、福島民友、ロイター、ORICON NEWS、So-netBiglobe、Web東奥の記事が並んでいる。

 

で、今回の本題は、共同通信の記事の内容についてのコメントである。

 

先ほど、「セクハラ」&「シンポ」のGoogle検索の結果、冒頭は共同通信の配信記事であり、以下、中日新聞からWeb東奥まで、「基本的に」冒頭の共同の記事を引用したものであると書いた。基本的に、ということは例外もある。

 

その例外が、日刊スポーツのネット記事である。共同通信社47NEWSには、22時11分掲載の記事が載っているが、日刊スポーツの記事は、共同通信の記事であるが、20時08分掲載となっている。まず、この記事を引用する。

 

セクハラ被害者孤立させない 都内でシンポジウム

[2018年6月8日20時8分]

 

前財務事務次官のセクハラ問題発覚後、メディアで声を上げた被害者へのバッシングが深刻だとして、被害者を孤立させず、性暴力を許さない社会の在り方を話し合うシンポジウムが8日、東京都内で開かれた。

 

エッセイストの小島慶子さんは「メディアで働くとは、セクハラに耐えてなんぼだという暗黙の了解をいよいよ変える時だ」と話した。

 

シンポジウムは「メディアで起き始めた#MeToo 声をあげられる社会をつくるために」。国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが主催した。ジャーナリストの伊藤詩織さん、ビジネスインサイダージャパンの浜田敬子統括編集長らが参加した。(共同)

 

この記事の掲載時間は20時08分となっているが、6月8日のシンポジウムは18時から21時までの3時間にわたって開催され、20時過ぎという時間はシンポの最中である。共同通信は、この後、シンポ終了後の22時頃に再度記事を配信し、多くの地方紙等はこちらの記事を使っているが、20時の時点の記事は途中経過を速報したものである。

 

ふつう、新聞社の記者は、自社の降版時間(原稿最終締め切り時間)を意識して原稿を執筆すればいいが、加盟社によって降版時間が異なることから、共同通信は、大きなイベントや事件があるときには、都度、新しい情報を追記し何度も更新して記事配信し続けることがある。

 

今回のシンポについても、21時~22時頃が降版時間である早版向けに、19時半頃のシンポの休憩時間を利用して記者とデスクとやり取りをし、20時頃に配信したのであろう。伊藤詩織氏が登壇するのはシンポの後半であり、日刊スポーツのネットに掲載された共同記事の執筆時点では、伊藤氏はまだ登壇していない。

 

21時にシンポジウムが終了した後、20時頃の配信記事をリライトし、遅版に間に合うよう22時頃に加盟社に配信した写真付の記事が、共同通信社47NEWSに22時11分に掲載されている「性暴力を許さない社会でシンポ セクハラに耐える風潮を変えよう」記事である。どうでもいい細かな点であるが、共同通信が自社サイト47NEWSに掲載したのが22時11分であるが、加盟社に対しては、自社サイトへの掲載解禁は22時を指定して、21時30分ごろ配信していたものと思われる。というのも、47NEWSの掲載時間は22時11分であるが、いくつかの社(例えば沖縄タイムス福島民友)は、22時00分に記事を掲載している。

 

次に、多くの加盟紙等がウィブサイト上で引用している22時ちょっと前配信の記事を引用する。

 

 

性暴力を許さない社会でシンポ セクハラに耐える風潮変えようと

 

前財務事務次官のセクハラ問題発覚後、メディアで声を上げた被害者へのバッシングが深刻だとして、被害者を孤立させず、性暴力を許さない社会の在り方を話し合うシンポジウムが8日、東京都内で開かれた。「セクハラに耐えてなんぼという風潮を変える時だ」との意見が上がった。

 

シンポジウムは「メディアで起き始めた#MeToo 声をあげられる社会をつくるために」。国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが主催。

 

ジャーナリストの伊藤詩織さんは、元TBS記者に性的暴行を受けたことを告発する著書を出版。シンポジウムでは、被害後に「(加害者から)合格だよ」と言われたことを打ち明けた。

 

ようやく、今回のブログ記事の本題であるが、このシンポに参加したブログ主としては、共同通信が配信し多くの地方紙やネットニュースサイトなどで掲載されたこの記事には違和感を抱かずにはいられない。具体的に言えば、3つのパラグラフで構成された記事のうち、第1パラと第2パラは普通の記事だ。でも、最後のパラグラフは全く持って理解不能だ。

 

伊藤詩織氏が性暴行を受けた後に、「(加害者から)合格だよ」と言われた事実については、伊藤氏がこれまで著書や講演等で触れていない新たな真実として、共同の記者は注目したのであろうか。300字ほどの短い文章で、3時間にわたって議論が繰り広げられたシンポの内容を集約するのはプロの記者にとっても非常に難しい作業であると思われるが、「合格だよ」という発言を特記して取り上げることが、本シンポの趣旨に照らして殊更重要なことなのか、甚だ疑問である。

 

この手のイベントに、言葉は悪いが「客寄せパンダ」的に引っ張り出される伊藤詩織氏としては、自らの言動が社会的に注目の的になることを自覚しており、当日も、発言内容にはとかく気を遣っている様子であったが、パネルディスカッションの際にポロリと発言した「合格だよ」という一言が、取り立てて重要な発言とは思えない。

 

加害者から「合格だよ」と言われた事実を記事の中で紹介することを、伊藤氏自身が強く望んだのであろうか。おそらく、否であろう。たぶん、主催者たちも、脈絡もなく「合格だよ」という発言を取り上げた共同通信の記事のことを苦笑しているに違いない。

 

てなことで非常に残念な共同記事であったが、さらに考察を進めて、ではどうして、「合格だよ」のフレーズが配信されるに至ったのかを考えてみよう。

 

共同通信が記事を配信する時には、加盟社のデスクが喰い付いて、紙面掲載に至るかどうかを常に意識する。どんなに高尚な記事を書いたところで、加盟社のデスクが、ウチの読者にはウケないと判断すれば、配信を受けても記事化されずボツとなってしまう。結局、社会的関心事項に迎合し、一般読者、一般国民のレベルに合わせて配信記事が、加盟社において高い頻度で採用(紙面掲載)されることになる。

 

そうすると、伊藤氏が、レイプ魔・山口敬之に犯された後、レイプ魔から合格判定を受けたという非常にゲセワな逸話が、一般国民ウケするという判断が、共同通信の記者やデスクに働いたのであろう。

 

ここから先は、全く根拠のない妄想的憶測であるが、もしかすれば、この記事を書いた記者自身が、全く同じ経験をしていたのではないか、とすら思えてくる。5月31日付本ブログ記事女性記者不倫事件簿 第8号(共同通信女性記者と公務員の不倫関係)においても紹介したが、共同通信社は女性記者がらみの性的トラブルの多い会社であり、2013年5月には、今藤悟総務局次長券人事部長(懲戒解雇された)が、就活中の女子大生に「個人指導してやる」と言ってホテルに誘って襲いかかるというトンでもない不祥事が発覚して大騒ぎとなった。

 

かかる前科のある共同通信なので、もしかして、6月8日のシンポを取材した記者自身が、入社に際して、人事担当者から性暴力を受け、その結果として合格を勝ち取ったという経験の持ち主であり、その事実を暗に知らしめたいがために、伊藤氏の「合格だ」のフレーズをわざわざ取り上げたのではないか、とすら思えてくる、そんな記事であった。

 

 ちなみに、共同通信がインターネット掲載用の配信記事としては、上記のとおり、伊藤詩織氏について「シンポジウムでは、被害後に「(加害者から)合格だよ」と言われたことを打ち明けた。」の一文で終わっているが、最終稿では、この後に次の2文が続いているようなので、参考までに紹介しておく。

「メディアで働くとは、暴力やハラスメントをのんで生きていかなければいけないのかと、ものすごいパニックになった」と話した。

エッセイストの小島慶子さんは「メディアで働くとは、セクハラに耐えてなんぼだという暗黙の了解をいよいよ変える時だ」と話した。

 

 

散々、共同の記事をディスっていながら、フォローするのもナンだが、「メディアで働くとは、暴力やハラスメントをのんで生きていかなければいけないのかと、ものすごいパニックになった」という伊藤氏のコメントもきちんと取り上げるのであれば、文脈的に「合格だよ」というフレーズの意味も了解可能となるではないか。