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社会ノマド、社会の窓、流浪しながら漂泊する社会を見つめます

またしても、はしか(麻疹)狂想曲が奏でられている - 麻疹流行を騒ぎ過ぎる不健全な社会

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2019年2月17日 NHK NEWS WEBの注目キーワード「はしか」

 

 

またしても、はしか(麻疹)が流行しているらしい。

 

NHK NEWS WEBでは、トップページの上付き部分に「注目キーワード」が幾つか羅列されている。本日2019年2月17日の閲覧では、「はしか、池江選手、児童虐待、統計不正問題、米朝首脳会談トランプ大統領東京五輪・パラ」の7項目が注目キーワードとして並び、その筆頭に「はしか」が位置している。

 

池江選手、児童虐待、統計不正問題、米朝首脳会談などなど、いずれも社会的に超ビックニュースであることは言うまでもないが、これらよりも「はしか」が上位に位置づけられていることが筆者には到底理解不能だ。

 

注目キーワードの「はしか」をクリックすると、次のようなのニュース項目が並んでいる。

・病院ではしかの集団感染 医師や事務職員など10人 大阪 茨木2月15日 23時24分
・海外旅行の男性がはしか JRや地下鉄で千葉県内や都内移動2月15日 20時09分
・大阪 あべのハルカス はしか感染 新たに客2人2月15日 18時27分
・はしか感染の女性 成田から横浜へ バスと東横線で 11日朝2月15日 15時16分
・【動画】はしかの女性 新幹線でどう移動した?2月15日 10時16分
・「あべのハルカス近鉄百貨店の利用客6人もはしか感染2月14日 22時44分
・はしかの患者数 19都道府県で148人2月14日 21時53分
・新幹線で新大阪~東京往復の女性 はしか感染2月14日 20時42分
・和歌山で3人がはしかに 大阪などで感染か2月14日 19時15分
・「はしか公表しないよう」保健所が病院側に伝える 大阪府2月13日 23時22分
・「あべのハルカス」新たに従業員7人がはしかと診断 大阪2月13日 22時23分
アメリカ はしか感染拡大 ことしの患者100人超に2月13日 8時13分
・大阪「あべのハルカス」店員がはしか 注意呼びかけ2月11日 18時46分


今般の日本でのはしか騒動は、直接的には大阪「あべのハルカス」店員でのはしか感染事案に端を発しているが、今年は米国でも感染が拡大しているし、東南アジアでは、フィリピンを中心に爆発的流行が続いている。

 

1月には、三重県津市の宗教法人「ミロクコミュニティ救世神教」における集団感染事例も報告されている。昨年12月下旬に、この宗教法人が開いた研修会参加者49人のうち、少なくとも29人が発症したらしい。同宗教法人は「医薬に依存しない健康」を教義としており、参加者の大部分がワクチンを接種していなかったと報じられている。

 

はしかの集団感染を招いたことで、この宗教法人を危険視する向きも社会には存在するようだが、筆者には、「ワクチン接種を徹底すれば、はしかは根絶できる」と唱える医学界の教義のほうがよっぽどデタラメで危なっかしい妄言と思えてならない。「ワクチン接種を徹底すれば、はしかは根絶できる」と宣う医学界と比べると、「医薬に依存しない健康」を唱導する宗教法人のほうが、健全でまともだ

 

筆者は、昨年4月、沖縄を中心に麻疹(はしか)が流行した際、関連記事を2本の記事をアップした。

はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/27/010647

はしか(麻疹)根絶という幻想と脆弱な社会
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/28/015846

 

はしか(麻疹)についての筆者の見解は、この2本の記事をお読みいただきたが、基本認識は次のとおりである。


・はしか(麻疹)は、時に重篤症状をきたすことのある感染症であるが、医学界や厚生労働省が主張するようなメチャクチャ怖い感染症では決してない。にもかかわらず、1例でも患者が発生すれば、厚生労働省や専門家が、あたかも社会の存続を脅かす重大事件が発生したかのごとく厳戒態勢を取るよう呼びかけるのは摩訶不思議で不健全な対応だ。


・「ワクチン接種を徹底すれば、はしかは根絶できる」という医学界の最重要教理は大嘘であり、むしろ、ワクチン接種率があがればあがるほど、はしかに対して社会は脆弱となってしまう。だけど、この事実を暴かれたくない。このため、はしかについて恐怖のイメージを国民に植え付け、ワクチンを打て!打て!と大号令を続け、結果として、はしかに対して更に脆弱な社会へと突き進んでいる。

 


たまたま千葉市が2日前の2月15日に記者発表した「麻しんの発生について」と題する資料を目にした。
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/kenkou/kikaku/documents/mashin_press.pdf

 

この記者発表資料には、モルディブに滞在していた20代男性の麻疹患者について、個人の症状や移動経路等が詳細に記載されているではないか。例えば、2月9日の欄には、次のように記載されている。

 14時台 本千葉駅発→千葉駅(この間、医療機関Aを受診)
 16時台 千葉駅構内に30分程度滞在
 17時台 千葉駅発(総武線各駅停車)→飯田橋駅大江戸線)→若松河田駅
 23時台 若松河田駅発(大江戸線)→飯田橋駅総武線各駅停車)→千葉駅

 

たかだか麻疹(はしか)ごとき感染症に対し、自治体の保健当局(保健所)が、あたかも社会の存続自体を脅かしかねないエボラ感染症やクリミア・コンゴ熱のような致死性が極めて高い一類感染症でも発生したかのごとく、一例一例、感染経路や交通移動ルート等について詳細な疫学調査を実施し、人権侵害につながりかねないプレス発表を平然と行っている様は正気の沙汰とは思えない。完全に、イカレているとしか言いようがない。

 

そして、行政機関が記者発表を行うと、報道機関が、発表情報を機械的に垂れ流し、社会の中で、はしかに対する誤った恐怖心が植え付けられ、特に、乳幼児の保護者は深刻な健康不安をいだいてしまう。例えば、千葉市の記者発表に対する、NHW NEWS WEBの記事を紹介しよう。

海外旅行の男性がはしか JRや地下鉄で千葉県内や都内移動
2019年2月15日 20時09分

 

千葉市では先月、モルディブから帰国した20代の男性がはしかと診断されました。男性はJRや地下鉄を使って千葉県内や都内を移動していたことから、千葉市は感染が広がるおそれがあるとして注意を呼びかけています。

はしかと診断されたのは千葉市に住む20代の男性で、先月モルディブから帰国したあと、今月6日の夜になって発熱の症状が出ました。

検査ではしかと確定するまでの間、医療機関の受診などのため、千葉県内や都内のJRや地下鉄を利用したということです。

男性が利用した交通機関を詳しく見ますと、今月5日と6日には午前8時に本千葉駅を出発したJR内房線などを利用。

発熱の症状が出たあとの今月7日には千葉市内の医療機関を受診するため午前10時19分、本千葉駅発・千葉駅行きのJR外房線などを利用。

発疹の症状が出たあとの今月9日午後2時台、千葉市内の医療機関を再受診したあと、紹介を受けた都内の医療機関に行くため、午後5時台にJR千葉駅から都営大江戸線飯田橋駅を経由して若松河田駅まで移動し、午後11時台に同じルートを逆に通って帰宅しています。

そして今月12日には再び都内の医療機関を受診するため、午前8時からJR本千葉駅を出発して都営大江戸線若松河田駅までの間を往復しました。

千葉市は同じ時間帯に利用した人に感染が広がるおそれがあるとして、男性が利用した交通機関の情報をホームページの「ニュースリリース・記者発表資料」などで公表して注意を呼びかけています。

そして発熱や発疹などはしかが疑われる症状が現れた場合には、事前に医療機関に連絡したうえで指示に従って受診するよう呼びかけています。

千葉市ではしかの患者が発生したのは、平成25年8月以来およそ5年半ぶりだということです。

 

 ここではたまたま千葉市を例に取り上げたが、このようなイカレた対応は、千葉市だけではないようだ。全国の自治体において、はしかの症例が発生した際には、同様の記者発表が当たり前のように行われている。自治体の保健当局の連中は、一類感染症と五類感染症の違いをそもそも理解しているのであろうか。はしかのような所詮五類感染症については、本体的には蔓延防止よりも患者のプライバシー保護のほうが、感染症法の理念に照らし重要性が高いことを認識しているのだろうか。

 

日本におけるワクチン教の総本山である国立感染症研究所の教団幹部たちは、はしかは、エボラ感染症と同程度の危険な感染症だと妄信しているようだが、国立感染症研究所による誤ったリスク認知の洗脳を受けてしまった自治体保健所職員が、はしか症例が発生した際、その必要性等について何ら疑問を感じることなく不毛で無駄な追跡調査に職務として全身全霊取り組み消耗している保健所職員は、気の毒だし滑稽ですらある。

 

頭を冷やして、はしか(麻疹)のリスクが、社会生活を営む上で日常的に遭遇する様々な他の健康リスクと比較してどの程度のものなのか、冷静に考えてみましょうよ!

 

 

【予告】

次回は、「はしか(麻疹)のリスクが、社会生活を営む上で日常的に遭遇する様々な他の健康リスクと比較してどの程度のものなのか」という点について解説します。

6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その3)「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の違いを深読みする

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岩屋防衛大臣の会見の模様


 

2013年2月5日、防衛省は、同年1月30日に海上自衛隊護衛艦が中国海軍艦艇から火器管制レーダーの照射を受けたこと、同月19日には海上自衛隊のヘリコプターに対する中国海軍艦艇からの火器管制レーダーの照射が疑われる事案が発生していたとして、中国に申し入れを行うとともに、本件について公表した。


ここで、6年前の日中レーダー照射事案では、1月30日に護衛艦への照射を受けたとする事実を公表したのは6日後の2月5日であったこと、1月19日のヘリへのレーダー照射は「疑われる事案」として控えめの表現で断定を避けていることに注目されたい。


後ほど詳述するが、1月30日に自衛隊護衛艦がレーダー照射を受けから公表までに6日間を要した理由して、政府は「火器管制レーダーの照射を受けたと確認するまで慎重かつ詳細な分析を行っていたためである」としている。

 

他方、今般の日韓レーダー照射事案では、2018年12月20日に海自哨戒機が韓国海護衛艦からレーダ照射を受けたと、翌21日に断定的に公表された。加えて、事案発生から1ヵ月後の2019年1月21日自衛隊最終見解において、「慎重かつ綿密に解析した結果、…火器管制レーダー(STIR-180)からのレーダー波を一定時間継続して複数回照射されていたことを確認」したと述べている。

 

2月10日の本ブログ記事でも記載したとおり、6年前の日中事案と今般の日韓事案を比較して、筆者は、以下のような素朴な疑問を感じていた。

 

・照射を受けた/照射された」と断定する場合と、「照射が疑われる」と判断する場合とではその判断の根拠となる証拠の水準等において何が異なるのか?明確な判断基準はあるのか?

・2013年1月30日の事案では、「慎重かつ詳細な分析」に6日間を要していたのに、2018年12月20日の事案では翌日には照射の事実を断定し公表に踏み切っているが、この6年間の間に、自衛隊におけるレーダー解析技術が根本的・画期的に向上したのか?それとも、もしかして、12月21日の時点では、STIR-180のレーダー照射の事実は確定的に解析されていなかったにもかかわらず、見切りで断定的に公表してしまったのか?

 

筆者が抱いたこれらの素朴な疑問を、6年前の国会議事録と今般の防衛省の表現等を眺めることによって改めて検証してみよう。

 

6年前の日中レーダー照射事案での自衛隊における分析過程

前回の本ブログ記事でも触れたとおり、6年前の日中レーダー照射事案が勃発した2013年2月には、国会において頻繁に本問題が取り上げられた。ここでは、関連質疑のうち、特に発表に至る経緯についての政府側の答弁をいくつか取り上げる。

 

(1)2013年2月7日衆議院予算委員会

 前回のブログ記事でも取り上げた民主党原口一博議員による質疑の中で、中国海軍艦船からレーダー照射を受けてから公表が遅れたこと、総理への報告が遅れたことを問題視する議員の指摘に対し、小野寺防衛大臣と安部総理はそれぞれ次のように答弁している。

○小野寺国務大臣 少し経緯について説明をさせていただければと思います。
 実は、一月十九日、疑わしい事案があったということで、私、そしてこの後総理の秘書官にも報告があり、その詳細の分析を行うような状況でありました。実は、事この問題は、国際的に抗議をするということになりますと大変重要な問題になります。ですから、しっかり証拠というものを私どもは手にする必要がある、そういう思いで対応させていただきました。
 この時点では、実は、ヘリコプターでの警報でありますので、証拠というものがしっかりと国際的にも表明できるような内容になるかどうかということで、不安なこともございました。
 その後、私ども、特に私の方から運用局長の方には、今回、しっかりとした明確な違反ということが確認されたということをもって私どもとして対応したいというお話をさせていただきました。
 そのことから、今回、運用局長は、この事案が発生した後、これは証拠として間違いないという確信が出るまで精査をした上で報告が来たんだと思っております。
 いずれにしても、今回の案件というのは極めて特異的なものでありますし、また、こちらから国際的にこのような問題があると中国に抗議をするに当たっては、これはどの国が見ても間違いないという明々白々な資料を私どもとしては持つ必要がある、そのような慎重な対応をさせていただきました。

 

安倍内閣総理大臣 十九日の事案については、直ちに防衛大臣、そして私のところに上がってきたわけであります。しかし、結果として、これが中国側のレーダー照射であるということが認識できなかったということになってしまった。このことがあったものですから、事務方は三十日の事案についてより慎重になってしまって、防衛大臣、そして私のところに上がってくるのが遅くなったということだと思います。そこは、事務方の気持ちはわかるわけでありますが、基本的には、発生した時点で、それが中国側のものかどうかの確認は別として、まだ未確認ということで今後は私のところに、もちろん防衛大臣のところに上がってくるようにいたします
 と同時に、中国側も、こういう事案においては、国際社会においてある種の宣伝戦的な要素があることも事実であろう。そういう観点は日本の外交、安全保障において欠落していた観点だ、このように思いますので、ある情報については、ただ単に秘密主義に陥るのではなくて、日本の立場を強固にするもの、あるいは中国がこういう問題行動をとっているよということについては、むしろ我々は積極的に公表していくべきではないか、このように考えております。

 

(2)2013年2月8月衆議院予算委員会
 この日は、日本維新の会中田宏議員が、レーダー照射事案について中国に対し、高いレベルで抗議するなど戦略的対応が必要ではないか、という趣旨の質問を行っている。これに対する岸田外務大臣、小野田防衛大臣、安部総理の答弁を順に見てみよう。

 

○岸田国務大臣 今申し上げているように、中国の説明責任がどう果たされるか見守っていたところですが、昨日夕刻に、七日夕刻ですが、中国国防部から我が方、在中国大使館に対しまして説明がございました。その説明によりますと、日本側が対外公表した事案の内容は事実に合致していないという説明でありました。
 それに対しまして、本件は防衛省において慎重かつ詳細な分析を行った結果でありますし、我が方として確認したものであり、こうした説明は全く受け入れられないと考えておりますし、そして、その中国側とのやりとり、詳細は控えますが、この日本側の公表内容が事実に合致しないという指摘があったため、かかる指摘は全く受け入れられない旨、こちらから誠実な対応を求めた、こうしたやりとりがございました。

 

○小野寺国務大臣 今回の防衛省の分析に当たっては、火器管制レーダーの照射を受けたデータを護衛艦でしっかりと収集を行い、そして日本に持ち帰り、専門部隊で精密な分析を行って、しっかりとして、私ども公表させていただいた状況であります。間違いない状況だと思っています。

 

安倍内閣総理大臣 今回の事案については、ただいま防衛大臣から答弁したとおり、極めて慎重に精査した結果、中国側がレーダー照射を行ったことが明らかになった上で、我々は発表したわけであります。

 


(3)2013年2月13月衆議院予算委員会

 この日は、日本維新の会村上政俊議員が、証拠の開示の是非について政府の見解を問うている。村上議員自身は、「我が国の情報収集そして分析能力をいたずらに他国に知らせる必要ないと考えております」と述べた上で、「他方、公表して我が国の防衛に支障のない証拠があるのであれば、…むしろ適時適切に証拠を公表して、国際世論に対して働きかけを行っていく必要があるのではないか」との自論を示した上で、防衛大臣の考えを尋ねている。

 

○小野寺国務大臣 御指摘の今般の中国艦船の火器管制レーダーの照射事案でありますが、これは、護衛艦の機材が収集したデータを、海上自衛隊の電子情報支援隊、横須賀にありますが、ここで、このレーダーの周波数等の電波特性や護衛艦等と相手の位置関係など、現場の状況について慎重かつ詳細に分析を行った結果、我が方としては確信を持っているということでございます。
 当該の開示につきましては、中国側の反応を見きわめる必要があります。また、開示に当たっては、自衛隊の情報収集・分析能力を明らかにするおそれがあるということでありますので、関係省庁との調整を踏まえ、慎重に対応しているところであります。

 

(4)2013年2月19日付け質問主意書への答弁書
2013年2月7日に、参議院議員大野元裕氏が、レーダー照射事案に関する質問主意書を国会法第74条に基づき提出しており、2月19日付けで閣議決定を経てが答弁書が回答されている。「1月30日の事案については、当初よりレーダー照射の疑いがあったのに二月五日まで公表しなかった理由について示されたい。」との質問に対し、内閣は次のとおり答弁している。

1月30日の事案について同年2月5日まで公表しなかったのは、海上自衛隊護衛艦が中国海軍艦艇から火器管制レーダーの照射を受けたと確認するまで慎重かつ詳細な分析を行っていたためである。

 

(5)2013年2月17日参議院予算委員会
 この日は、民主党・新緑風会福山哲郎議員が、レーダー照射事案について、当時の現場の具体的な状況、1月30日の事案について大臣への報告まで6日を要した理由等について質問しており、政府参考人、小野寺防衛大臣、安部総理は次のように答弁している。

○政府参考人(黒江哲郎君) まず、一月十九日の事案でございますけれども、同日の午後五時ごろ、東シナ海の公海上で、警戒監視活動中の護衛艦「おおなみ」搭載のヘリコプターが飛行中に機内で火器管制レーダーの照射を受けた可能性があると、これを知らせます警報が鳴ったということでございます。同海域には中国海軍のジャンカイⅠ級のフリゲートが所在しておりまして、これからの照射が疑われる事案であったということでございます。
 また、三十日の件は、午前十時ごろ、同じく東シナ海の公海上で、警戒監視活動中の護衛艦「ゆうだち」が同海域に所在しておりました中国海軍のジャンウェイⅡフリゲートから火器管制レーダーを照射されたということを艦内で探知をしたということでございます。
 いずれの事案におきましても、先ほど委員御指摘のとおり、極めてこれは特異な事案でございますので、艦内、乗員は極めて強い緊張状態に置かれたわけでございますけれども、いずれの事案におきましても、機長及び艦長の指示に基づきまして状況を確認して適切な回避行動を取ったという、そういうことでございます。

 

国務大臣小野寺五典君) 
 一月十九日に報告があったときには、これはもう私ども大変なことだと思いましたが、本当にこれは間違いないのかと、非常に特異的なことですので間違いないのかということを確認をさせていただきましたが、実はその時点ではしっかりとしたデータ、情報が我が方では記録をすることができておりませんでした。三十日の時点で記録を取ったということだと思いますが、私も後からちょっと事務方にお伺いすると、残念ながら、やはりしっかりとしたこれはデータを解析した上で報告しようということで私どもに上がってきたと思っております。
 今後このようなことがないようにしっかり私ども指摘をしていきたいと思っておりますが、ただ、一つお答えをさせていただきたいと思えば、実はこの日程については、確かに、遠隔地にあってデータを運ぶ手段がほかになかったということで、今回は艦船を使って運ばせていただきました。そして、しっかり私どもとしては分析をさせていただきましたが、ただ、是非知っていただきたいのは、非常にこれは、例えば対外的に抗議をするにしても大変重い課題になります。ですから、最終的には、しっかり情報を分析して証拠をしっかり固めてから私どもとしては対応させていただくということだと思っております。

 

○政府参考人(黒江哲郎君) 当日の状況等々につきましては、委員御指摘のとおり、艦内におきましてレーダー照射が探知されているということは当然理解をされておるわけでございます。他方、先ほど大臣から御答弁申し上げましたけれども、外交的な手段を取るということの前提として、極めて確度の高いデータであるということを検証するということも我々必要だというふうに考えまして、そういう意味で、私のところでこれについてまず判断をした上で御報告をしようということで判断をしたところでございます。
 その件については、先ほど来大臣からも御指摘ございましたけれども、今後速やかな対応をするようにということで、その指示に従ってまいりたいというふうに考えております。

 

内閣総理大臣安倍晋三君) この十九日の事案については、先ほど防衛大臣から答弁をさせていただきましたように、これは中国側の照射であるということについて、我々が完全にその段階では、十九日の段階では、我々、言わば証拠として証明するということができるという状況ではなかったということもございました。


6年前の日中事案 国会質疑から分かること

これらの国会質疑から、以下のことが事実認定できる。

 

(1)1月19日に、海自のヘリコプターが、中国海軍艦船からレーダー照射を受けた疑い事例については、機内で火器管制レーダーの照射を受けた可能性ことを知らせる警報が鳴り、事案発生後、速やかに防衛大臣や総理まで報告された。

しかし、ヘリコプターでの警報に過ぎず、しっかりとしたデータ、情報が記録されていなかったため、どの国が見ても間違いないという明々白々な資料(証拠)が得られなかったため、1月19日の事案については最終的に「疑い事案」という表現に留めることとなった。

 

(2)1月30日に海自護衛艦がレーダー照射を受けた事例については、1月19日のヘリ事案の反省を活かし、「証拠として間違いないという確信が出るまで精査」を行い、国際的にも表明できるような「極めて確度の高いデータであるということを検証」した上で、2月5日に中国側への申し入れ(抗議)し、公表に踏み切ったとのことである。

この間の具体的なプロセスとしては、まず、護衛艦においてデータをしっかりと収集し、護衛艦の機材が収集したデータを艦船を使って横須賀にある海上自衛隊の電子情報支援隊まで運び、そこで「レーダーの周波数等の電波特性や護衛艦等と相手の位置関係など、現場の状況について慎重かつ詳細に分析を行った」結果、レーダー照射が行われたと確信を持つに至った。

このように、「しっかり情報を分析して証拠をしっかり固め」るために、事案発生から、申し入れ・公表まで6日間を要したとのことである。

 

(3)1月30日の事案発生後、横須賀の電子情報支援隊において実施された「レーダーの周波数等の電波特性や護衛艦等と相手の位置関係など、現場の状況について慎重かつ詳細に分析」した証拠固めの作業について、「専門部隊で精密な分析」「極めて慎重に精査」などの表現も答弁で用いられているが、政府の公式表現は、2月19日付の質問主意書への答弁書に記載された「慎重かつ詳細な分析」である。

ちなみに、「慎重かつ詳細な分析」というフレーズの初出は、2月8日の岸本外務大臣の答弁である。

 

今般の日韓レーダー照射事案における自衛隊での分析過程

以上、6年前の日中レーダー照射事案における「慎重かつ詳細な分析」等の経緯を頭に入れた上で、今般の日韓レーダー照射事案の経緯について再確認してみよう。

 

その前に、今般の日韓レーダー事案で、照射の事実関係を巡って、日韓で争点となった論点について復習しておこう。防衛省は12月21日に、韓国駆逐艦から海自哨戒機が火器管制レーダー照射を受けたと断定的に公表した。この時点で、火器管制レーダーの具体的機種名を日本側は公表していなかったが、STIR-180というレーダーを指すものとの前提のもとに、その後、論争が続く。

韓国側は、24日に、他のレーダーは稼動していたが、STIR-180からレーダー波は照射しておらず、他のレーダー波を自衛隊が誤認したのではないかと主張。12月25日の大臣会見で、記者から、STIR-180のレーダー波を探知したのかズバリの回答を求められた際、岩屋大臣は茶を濁して明言を避けている。その後、2019年1月21日に、防衛省が最終見解を発表し、その中で、STIR-180からのレーダー波を一定時間継続して複数回照射されていたことを確認したと明言した。


それでは、このあたりの経緯を、防衛省の発表文書や防衛大臣の会見での発言をから、改めて振り返ってみよう。時系列に羅列する。


(1)2018年12月22日の防衛省見解
防衛省のホームーページに掲載された韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について」(第2報)において、次のように記載されている。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/22a.html

 本件について、種々の報道がなされていますが、防衛省としては、20日(木)のレーダー照射事案の発生後、海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断しています。

 

(2)2018年12月25日の防衛省見解
防衛省のホームーページに掲載された韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について」(第3報)において、次のように記載されている。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/25b.html

本件について、昨日、韓国国防部が見解を発表していますが、防衛省としては、事実関係の一部に誤認があると考えています。

まず、防衛省では、20日(木)のレーダー照射事案の発生後、海自P-1の機材が収集したデータを基に当該駆逐艦から発せられた電波の周波数帯域や電波強度などを解析した結果、海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認しております。

 

(3)2018年12月25日の防衛大臣定例会見

12月25日の昼前に行われた大臣会見では、レーダー照射問題について質問が相次ぎ、次のようなやり取りが行われている。
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html

Q:これまでのところ、見解の食い違いがあらわなわけですけれども、この背景には何があると大臣はお考えでしょうか。
A:背景というよりも、私どもも海自が収集したデータを慎重に解析をした結果、照射があったことは事実だというふうに考えております。事柄の重大性に鑑みて、やはり、遺憾の意を表した上で再発防止を強く申し入れる必要があったということでございます。冒頭に申し上げたように、韓国側の見解が返ってきましたが、そこに不一致の点があるので、これについては、今後、当局間でしっかり協議をしたいと思っております。

 

Q:韓国側の主張で、大臣が金曜日に発表されたときに、日本側の事実確認がないまま発表したことに対して韓国側から遺憾の意が表明されているのですが、この件に関してはどうお考えですか。
A:これも先ほど申し上げたように、やはり火器管制レーダーを照射するというのは、不測の事態を招きかねない極めて危険な行為であって、防衛省側の、海自側の分析で、照射を受けたことは明らかだということが分かりましたので、速やかに遺憾の意を表し、再発防止を申し入れる必要があったというふうに判断したからでございます。

 

Q:韓国側は射撃管制用のレーダーと、火器管制用のレーダーを使い分けて、いわゆるMW-08のレーダーとSTIRのレーダーを使い分けていると説明していると思うのですが、そのSTIRの方は使っていないという説明だと思うのですが、日本側が探知をして発表に至ったのは、STIRを感知したということでしょうか
A:その中身を逐一、詳細に申し上げるわけにもいかないと思いますが、防衛省側はおっしゃったようなことも含めて、海自側は分析をしております

 

(4)2019年1月21日 防衛省の「最終見解」
2019年1月21日に防衛省「韓国レーダー照射事案に関する最終見解」を公表した。この中では、レーダー照射が行われた証拠として、以下のように記載されている。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x_1.pdf

 

防衛省の専門部隊で海自P-1 哨戒機に照射されたレーダー波の周波数、強度、受信波形などを慎重かつ綿密に解析した結果、海自 P-1 哨戒機が写真撮影等を実施した韓国駆逐艦の火器管制レーダー(STIR-180)からのレーダー波を一定時間継続して複数回照射されていたことを確認しています。なお、近傍に所在していた韓国警備救難艦には、同じレーダーは搭載されておらず、韓国駆逐艦からの照射の事実は、防衛省が昨年12 月28 日に公表した動画の内容からも明らかです。

 

今般、防衛省としては、火器管制レーダー照射の更なる根拠として、海自P1 哨戒機の乗組員が機上で聞いていた、探知レーダー波を音に変換したデータを、保全措置を講じた上で、防衛省ホームページにおいて公表することとしました。

 

一般に、火器管制レーダーは、ミサイルや砲弾を命中させるために、目標にレーダー波を継続的に照射して、その位置や速度等を正確に掴むために用いるものであり、回転しながらレーダー波を出して、周囲の目標を捜索・発見するための捜索レーダーとは、波形などのデータに明確な違いがあります。このため、レーダー波を解析すれば、その種類や発信源の特定が可能であり、今回、海自 P-1 哨戒機に照射されたレーダー波は、火器管制レーダー特有の性質を示していました。

 

防衛省の解析結果等から、このレーダー波が、海自 P-1 哨戒機が写真撮影等を実施した韓国駆逐艦の火器管制レーダーから発せられたことは明らかですが、客観的かつ中立的に事実を認定するためには、相互主義に基づき、日本が探知したレーダー波の情報と、韓国駆逐艦が装備する火器管制レーダーの詳細な性能の情報の双方を突き合わせた上で総合的な判断を行うことが不可欠です。

 

こうしたことから、防衛省は、本年1 月14 日の実務者協議において、相互主義に基づき、解析結果のもととなる探知したレーダー波のデータやレーダー波を音に変換したデータなど事実確認に資する証拠と、韓国駆逐艦の火器管制レーダーの性能や同レーダーの使用記録などを、情報管理を徹底した上で突き合わせ、共同で検証していくことを提案しましたが、受け入れられませんでした。

今般の日韓事案おける照射事実分析過程の疑問点

今般の日韓レーダー照射事案について12月21日の公表から翌年1月21日の最終見解の発表までの経緯を振り返ってみたところで、次のような疑問が浮んでくる。

 

(1)6年前の日中レーダー照射事案では、事案発生から横須賀の電子情報支援隊での「慎重かつ詳細な分析」により証拠固めをして対外的に公表するまで6日を要しているが、今般の日韓事案では、事案が発生した翌日にはその事実を公表し、韓国に申し入れを行っている。

昨年12月22日の防衛省見解では、「海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断」したとされているところ、ここでいう「慎重かつ詳細な分析」とは、6年前の日中事案における場合と同様、電子情報支援隊における分析を経たものなのだろうか。それとも、この時点で、電子情報支援隊における結論は得られておらず、レーダー照射を受けた確証が得られていない段階で、見切り発車で断定的に公表したのだろうか。

 

(2)仮に、12月21日、あるいは22日の時点で、横須賀の電子情報支援隊における分析が完了していなかったとした場合、いつの時点で、電子情報支援隊の分析の最終結論が得られたのであろうか。

 

(3)12月25日の記者会見で、「日本側が探知をして発表に至ったのは、STIRを感知したということでしょうか」と質問された際、岩屋防衛大臣は、「その中身を逐一、詳細に申し上げるわけにもいかないと思いますが、防衛省側はおっしゃったようなことも含めて、海自側は分析をしております」と歯切れが悪い回答をしている。

この時点で、STIR-180の照射を受けていたという電子情報支援隊の最終結論はまだ得られていなかったのだろうか。それとも、最終結論は得られていたが、大臣にはまだ報告されていなかったのだろうか。あるいは、大臣自身、既に電子情報支援隊の分析結果を報告は受けていたものの、STIR-180照射に係る事実の公表等についての政府内での対応方針が未確定であったことから、25日の会見では茶を濁していたのだろうか。

 

(4)1月21日の最終見解において、「防衛省の専門部隊で海自P-1 哨戒機に照射されたレーダー波の周波数、強度、受信波形などを慎重かつ綿密に解析した結果、海自 P-1 哨戒機が写真撮影等を実施した韓国駆逐艦の火器管制レーダー(STIR-180)からのレーダー波を一定時間継続して複数回照射されていたことを確認しています」と述べているが、ここでいう「慎重かつ綿密な解析」は6年前の日中レーダー照射事案における「慎重かつ詳細な分析」と同程度の内容の解析を意味するのだろうか。それとも、6年前の日中事案の際の分析とは量的・質的にも異次元の緻密な精査を行ったのだろうか。

 

ブログ主の見解

今般の日韓レーダー照射問題発生後の自衛隊における照射事実の分析過程についての上述の疑問点について、ブログ主の大胆予測による見解を示しておこう。


2013年1月19日、海自の護衛艦搭載ヘリコプターにおいて、中国海軍艦船からレーダー照射を疑われる事案が発生した際には、機内で火器管制レーダーの照射を受けた可能性があることを知らせる警報が鳴ったものの、照射の事実を確証するに足るデータが得られていなかった。

 

一方、同年1月30日に海自護衛艦がレーダー照射を受けた際には、照射を受けたデータを護衛艦で収集し、横須賀の電子情報支援隊で「慎重かつ詳細な分析」を行った上で、照射の事実を断定した経緯がある。

 

6年前の日中事案発生時には、国会において、事案発生後の大臣・総理への報告や公表が遅滞したと与野党双方から批判されたこともあり、その後、海上自衛隊における火器管制レーダー照射に対する警戒閾値や対処能力は大幅に強化されたであろうことが推量できる。

 

そして、2018年12月20日の事案では、元よりP1哨戒機はレーダー照射に対処する電子戦対応能力が高いとされており、2013年1月19日に疑い事例が報告されたヘリコプターと比較すると、かなり精度の高い照射関連データが収集されていた可能性が高いと思われる。

 

しかしながら、P1哨戒機内において、照射されたレーダーの機種等を詳細に解析することは不可能であり、STIR-180レーダーが照射されたことを証明するためには、地上で専門的な解析作業を行うことが不可避である。そして、その解析作業は、検証・確認プロセスなども含め一定の時間を要するはずであり、「証拠として間違いないという確信が出るまで(の)精査」(2013年2月7日の小野寺防衛大臣の答弁)が翌21日までに終了していたとは到底考えられない

 

すなわち、昨年12月22日の防衛省見解では、「海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断」したとされているものの、21日の公表時点で、電子情報支援隊における「慎重かつ詳細な分析」は完了していなかったはずである。

 

なので、防衛省としては、12月21日の時点において、火器管制レーダー(STIR-180)の照射を受けた確証が得られていないとして、公表に踏み込むことには躊躇していた。けれども、安部総理自身の強い執着により、公表を余儀なくさせられたのであろう

 

さらに言えば、防衛省内では、12月20日に発生した事案を12月21日の時点において、防衛大臣や総理にまで報告することさえ慎重論があったに違いない。「安部総理の性格を考えると、未確定段階でも公表しろ、韓国に抗議しろ、と言い出す可能性が高い。公表後に誤認だと判明すると、取り返しがつかなくなるぞ。」「だけど、2013年2月7日衆議院予算委員会において安部総理が、「今後は(レーダー照射事案が発生すると)未確定であっても総理まで報告させる」旨明言しているので、報告せざるを得ない。」防衛省幹部の深刻な討議の模様が目に浮かぶ。

 

安部総理としては、12月21日の時点でレーダー照射事案について公表することにより、平成最後の天皇誕生日前後の年末・クリスマス前の3連休において、報道番組でこの話題が集中的に取り上げられることが期待でき、反韓世論の醸成と愛国意識の鼓舞による政権浮揚の好機と判断したに違いない。

 

12月22日の防衛省見解で、「慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断」したと記載されているが、この時点で、横須賀の電子情報支援隊での分析が完了していないのであれば、6年前の日中事案後に質問主意書への答弁書で用いた「慎重かつ詳細な分析」というフレーズを転記すべきではなかったのである。

 

12月22日の防衛省見解で、「慎重かつ詳細な分析」というフレーズを用いたのは明らかなチョンボ(判断ミス)であり、見解を出した後にそのチョンボに気づいたからこそ、12月25日の防衛省見解では「慎重かつ詳細な分析」というフレーズは用いず、それ以後もこのフレーズは封印されることになったのだ。

 

おそらく、12月25日の時点で、横須賀の電子情報支援隊での客観的・実証主義的な「慎重かつ詳細な分析」は一旦終了していたであろうが、電子情報支援隊での分析をもってしてもこの時点で、STIR-180レーダーの照射を確証できていなかったのではなかろうか。

 

その後、正月を跨いで、日韓トップレベルでの対立が持続する中で、安部総理の意向を忖度して、客観的・実証主義的な「慎重かつ詳細な分析」を超越した更に高度な異次元での「慎重かつ綿密な解析」を行った結果として、1月21日の最終見解において、STIR-180からのレーダー波の照射を確定的に結論付けたのだろう

 

「慎重かつ綿密な解析」の結果として、STIR-180からレーダー波が照射されたと見解で断定してはいるものの、一方で、「防衛省の解析結果等から、このレーダー波が、…韓国駆逐艦の火器管制レーダーから発せられたことは明らかですが、客観的かつ中立的に事実を認定するためには、相互主義に基づき、…双方を突き合わせた上で総合的な判断を行うことが不可欠です。」と述べており、自信なさげである。


さらに言えば、1月21日の最終見解は、自衛隊による「慎重かつ綿密な解析」が「客観的かつ中立的な事実認定」ではないことを自白しており、相互主義の名の下に、韓国側にとって不利益が大きく、韓国側が拒絶するであろうことが明らかな条件を突きつけた上で、検証を拒む韓国は不誠実だと一方的に抗議し、本件の幕引きを企てた防衛省の姿勢からは、彼らが「慎重かつ綿密な解析」について疚しさを感じていることが滲み出ていて痛々しい

 

(註)防衛省は、日韓レーダー照射問題について、ご丁寧に英語、韓国版のサイトも設けているが、「慎重かつ詳細な分析」の英訳はcareful and detailed analysis、 「慎重かつ綿密な解析」はcareful and meticulous analysisと訳しているようだ。

 

 

 

【本ブログ内の関連記事】

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6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その2)「危険な行為」と「極めて危険な行為」の差異

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2013年当時の防衛大臣(小野寺大臣)

 

日韓レーダー照射問題については、ごく一部に、そもそも、韓国駆逐艦から海自哨戒機に対しSTIR-180火器管制レーダーは照射されておらず、日本政府・自衛隊によるでっち上げ策動だ、とする論者も存在するようだが、さておき、火器管制レーダーの照射は客観的にどの程度の脅威を及ぼすものだろうか。レーダー照射の危険性について、いわゆる軍事評論家の間でも多様な見解が存在することは、以前本ブログでも指摘してきたとおりである。

 

では、政府及び自衛隊の火器管制レーダー照射について危険性認識は、と言うと、昨日のブログ記事で紹介したとおり、6年前の2013年1月中国海軍艦艇からの火器管制レーダー照射事案が発生した際、当時、政府は火器管制レーダー照射について「危険な行為」だという見解を示していた。ところが、今般の日韓レーダー照射問題の発生後、現在では政府は、火器管制レーダー照射について「極めて危険な行為」であると解釈を変更したようだ。

 

単に「危険な行為」というのと、「極めて危険な行為」と表出するのとでは、日本語使用者にとって、危険の度合に大きな差異を認識せしめることは言うまでもない。

 

今回は、今般の日韓レーダー照射事案と6年前の日中レーダー照射事案が発生した際、政府の文書や閣僚が、火器管制レーダーの照射の危険性についてどのような表現を用いてきたかを時系列で振り返りながら、「危険な行為」から「極めて危険な行為」へと危機認識のレベルが上方軌道修正された背景事情について簡単に考察してみたい。

 

6年前の日中レーダー照射事案の政府の危険性認識

<1.小野寺防衛大臣の臨時記者会見>

6年前の日中レーダー照射事案は、2013年2月5日の小野寺防衛大臣の臨時記者発表によって明るみになった。この会見で、小野寺大臣は、火器管制レーダーの照射について、「大変異常なことであり、これが一歩間違うと大変危険な状況に陥る」「一歩間違うと、大変危険な事態が派生する状況」「特異的な例」「極めて特異的」と表現している。
また、記者から「軍事衝突の可能性」もあったのか認識を聞かれ、「そこまでの衝突事案とは類推はしておりませんが、少なくとも現場には緊張感が走る、そのような事態だったと思っております」と回答している。

 

<2.参議院本会議での総理答弁、質問主意書への答弁書

翌2月6日には、参議院本会議で代表質問が行われ、民主党の金子洋一議員からの質問に対し、安部総理は「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」と答弁している。


2月6日に初出の「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」というフレーズは、その後、2月26日付の質問主意書への答弁書でも使用されており、火器管制レーダー照射に関する日本政府(内閣)の公式見解として確定した。

衆議院議員石川知裕君提出中国艦船による我が国の海上自衛隊護衛艦への射撃用レーダー照射を巡る一連の政府の対応に関する質問に対する答弁書

 

「御指摘の「中国艦船による射撃用レーダー照射」は、不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾であると考えている。政府としては、中国側に対し、外交ルートを通じて抗議を行ったところであり、引き続き、中国側が説明責任を適切に果たし、再発防止のために誠実に対応するよう求めていく考えである。」
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b183023.htm

 

2013年2月の国会では、レーダー照射事案に関連する質疑が相次いでいる。

 

<3.衆議院予算委員会での防衛大臣、総理の答弁>

2月7日の衆議院予算委員会では、石破茂議員の質問に対し、小野寺大臣が、「衝突に相当する、危険な事案に至る可能性がある」と答弁している。(あれあれ、2日前の5日の緊急記者会見での「そこまでの衝突事案とは類推はしておりません」という発言と齟齬があるように思うが、ここではこれ以上突っ込まないこととする)

 

同日の衆議院予算委員会では、民主党原口一博議員もレーダー照射問題について細かく質問しており、安部総理は、

「今回の中国のとったレーダー照射という行為は、極めて特異であり、そしてまた極めて危険な行為であります。偶発的な、エスカレートにもつながるという危険性を持っている行為であります」

と発言している。ここで、安部総理の口から、「極めて危険な行為」という発言が初めて登場する。前日の参議院本会議では、「極めて」という冠はつけず「危険な行為」と答弁しており、1日で総理の危険認識が高まったことは注目点だ。

 

2月12日の衆議院予算委員会では、公明党の高木美智代議員が質問しているが、安部総理は、「極めて挑発的、危険な行為」と、ここでも「極めて」という副詞を冠につけている。

 

 <4.参議院予算委員会での総理答弁>

2月27日の参議院予算委員会では、民主党福山哲郎議員が質問しているが、安部総理は、

不測の事態を招きかねない極めて危険な行為であり、遺憾であります

と答弁している。
その前日の26日に閣議決定された質問主意書への答弁書では、上述のとおり、「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」と記載されており、「極めて」という副詞の挿入位置が微妙に異なっていることに気付くだろう。


福山議員の国会質問に対し事務方が事前準備した総理答弁案(カンニング・ペーパー)では、事務方は、主意書の答弁書に記載された「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」という表現を使用していたはずだ。だけど、安部総理自身の強いこだわりとして、あるいは、単純な誤読で「極めて」の位置を変化させたのだろう。一連の総理の発言を踏まえると、単純な答弁の読み誤りではなく、総理自身の強い意志表示として、「極めて危険な行為」と発言した可能性が高いと思われる。

 

<5.総理の施政方針演説>

翌28日の衆議院及び参議院の双方の予算委員会での安部総理の施政方針演説では、レーダー照射問題について

「先般の我が国護衛艦に対する火器管制レーダー照射のような、事態をエスカレートさせる危険な行為は厳に慎むよう、強く自制を求めます。」

と発言している。
安部総理嫌いの人たちであれば、ここで「おいおい、事態をエスカレートさせているのは「極めて危険」などと必要以上に国民の危機意識を煽って、好戦的な世論形成を目論んでいるオマエのほうだろうが(怒)」と突っ込みを入れるのだろうが、ともあれ、施政方針演説において「極めて危険」というフェーズを用いることは、さすがの安部総理も自制していたようだ。

 

<6.参議院外交防衛委員会での防衛大臣答弁> 

その後、国会において日中レーダー照射事案についての言及はひと段落するが、2013年10月29日の参議院外交防衛委員会における所信演説で、小野寺大臣は、我が国周辺の海空域においても、

「昨年十二月に領空侵犯事案が、本年一月には海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案が発生するなど、不測の事態を招きかねない危険な行為が行われています。」

と述べ、主意書答弁等で用いられた「不測の事態を招きかねない危険な行為」というフレーズを踏襲している。

 

<7.2016年の中谷防衛大臣の答弁>

2016年2月5日の衆議院予算委員会第1分科会での予算審議の際の自民党大西宏幸議員の質問に対し、当時の中谷元防衛大臣は、

火器管制レーダーの照射というのは、基本的に火器の使用に先立って実施する行為でありまして、これを相手に照射することは不測事態を招きかねないものでありまして、危険な行為であると認識をいたしております

と答弁している。小野寺大臣からバトンタッチされた中谷大臣も、「不測の事態を招きかねない危険な行為」という答弁ラインを踏襲していたのである。

 

<8.小括>

以上、6年前の日中事案の発生時の火器管制レーダー照射についての政府の認識をたどってみた。結論としては、政府の公式見解として「不測の事態を招きかねない危険な行為」というフレーズが確立しており、2013年2月6日の参議院本会議での小野寺大臣の答弁、2月26日付の主意書への答弁書、10月29日の参議院外交防衛委員会における小野寺防衛大臣の所信演説、2016年の中谷防衛大臣の答弁では、このフレーズが用いられていた
それに対し、安部総理は、「極めて」という強調語を被せて「極めて危険な行為」というフレーズを6年前の事案において好んで用いていたのであった。

 

次に、今般の日韓レーダー照射事案における政府の言葉遣いを時系列で見てみよう。

 

今般の日韓レーダー照射事案の政府の危険性認識

 <1.岩屋防衛大臣の会見>

12月21日19時頃に防衛省内ロビーに行われた臨時会見で、岩屋防衛大臣は、「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為だ」と述べている。
また、共同通信によると、同日夜のBSフジ番組で、岩屋大臣は、「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねず、韓国側にはきちんと説明してもらいたい」と発言したらしい。
6年前の小野寺大臣は、「極めて危険」といった言い回しをしておらず、また、最初の会見では「そこまでの衝突事案とは類推はしておりません」と抑制的なトーンであったのに対し、岩屋大臣は、6年前の安部総理と同様、「極めて危険な行為」という表現を用いるとともに、「攻撃直前の行為」と踏み込んだ発言をしているのが印象的だ。

(ただし、BSフジ番組で、実際に「攻撃直前の行為だ」と述べたのかどうか真相は不明である。共同通信が記事作成時に、実際の発話に手を加えた可能性も否定できない)

 

<2.12月22日の防衛省見解>

翌22日に、防衛省は「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について」という見解を発表する。

「火器管制レーダーの照射は、不測の事態を招きかねない危険な行為であり、仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において、非常に危険な行為です。」

これは、実に味わい深い官庁文学表現である。この一文の前半部分では、一般論として火器管制レーダーの照射は「不測の事態を招きかねない危険な行為」であると6年前からの政府公式見解を踏襲しつつ、後半部では、「周囲に位置する船舶や航空機との関係において」は「非常に危険な行為」であるとの見解を創出しているではないか

 

<3.12月25日の定例会見での防衛大臣の発言>

12月25日の閣議後定例会見ではレーダー照射問題が質問の太宗を占めているが、岩屋大臣は、ある質問に対しては、「不測の事態を招きかねない危険な行為」と「極めて」を付けずに発言し、その後の別の質問に対しては「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為」と「極めて」の語ありで回答している。

(参考)記者会見での小野寺大臣の発言

A:そこは、大局に立ってものを考えなければいけないと私は思います。本事案については、今、おっしゃったように、不測の事態を招きかねない危険な行為であったことは事実でありまして、そのことは指摘をし、再発防止を求めていくという姿勢に変わりはありませんが、とはいえ、韓国が敵対国であるかというと、それは決してそういうことはない。また、わが国の安全保障というものを考えても、日韓の防衛当局間の関係、日米韓の関係というのは、極めて重要であるということに変わりはないというふうに考えております。


A:これも先ほど申し上げたように、やはり火器管制レーダーを照射するというのは、不測の事態を招きかねない極めて危険な行為であって、防衛省側の、海自側の分析で、照射を受けたことは明らかだということが分かりましたので、速やかに遺憾の意を表し、再発防止を申し入れる必要があったというふうに判断したからでございます。

 

 <4.菅官房長官の定例会見発言>

年が開け、2019年1月7日には、菅官房長官が午前の定例会見で、レーダー照射問題について

極めて危険な行為で、このような事案が発生したことは遺憾だ

と発言している。

 

<5.防衛省の最終見解>

そしていよいよ、2019年1月21日の「韓国海駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射に関する防衛省の最終見解について」である。

「火器管制レーダーの照射は、火器の使用に先立って実施する行為であり、他国の航空機に向けて、合理的な理由もなく照射することは、不測の事態を招きかねない極めて危険な行為です」

この最終見解によって、6年前の日中レーダー照射事案発生後に確定した「不測の事態を招きかねない危険な行為」とする政府公式見解は事実上破棄され、危機認識の水準が「極めて危険」と最高レベルにまで引き上げられたのである。

 

<6.部隊視察先での防衛大臣訓示>

1月25日には、岩屋防衛大臣は、海上自衛隊厚木航空基地の部隊を視察したが、時事通信によれば、レーダー照射事案について「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為で、防衛省として韓国側に抗議するとともに、事実を認め再発防止を徹底するよう強く求めている」と訓示している。

 

2013年日中レーダー照射事案での政府見解の舞台裏

2013年2月5日夕刻の臨時記者発表において、小野寺防衛大臣は、「大変異常」「一歩間違うと大変危険な状況に陥る」「特異的」という用語を用いているものの、「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」というフレーズは使用してない。おそらく、この臨時会見時点で、まだこのフレーズは創出されていなかったのであろう。

 

では、いつ、どのようなプロセスで、このフレーズが構築されたのか。それは、2月5日の夜、民主党金子洋一議員から、代表質問追加の緊急通告があり、これを受けて、防衛省、外務省、首相官邸における最高幹部の徹夜の協議を経て創作されたフレーズであると推定できる。

まず、防衛省で答弁原案を作成し、外務省の協議を経た時点で、両省では、レーダー照射事案について、「危険な行為」という程度の表記を用いることに異論なく、「極めて」という強調語を付することは頭の片隅にもなかったに違いない

ところが、答弁案が完成し、総理秘書官等が安部総理にレクをした時点で、総理の口から、「危険な行為では弱すぎる。「極めて」を頭に持ってくるべきだ」と強い主張が発せられたのではないか。それに対し、レクに同席した防衛省、外務省の幹部は、「客観的状況認識として、たかだかレーダー照射について「極めて危険」とまで言うべき事態ではない」「「極めて危険」と総理が発言してしまうと、中国が反発し、両国間の緊張が益々強まってしまう」と抵抗したはずだ。

総理と防衛/外務両省幹部の答弁案に対する問答に対し、総理秘書官が折衷案として、「それでは、「危険な行為」の前に「極めて」は付けづに、その替わりに「極めて遺憾」という言葉を補いましょう」と提案。総理と防衛/外務両省幹部が折り合って、「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」というフレーズが出来上がったのは、代表質問の答弁の直前のことであろう。

 

2月6日の代表質問に対する答弁では、安部総理は、このフレーズを棒読みしたものの、本心では納得していない。反中国強硬派の急先鋒である安部総理としては、「極めて危険な行為」と発言して、中国を批判したくてたまらない。

翌7日の衆議院予算委員会民主党原口議員及び12日の公明党高木議員からの質問通告に対し、事務方が作成していた答弁案では、6日の答弁と同様、「危険な行為」と記載されていたに違いない。にもかかわらず、安部総理は、自らの判断で、わざわざ「極めて」を補って「極めて危険な行為」と発言してしまった。この答弁を聞いていた、防衛省、外務省の幹部は卒倒したはずだ。これで日中対立の泥沼化は不可避だ、と。

 

ここで、安部政権批判派ならば「極めて」の追加を「好戦的な安部総理一人の暴走」と批判するだろうが、筆者は、必ずしも総理一人の暴走ではなく、民主党公明党にも大きな原因があると考える。安部総理としては、民主党・原口議員と公明党・高木議員が、質問の中で、レーダー照射事案についてどのような見解を示すか、注意深く聞いていたはずだ。
「もし、両党が、レーダー照射について強行姿勢であれば、「極めて」の語を補い、両党が抑制的なトーンであれば「極めて」は省こう。」安部総理はそう考えていたに違いない。
果たして、民主党原口議員は、質疑の中で、「照射をするというのは、もうまさにこれは攻撃行為そのものととられても仕方がない」「攻撃行為だとすると、看過できない行為である、国際法上も大問題であるというふうに私は考えます」と中国を厳しく批判。これを聞いて、安部総理は、心の中で大きくガッツポーズをしたはずだ。「よしよし、「極めて危険な行為」と答弁しよう」。


5日後の12日には、公明党高木議員が質問に立った。公明党というと、連立与党でありながら、平和志向の宗教政党であり、そもそも総理は肌が合わない。その高木議員が質問の中で、「中国海軍フリゲート艦による火器管制レーダー照射という極めて重大な事案が発生をいたしました。これは戦闘行為に入る直前の事態であり、国連憲章にも抵触するおそれのある行為で、極めて遺憾と言わざるを得ません。」と発言。これを聞いて、安部総理は、またしてもガッツポーズ。「よしよし、公明党までも「極めて重大」とか言って中国批判をしているので、安心して「極めて危険な行為」と答弁しよう。」

 

ともあれ、民主党公明党の両党の対中国強硬姿勢に触発されて、安部総理は2月7日に「極めて危険な行為」と発言しちゃった訳であるが、2月26日付の主意書への答弁書では、「極めて」は再び省略され、「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」という2月6日の参議院本会議でのフレーズに戻ったのである。
もしかすれば、主意書への答弁書の決裁時点でも、総理は「危険な行為」という案から「極めて危険な行為」へと表現のアップグレードを主張したのかも知れない。だけど、事案発表から2週間以上が経過し、さすがの総理もややクールダウンして、「主意書への答弁は、予算委員会より本会議答弁を踏襲しましょう」という総理秘書官の説得に応じ、「極めて」を省くことに合意したのであろう。

 

今般のレーダー照射事案での政府見解の舞台裏

次に、今般の日韓事案における政府見解の舞台裏を考察しよう。上述のとおり、岩屋防衛大臣は、12月21日の会見で、「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為だ」と述べている。筆者は、この会見に当たって事務局が作成した「ご発言要領」(カンニング・ペーパー)に、「極めて」の語が入っていたか否か、が大変気になるところである。


少なくとも、担当者が会見発言要領の原案を作成した時点では、2013年2月27日の主意書への答弁書で用いた「不測の事態を招きかねない危険な行為であり、極めて遺憾」というフレーズを直接引用していたはずだ。それでは、最終的に大臣の手にわたった想定問答に、「極めて」の語が入っていたのか、それとも入っていなかったのか。筆者は5部5部と考える。


この手の重大案件であれば、防衛大臣の発言要領であっても、安部総理まで事前に目を通すものである。「危険な行為」と記載された発言要領に対し、韓国に激昂状態の安部総理自ら、赤鉛筆で「極めて」と補い、「極めて危険な行為」と総理修正された発言要領が岩屋大臣にわたった可能性が50%。あるいは、「極めて」という副詞は付いておらず「危険な行為」との記載であった発言要領を受け取った岩屋大臣が、興奮状態の安部総理の気持ちを忖度し、会見では、発言要領には記載のない「極めて」を補って「極めて危険な行為」とアドリブで発言した可能性が50%である。


筆者が5部5部と考える理由は、12月22日の防衛省見解では、「危険な行為」「非常に危険な行為」の2つの表現を用いているものの「極めて」の語は登場していないこと、また、12月25日の定例会見での防衛大臣の発言も「極めて」を被せたり省いたりと一貫性がなかったからである。(25日の会見用の想定問答においても、「危険な行為」の前に「極めて」が付いていたかどうか不明である)

 

おそらく22日の時点で、官邸サイドからは防衛省見解に「極めて危険な行為」と明記するよう指示があったはずであるが、防衛省は、日韓全面衝突を回避するため必死に抵抗し、苦肉の策として「非常に危険な行為」という新たなフレーズを生み出したのであろう。ただし、政府の文書で「非常に危険な行為」という表記は、22日の防衛省見解の1回切りで、年が明けると政権幹部が一様に「極めて危険な行為」の語を用いるようになる。

 

ともあれ、6年前の日中レーダー照射事案では、一時的に安部総理が「極めて危険な行為」と主張してものの、時間の経過とともに、「危険な行為」と政府見解も抑制的になっていった。それとは対照的に、今般の日韓事案では、「危険な行為」から、「非常に危険な行為」へと途中で政府見解がエスカレートし、年が明けると、官房長官までが「非常に危険な行為」といい始め、1月21日の防衛省の最終見解の文書でも「不測の事態を招きかねない極めて危険な行為」と言い切ってしまったのである。

 

かくして、日本政府において、火器管制レーダー照射は「極めて危険な行為」との見解が確定した訳であるが、時間の経過とともに政府内でクールダウンが図られた6年前の日中事案と、むしろヒートアップしていった今般の日韓事案、どうしてこのような差が生じたのかも甚だ興味深い点である。

 

 

【本ブログ内の関連記事】

・レーダー照射問題の真相を今一度考える
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/05/235000

・軍事評論家は、日韓レーダー照射問題をどう論じたか
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/06/235000

・日韓レーダー照射問題はメディア・リテラシークリティカル・シンキング好材料である
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/08/235500

・6年前の日中レーダー照射事案との対比において、今般の日韓事案を再考する(その1)
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/10/174500

 

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その3)「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の違いを深読みする
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/16/235500

 

6年前の日中レーダー照射事案との対比において、今般の日韓事案を再考する(その1)

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2013年日中レーダー照射事案に係る政府資料

 

昨年12月21日の防衛省の発表によって、日韓でレーダー照射問題が勃発してから、50日が経過した。この間、ネット上では、「安部政権批判派」と「反韓嫌韓派」の双方が持論を展開して議論を続けてきたが、その後も日韓で新たな火種も発生する中で、レーダー照射問題の直接的報道は激減している。

 

筆者は、政治イデオロギー論争は余り興味なく、ニュートラルな人間であると自認しているが、このところレーダー照射問題についてはツボにはまって、日韓のどちらが嘘をついているのか、といった論点をはじめ事件の真相について多大な関心を持ってウォッチしてきた。

 

さて、レーダー照射問題と言えば、今から6年前、2013年の1~2月にも、中国海軍と海上自衛隊の間で、火器管制レーダーの照射事案が発生し、世論が沸騰したことを覚えている人も多いだろう。改めて、6年前の日中レーダ照射事案について、当時の政府見解やマスコミ、評論家等による議論を振りかえり、今般の日韓レーダー照射問題と対比することにより、新たな発見があるのではないか。

 

このような認識の下に、今回は、6年前の日中レーダ照射問題について、当時の政府の公式文書や閣僚の言葉遣いを振り返り、日韓レーダー照射問題との対比において気になった点について論じてみたい。

 

最初に結論を述べておくと、
◇6年前の日中事案では、政府はレーダー照射は「危険な行為」と評価していたのに対し、今般の韓国事案では、「極めて危険な行為」と危機認識のレベルが引き上げられたようだ
◇「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の言葉遣いの違いなどから、自衛隊がSTIR-180照射事実を「確証」した時点についての分析が可能である
この2点について、以下に解説する。

 

 中国海軍艦艇による火器管制レーダーの照射事案

 20160115という日付(?)の入った「中国海軍艦艇による火器管制レーダーの照射事案」なるパワポ1枚のポンチ絵が官邸のホームページに掲載されている。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20160115/incident.pdf

この資料の文字記載部分を全文引用しよう。

【事実関係】
○ 平成25年1月30日(水)午前10時頃、東シナ海の公海上で警戒監視中の海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」が、中国海軍艦艇「ジャンウェイⅡ級フリゲート」から、火器管制レーダーの照射を受けた。
○ なお、1月19日(土)午後5時頃、同じく東シナ海の公海上において、警戒監視中の海上自衛隊護衛艦「おおなみ」搭載ヘリに対する、中国海軍艦艇「ジャンカイⅠ級フリゲート」からの火器管制レーダーの照射が疑われる事案が発生している。
【評価】
火器管制レーダーの照射は、基本的に、火器の使用に先立って実施する行為であり、これを相手に照射することは不測の事態を招きかねないものであり、危険な行為であると認識。
【我が国の対応】
こうした行為が短期間のうちに立て続けに行われた可能性が高いことを踏まえ、2月5日に外交ルートを通じて中国側に申入れを行うとともに、防衛省から本件について公表を実施。

 

【中国の反応】
○ 「中国側の艦載レーダーは正常な警戒と監視活動を続けていたが、火器管制レーダーは使用していない」(中国国防省HP掲載:2月8日)
【米国の反応】
○ 米国は、本事案について「このような行動は緊張を高め、事故又は誤算の危険性を増し、更には地域の平和、安定及び経済成長を台無しにしかねない」(2月5日、国務省定例会見)、「我々は同盟国・日本から説明を受け、同事案が実際に発生したと納得するに至った」(2月11日、国務省定例会見)との見解を表明。

 

この日中レーダー照射事案を巡っては、参議院議員大野元裕氏が、同年2月7日に、国会法第74条に基づき、参議院議長名義で安部総理に質問主意書を提出し、2月19日付けで閣議決定を経てが答弁書が回答されている。

 

ちなみに、質問主意書とは、国会議員が、様々な国政課題について内閣の公式見解を文書で回答を求めるもので、その答弁書は、内閣法制局長官が文言を細かくチェックし、所管大臣本人が決裁を行い閣議決定を経る非常に重みのある重要文書である。ともあれ、質問主意書への答弁書は、一般の政府発表資料とは比較にならない重みのある国家最重要文書であると思えばいい。

 

大野議員は、事案の発生時期、政府への報告時間、公表時期等にいて、次のように質問している。

日本の安全を脅かす中国海軍による火器管制レーダー照射に関する質問主意書

 

 二月五日の防衛省発表によると、一月三十日、我が国の海上自衛隊護衛艦が中国海軍のフリゲート艦から射撃の照準を合わせる火器管制レーダーを照射され、一月十九日には海上自衛隊護衛艦搭載のヘリコプターに対しても同じような火器管制レーダーが照射された疑いがあるとのことだ。日本の安全を脅かす誠に非常識な行為である。
 そこで、以下質問する。

(中略)

三 今般の中国船による火器管制レーダー照射事件に関連し、事案の発生した具体的時間、それが政府に報告された時間を明らかにされたい。一月十九日及び三十日の事案それぞれにつき、防衛省、外務省、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)及び総理官邸に知らされた時間を各々明らかにされたい。また、それ以前に同様の事件があった場合には、それについても明らかにされたい。さらに、一月三十日の事案については、当初よりレーダー照射の疑いがあったのに二月五日まで公表しなかった理由について示されたい。

 
この質問に対し、内閣はこう答弁している。

 本年一月十九日に海上自衛隊の艦艇搭載ヘリコプターが中国海軍のジャンカイⅠ級フリゲート一隻から火器管制レーダーの照射を受けた疑いのある事案(以下「一月十九日の事案」という。)の発生した時刻は、午後五時頃であり、同月三十日に海上自衛隊護衛艦が中国海軍のジャンウェイⅡ級フリゲート一隻から火器管制レーダーを照射された事案(以下「一月三十日の事案」という。)の発生した時刻は、午前十時頃である。

 

 一月十九日の事案については、防衛省運用企画局から防衛大臣、外務省アジア大洋州局、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付及び内閣総理大臣に第一報を伝えており、その日時は、それぞれ、同月十九日午後八時頃、同月二十日午前十一時頃、同月十九日午後八時頃及び同日午後八時頃であり、一月三十日の事案については、防衛省運用企画局から防衛大臣、外務省アジア大洋州局、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付及び内閣総理大臣に第一報を伝えており、その日時は、それぞれ、同年二月五日午前十一時三十分頃、同日午後零時頃、同日午後零時頃及び同日午後零時頃である。

 

 また、同年一月十九日より前には、内閣総理大臣等まで報告の上で公表の必要があると判断された今回のような事案は発生していない。

 

 一月三十日の事案について同年二月五日まで公表しなかったのは、海上自衛隊護衛艦が中国海軍艦艇から火器管制レーダーの照射を受けたと確認するまで慎重かつ詳細な分析を行っていたためである。

 

  「中国海軍艦艇による火器管制レーダーの照射事案」という資料と、質問主意書に対する答弁において、筆者が特に、注目するファクトは次の記載である。


(1)【事実関係】として次のように記載していること。
平成25年1月30日…自衛隊護衛艦「ゆうだち」が、…火器管制レーダーの照射を受けた
なお、1月19日…海上自衛隊護衛艦「おおなみ」搭載ヘリに対する、…火器管制レーダーの照射が疑われる事案が発生している。


(2)火器管制レーダーについて、次のように【評価】していること。
火器管制レーダーの照射は、基本的に、火器の使用に先立って実施する行為で
あり、これを相手に照射することは不測の事態を招きかねないものであり、危険な
行為であると認識。

 

(3)【わが国の対応】として、2月5日に中国側への申し入れと公表を行ったのは、
「こうした行為が短期間のうちに立て続けに行われた可能性が高いことを踏まえ」たものであるとしていること。


(4)1月30日に発生してから2月5日の公表まで6日間を要したことについて、「海上自衛隊護衛艦が中国海軍艦艇から火器管制レーダーの照射を受けたと確認するまで慎重かつ詳細な分析を行っていたためである。」と答弁していること。

 

(5)照射が疑われる1月19日事案については、事案発生から約3時間後に防衛大臣と総理に第一報が報告されているのに対し、1月30日事案については、防衛大臣と総理への第一報報告は事案発生から丸々6日以上経過していたこと。

 

改めて、筆者が何を問題視しているのか整理して述べよう。


2013年1月30日事案では護衛艦が「火器管制レーダーの照射を受けた」と断定しているのに対し、同年1月19日の海自ヘリに対しては「火器管制レーダーの照射が疑われる」と、わざわざ「疑われる」の語を補い断定を避けていたのである。


そして、1月30日事案について、「火器管制レーダーの照射を受けたと確認するまで慎重かつ詳細な分析」を行うのに6日間を要していたのである。


その上で、2月5日に中国側への申し入れと公表を行った理由として、「短期間のうちに立て続けに行われた可能性が高い」ことを挙げており、反対解釈をすれば、単回のレーダー照射であれば、申し入れや公表を行うような事案ではないと当時政府が認識していたことが伺える。


また、火器管制レーダーの照射について、「不測の事態を招きかねないものであり、危険な行為である」との認識を示していたことが裏付けられている。

 

そして、このような「危険な行為」であるレーダー照射について、1月19日の疑い事案については発生直後に疑いの段階で防衛大臣及び総理に報告していたのに対し、2月5日の照射を断定した事案については、何故か「慎重かつ詳細な分析」の結果が確定するまで大臣と総理に報告していなかったようだ。

 

2013年日中レーダー照射事案と今般の日韓事案での対応の対比から言えること

 では、今般の日韓レーダー照射問題の対応はどうだったか。


2018年12月20日の日韓のレーダー照射事案では、翌21日に「火器管制レーダーを照射された」と断定的に公表しており、しかも、同様の事案が短時間のうちに立て続けに行われたからではなく、単回の事案のみによって公表に踏み切っている。


そして、21日の19時頃のぶら下がり取材において、岩屋防衛大臣は、火器管制レーダーの照射について、「不測の事態を招きかねないものであり、極めて危険な行為である」旨のコメントをしていたらしい。


6年前の日中事案と今般の日韓事案の対比すると、以下のような素朴な疑問が生じてくる。

・「照射を受けた/照射された」と断定する場合と、「照射が疑われる」と判断する場合とではその判断の根拠となる証拠の水準等において何が異なるのか?明確な判断基準はあるのか?

 

・2013年1月30日の事案では、「慎重かつ詳細な分析」に6日間を要していたのに、2018年12月20日の事案では翌日には照射の事実を断定し公表に踏み切っているが、この6年間の間に、自衛隊におけるレーダー解析技術が根本的・画期的に向上したのか?それとも、もしかして、12月21日の時点では、STIR-180のレーダー照射の事実は確定的に解析されていなかったにもかかわらず、見切りで断定的に公表してしまったのか?

 

・仮想敵国である中国からのレーダー照射について短期間に複数回の事案発生を受けて申し入れと公表を行っているのに対し、友好国である韓国との事案については、単回のみの事案によって公表等が行われたが、この対応の差異は何に由来するのか。この6年間の間に、日本海海域において、レーダー照射に対する脅威度が著しく高まったのか?

 

・中国からの複数回のレーダー照射が「危険な行為」であったのに対し、韓国からの単回だけのレーダー照射について「極めて危険な行為」と、「極めて」という強調表現が追記されているのは、前者よりも後者の事案のほうが危機・脅威度がよほど高かったからなのか?

 

このような筆者の抱く素朴な疑問に対し、「些細な表現ぶりの問題であって、言葉のアヤに対して重箱の隅をつつくような突っ込みは不要ではないか」と思われるかも知れない。だが、国の作成する行政文書は、一字一句、言葉の意味合いを精査し、緻密に用語を選んで記載され、幾人もの内部決裁、文言チェックを経て公表されるものである。従って、微妙な文言の差異に注目することにより、行政側の意図や真意を推量することがしばしば可能となるのだ。


次回続編では、
・「危険な行為」と「極めて危険な行為」の表記の差異、
・「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の表記の差異
について考察を進める。

  

 

 

【本ブログ内の関連記事】

・レーダー照射問題の真相を今一度考える
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/05/235000

・軍事評論家は、日韓レーダー照射問題をどう論じたか
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/06/235000

・日韓レーダー照射問題はメディア・リテラシークリティカル・シンキング好材料である
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/08/235500

 

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その2)「危険な行為」と「極めて危険な行為」の差異
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/12/233000

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その3)「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の違いを深読みする
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/16/235500

 

日韓レーダー照射問題はメディア・リテラシー、クリティカル・シンキングの好材料である

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自衛隊が公表した「飛行経路」


 


本ブログにおいて、一昨日、昨日と日韓レーダー照射問題について取り上げてきた。一昨日は、韓国駆逐艦から自衛隊哨戒機に対しSTIR-180からレーダー波が照射されたのは真か偽か、について筆者の見解を述べた。昨日は本件について、日本の軍事評論家10名が、どのような見解を示してきたのか振り返ってみた。

 

このレーダー照射問題については、日韓両国間で、主張が食い違う点が多く、両国のメディアや評論家、ブロガーなどによって、様々な議論が行われてきた。

いま一度、主な論点を挙げてみよう。

 

(1)そもそも、韓国駆逐艦から自衛隊哨戒機に対しSTIR-180からレーダー波が照射されたのか、否か。


(2)STIR-180レーダーが照射されていたのが事実として、その事実を自衛隊が確証したのはいつの時点だったのか。また、韓国軍において、誰がどのような目的でレーダー照射を指示したのか。
 もしSTIR-180レーダーが実際には照射されていなかったのであれば、自衛隊において、判断ミスが生じた原因は何か。また、誰の判断・責任で照射されたと虚偽の報告を行ったのか。


(3)問題発生場所はどこか?能登半島付近なのか、韓国名の独島(日本名の竹島)付近なのか、どちらからも離れた海域なのか。


(4)問題発生時点の気象条件(波の状況)は、穏やかだったのか、荒れていたのか。


(5)韓国が対応していた遭難船は、北朝鮮の漁船だったのか、それとも工作船だったのか。韓国は遭難船を救助していたのか、それとも、燃料を供給していたのか。


(6)自衛隊は、どのようにして北朝鮮遭難船と韓国海警備艇駆逐艦の存在を探知したのか。自衛隊が、韓国軍の無線を傍受していたのか、それとも、通常の哨戒活動中に偶然発見したのか。


(7)自衛隊哨戒機は、韓国駆逐艦に何メートルの距離まで接近していたのか。また、これは客観的にみて、駆逐艦の乗員に脅威を与える距離であったのか。


(8)自衛隊哨戒機内で「FC系レーダー波を探知」することは、客観的にみて、乗員にどの程度の脅威を与えるものなのか。ミサイル攻撃を受ける直前であると差し迫った生命の危機を感じるレベルなのか、それとも、大した脅威は感じていなかったのか。


(9)自衛隊哨戒機からの航空緊急無線呼び出しを韓国駆逐艦が受信しなかったのは、無線障害あったのか、それとも受信状況は良好で、韓国側が故意に無線呼び出しを無視したのか。


(10)レーダー照射問題を政権浮揚のために利用したのは、安部政権か、文政権なのか、それとも双方なのか。

 

軍事組織や国家権力中枢の機密主義・隠蔽体質により、これらのファクトが完全に解明されることは期待できないが、日韓双方から公式・非公式に提示された資料や発言、メディアや評論家等による議論を、先入観を持たず、健全な懐疑心で批判的に読解することにより、どちらの主張が、より論理的で、より説得力があるかを考察することが可能である。

 

この作業は、原告、被告の双方から示される極論や巧妙なレトリック、詭弁交じりの対立的な主張を、自由心証主義により事実認定していく裁判官の判断プロセスにも似たものとも言えるだろう。

 

フェイクニュースやマインドコントロール手法を駆使した商業広告や宗教勧誘、政治的プロパガンダに溢れたネット社会において、個々人は我が身を守るために、情報の真偽を見抜く力を養うこと、すなわち、メディア(情報)リテラシーを高めることが必須である。

 

筆者は、今回の日韓レーダー照射問題は、メディア(情報)リテラシークリティカル・シンキングの素養を高める好材料であると思っている。中立的な意見によりも、両極端の意見・記事を読み比べることによって、より批判的な思考力が研ぎ澄まされることであろう。

 

両極端の意見・記事とは、ここでは、片や「レーダー照射は行われていなかった、嘘つきは日本のほうだ」との主張であり、他方で「反韓嫌韓のスタンスが鮮明」な主張、の両者を指すことは自明であろう。以下において、メディア(情報)リテラシークリティカル・シンキングの実践力を磨くための生の教材として、それぞれの立場の典型例である6名(のブログ等)をプロ(職業執筆家)、アマ(個人ブロガー)を区別することなく取り上げて紹介する。

 

各自、裁判官になった気分で、両極端な意見・記事群を読み比べ、様々な論点について、どちらの主張がより合理的で説得力があるのか、どちらが、フェイク、ガセネタであるのか、ジャッジしてみたら面白いと思う。

 

レーダー照射は行われていなかった、嘘つきは日本のほうだと主張する記事群

「レーダー照射は行われていなかったのではないか、仮に照射がされていたとしても、大した問題ではない。」との立場の主張を繰り返し記事にしてきたブログ等は、筆者の調べた限り次の6つ存在する。


【1】誰かの妄想・はてなブログ http://scopedog.hatenablog.com/

ざっと過去の記事を眺めたところ、ネトウヨ歴史修正主義批判、辺野古基地問題など安部政権批判の内容が多いブログだ。

レーダー照射問題については、2018年12月30日に「広開土大王艦事件について日本側の公開映像に関する件」http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/12/30/070000

という題の記事を掲載して以降、30件以上の関連記事を掲載。

 

【2】スパイク通信員の軍事評論 http://spikemilrev.com/index.shtml

昨日のブログ記事でも紹介したが、軍事評論家の田中昭成氏が、2006年から軍事関連情報を連載しているブログ。

レーダー照射問題については、2018年12月29日に「レーダー照射事件は日韓共に情報開示不足」http://spikemilrev.com/news/2018/12/29-1.htmlという題の記事を掲載して以降、1月25日までに、9件の関連記事を掲載。

 

【3】コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」

https://hbol.jp/hbo_series_group_name/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%A9%E3%83%89%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E3%81%AE%E7%A7%81%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%AE%E5%88%86%E9%87%8E%E3%81%AF%E5%B0%82%E9%96%80%E5%A4%96%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8C

コロラド博士を自称する牧田寛氏が、ハーバー・ビジネス・オンラインという扶桑社が運営するオンライン情報サイトに記事を連載。
(扶桑社と言えば、右派・反韓嫌韓の著作を多数刊行し、先日、女子大生何ちゃらランキングで物議を醸した雑誌「SPA!」を発行するフジ産経グループの出版社であるが、ハーバー・ビジネス・オンラインには何故か左派の記事も少なからず掲載されている。)

レーダー照射問題については、2019年1月8日に「日韓「レーダー照射問題」、何が起きていたのか、改めて検証する」https://hbol.jp/182872/4という題の記事を掲載して以降、2月8日までに、8件の関連記事を掲載。

なお、反韓嫌韓の人たちは、牧田氏の主張に怒り心頭のようで、牧田寛氏によるレーダー照射事件の記事への反論 - pollux6’s blogというブログが立ち上がっているようだ。

 

【4】ブースカちゃん(@booskanoriri)の「へろへろblog」https://booskanoriri.com/

ITやらカメラ、動物、飛行機などなど多彩な趣味?を綴っており、政治や軍事面であまり「色」はないブログのようだ。

レーダー照射問題については、2018年12月29日に「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(1)」https://booskanoriri.com/archives/3464という題の記事をアップして以降、1月20日までに6件の関連記事を掲載。

 

【5】Goodbye! よらしむべし、知らしむべからず http://c3plamo.ddns.net/blog/

このブログ主は、反自民党、反信濃町創価学会)、アンチ大マスコミ・テレビ各局を標榜している。

 レーダー照射問題については、2019年1月1日に「早とちりだったか? ~火器管制レーダーとの錯誤か」http://c3plamo.ddns.net/blog/archives/2019/01/c_1.htmlと題する記事を掲載して以降、1月30日までに13件の関連記事を掲載。
このブログ主は「安部政権の言うこと何ぞ信用できる訳がない」という立場で、安部政権を茶化した表現も目立つ。

 

【6】日中朝不戦ブログ http://blog.livedoor.jp/kobatetu01-memo/

林哲夫(コバテツ)氏が運営する「日中不戦」、北朝鮮問題を考えるブログ。

レーダー照射問題については、2018年12月27日に「韓国によるレーダー照射(問題なし?)」と題する記事をアップして以降、2月7日までに26本の記事を掲載。

 

反韓嫌韓のスタンスが鮮明な記事群

韓国と北朝鮮は内通している、レーダー照射を仕組んできた韓国に対し経済制裁や国交断絶も視野に入れ毅然とした対抗措置を講じるべき、といった主張がネット上で溢れている。

このようなスタンスの論者の中で、レーダー照射問題について多数の記事をアップしているブログ等を6つ紹介する。

 

【1】キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】) https://ameblo.jp/calorstars/

自衛隊の処遇改善を求める請願活動などを実施する「自衛官守る会」という市民団体の代表を努める国防ジャーナリスト、小笠原理恵氏が運用しているブログ。

2018年12月22日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を15本ほど掲載している。


【2】鈴木衛士氏のブログ記事 http://agora-web.jp/archives/author/eijisuzuki

「元航空自衛隊情報幹部」の肩書きの鈴木氏が、「アゴラ」にブログ記事を連載している。
2018年12月24日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を4本ほど掲載している。


【3】木走正水氏のブログ記事 https://blogos.com/blogger/kibashiri/article/

ブロガーの木走氏が、BLOGOSに政治経済、社会問題についての記事を連載。
2018年12月27日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を4本ほど掲載している。

なお、厳密に言えば、木走氏はレーダー照射問題について制裁措置を主張しているわけではない。韓国だけが「子供のけんか」を止められないかわいそうな国であるとして、日本の「大人の対応」を支持している。

 

【4】Obiekt よく分かる軍事ニュース解説 https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/

匿名の軍事ブロガー「JSF」氏による軍事ニュースの解説サイトで、2013年1月から計250件ほどの解説記事が掲載されている。

レーダー照射問題については、2018年12月21日に「韓国海軍の駆逐艦海上自衛隊の哨戒機に向けて火器管制レーダーを照射」https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181221-00108571/と題する記事をアップして以降、1月29日までに7件の関連記事を掲載。

このブログの関連記事は、軍事技術面からの解説が中心であり、韓国批判の色合いは強くない。


【5】東アジア黙示録 https://dogma.at.webry.info/

反日ファシズムを迎撃するコラム」と謳われているブログ。

レーダー照射問題に関連して、
日本海に“文在寅ライン”出現…南鮮海軍の愚かな野望(2018年12月22日)
・照射事件の封印された始末書…南北が跋扈する“冷戦の海”(2019年1月6日)
・南北ウラ合意の極秘支援作戦…文在寅に叩き付けた絶縁状(1月22日)
・南鮮軍と組んだ反日メディア…上海沖の“未確認飛行物体”(1月28日)
の4本の原稿が掲載されている。


【6】BBの覚醒記録 https://blog.goo.ne.jp/bb-danwa

売国奴」「皇室問題」「日韓問題」などに関する多数の記事を書き込んでいるブログ。

レーダー照射問題に関連する記事は30本程度掲載されている。韓国に対して弱腰の岩屋防衛相を更迭すべき、と主張している。

 

 

 


【本ブログ内の関連記事】

・レーダー照射問題の真相を今一度考える
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/05/235000

・軍事評論家は、日韓レーダー照射問題をどう論じたか
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/06/235000

 

・6年前の日中レーダー照射事案との対比において、今般の日韓事案を再考する(その1)
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/10/174500

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その2)「危険な行為」と「極めて危険な行為」の差異
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/12/233000

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その3)「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の違いを深読みする
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/16/235500

軍事評論家は、日韓レーダー照射問題をどう論じたか

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1月4日に韓国国防省が公開した映像


  

日韓レーダー照射問題について、筆者は、昨日の記事で次のように記載した。

韓国駆逐艦からSTIR-180レーダー照射されていたとしても、「直ちに対空ミサイル攻撃が予想されるような緊迫した状態であった訳ではなく、外交問題化させることなく、両国の実務レベルで協議して一件落着すれば済む事案であった」というのが、多くの軍事評論家が示す見解だ。


「…というのが、多くの軍事評論家が示す見解だ」とする筆者の主張については、異論・反論が予想される。否、「多くの軍事評論家は、『韓国軍は今や日本を敵視しており、レーダー照射を受けた哨戒機の乗員は直ちに対空ミサイル攻撃が予想される極度に緊迫した状況に晒されていたはずだ。日本は韓国に対し断固とした措置をとるべきだ』と主張しているではないか」、といった異論・反論が。

 

確かに、韓国を目の敵にして、韓国に対して強硬姿勢で臨むべきだと主張する軍事評論家が存在することは否定しない。しかし、このような主張を行う軍事評論家は決して多数派ではないと考える。むしろ、今回のレーダー照射問題について、冷静に対処すべきと主張する軍事評論家のほうが多いと筆者は理解している。

 

「多い」というのは曖昧で主観的な表現ではあるが、今回は、筆者がこのように考える根拠を示すこととする。

 

筆者は、思想信条や専門分野を問わず、一般人よりも深い軍事知識を有し、その知識を執筆や講演活動等で披露することにより一定の収入を得ている人たちを「軍事評論家」と定義づけている。

 

いわゆる軍事評論家の中には、「軍事アナリスト」「軍事ジャーナリスト」「軍事ライター」などと自称していたり、敢えて、軍事評論家を標榜していない人たちもいるが、本稿ではこのような人たちも包含して「軍事評論家」という用語を使用している。

 

軍事評論家の多様性

一口に、「軍事評論家」といっても色んな人たちが存在する。専ら軍事問題についての著書を慣行したり、雑誌に寄稿したり、有料メルマガを発行したり、テレビに出演したり、講演活動を行って生業を立てている専業者も存在する。一方で、本職は別に存在し趣味の一環として軍事情報に精通した軍事オタク、軍事マニアが軍事評論家を自称してブログを綴っていることもある。

 

また、専門分野として、航空機や艦船、兵器や装備などの技術面の解説を得意とする評論家がいる一方で、軍事作戦・戦略・戦術を語る人、軍制や軍隊の組織マネジメントを主な切り口としている人、国際政治や外交、安全保障論の枠組みから軍隊を論じる人など、様々だ。

 

また、軍事評論を読む際には、論者の思想信条や「政治との距離感」に留意が必要である。軍事評論家の中には、「共産主義打倒。ソ連にミサイルをぶっ放してやれ」的な好戦的な言葉遣いの人がいる一方で、反戦平和を信条としてあらゆる軍事組織を悪とみなすような人もいるようだ。

 

政府や防衛省の審議会等に委員として名を連ねている軍事評論家や、自衛隊の応援団を自認する物書きであれば、防衛省の立場を代弁するスポークスマンとして振る舞いがちである。

 

軍事評論家のバックグランドとして、自衛隊出身者が少なからず存在し、彼らは、自衛隊の公式見解に同調し、自衛隊を「援護射撃」することが多い。もちろん、自衛隊出身者であっても、自衛隊に批判的な評論家もいる。逆に、自衛隊が警戒するぐらい攻撃的な極右言動を繰り返す評論家も存在する。

 

このように軍事評論家といっても、専門分野や思想信条等は多様性に富んでいるが、ともあれ、軍事評論家が論じる内容は、政治的傾向・イデオロギーが絡むことから、他の分野の評論家と比べて、非難・中傷に晒されやすいという特徴がある。自らの思想信条と合致しない評論家に対して、あいつは「反日だ」「国賊だ」「デマゴーグだ」「政府の番犬だ」「御用評論家だ」「戦争屋だ」といったレッテルが貼られるし、さらには、「評論家と呼ぶには値しない馬鹿だ」「頭の悪い軍オタだ」とか、「〇〇国のスパイだ」といった人格批判にも日常的に晒されている。

 

筆者自身は、自らの思想信条と一致するしないに係らず、論理的で首尾一貫した主張を行う評論家の主張には耳を傾け、論理性・首尾一貫性を欠いた単なる扇情的な発言を繰り返す者は「評論家に値しない」と思っている。

 

10人の軍事評論家の見解

 前置きが長くなってしまったが、本題に入ろう。2018年12月21日に「レーダー照射問題」が勃発して以降、筆者は、軍事評論家が、この問題をどのように論じるのか、興味深くウォッチしてきた。

 

筆者が定義する軍事評論家(思想信条や専門分野を問わず、一般人よりも深い軍事知識を有し、その知識を執筆や講演活動等で披露することにより一定の収入を得ている人たち)の中で、これまでに、無料で読めるウェブサイト等においてレーダー照射問題についての見解を執筆してきた者は10名いる。

 

アイウエオ順に示すと、次の10名である。

井上孝司、小笠原理恵、小川和久、黒井文太郎、関賢太郎、田岡俊次、高橋浩祐、田中昭成、西村金一、文谷数重


この10名を同列に並べることに異論があることは百も承知だ。思想信条など対極的な人たちもリストアップされており、「こいつは軍事評論家なんかではないぞ!」と異議申し立ての対象となる者もいるだろう。この10名のうちどなたか本稿を目にすることがあったら、「え、奴と自分が同列? まさか!」と憤慨するか、苦笑する可能性が高いと思う。

 

ちなみに、この10名以外にも、著名な軍事評論家は存在すると思うが、「現時点でレーダー照射問題に関する見解を執筆していない」「有料メルマガ等で見解を示しているが、一般人が容易に目にすることができない」「テレビ等の媒体で発言しているものの、見解を文章化していない」評論家は除外している。もし、この10名以外の軍事評論家によるレーダー照射問題についての論考があれば教えていただきたい。


(1)井上孝司

鉄道・航空・軍事(順不同)を主領域とする物書き。ウェブ上では、以下の2つの記事を読むことができる。

 

海上自衛隊のレーダー照射事件とレーダー電波の受信・解析
マイナビニュースに連載中の「軍事とIT 第277回)

https://news.mynavi.jp/article/military_it-277/

Opinion : 射撃管制レーダー照射事案に関する徒然 (2019/1/14)

http://www.kojii.net/opinion/col190114.html


韓国駆逐艦から射撃管制レーダーが照射されたか否かの事実関係については、両国政府、ネット世論で水掛け論が続いているとして深入りせず、レーダー電波について技術的側面について解説している。

一方で、日本では「野党」が大人しく、平素は「韓国寄り」と叩かれる場面があった新聞・TV までが韓国を擁護しなくなっていると現状分析し、「世間の空気を読んだ結果」なのであれば、危惧を覚えると所感を述べている。


(2)小笠原理恵

自衛官守る会」という市民団体の代表で、必ずしも評論家には該当しないかもしれないが、商業誌(「正論」や「月刊WILL」など)に寄稿しているようなので、本稿では軍事評論家に含め紹介する。

 「キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)」というブログを運営し、2018年12月22日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を15本ほど掲載している。

https://ameblo.jp/calorstars/entry-12430777069.html


(3)小川和久

マスコミでの露出も比較的多い、著名な軍事評論家。低レベルの「軍事評論家」と一緒にされたくないという理由で「軍事評論家」という肩書を嫌い、「軍事アナリスト」を名乗っている。

小川氏は有料メルマガを発行しており、その中でレーダー照射問題に関する記事を書いているようであるが、そのうち次の3つの記事が、MAG2 NEWSという情報サイトで無料で読むことができる。


レーダー照射で軍事アナリストが期待する韓国のファクトチェック(2019.02.05)

https://www.mag2.com/p/news/384912

レーダー照射事件の教訓「フェアに振る舞うはず」と思い込まぬ事(2019.01.28)

https://www.mag2.com/p/news/384125

軍事アナリストが断言。レーダー照射事件は「韓国の全面降伏」(2019.01.14)

https://www.mag2.com/p/news/382468


韓国駆逐艦から射撃管制レーダーが照射されたか否かの事実関係については、事実であるとの立場に立ち、当初からレーダー照射を頑に否定し続ける韓国を批判している。が、2月5日の記事の文末の次の一節の記載が意味深である。

軍事問題のチェックは容易ではありません。なにしろ日本でも、外務・防衛官僚や自衛隊のエリートでも知らなかったり、間違いを信じ込んでいたりする場合があるくらいです。そこを情報源とするメディアは、情報源が間違っているだけで、「親亀がこけたら小亀もこける」の状態に陥り、誤報の連鎖が「事実」として歴史の一角に居座ることになるのです。

 小川氏は、政権や自衛隊との距離が近いので、基本的には自衛隊の見解を前提とした論考を発表しているものの、もしかすれば、内心では、日本側が虚偽の主張をしている可能性もあると疑っているのではないか、と思えてくる。


(4)黒井文太郎

『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経た軍事ジャーナリスト。

 2018年2月25日放送のTOKYO FMの番組「クロノス」に出演し、レーダー照射問題について、日韓両政府間で意見が食い違っていることについて、「(理由が)不明だ」「どちらかが嘘をついているのか、ミスをしたのか。あるいは、何か機械的なトラブルがあったのか……両国でデータを出してもらわないと外からはわからない」と指摘。

「(今回のレーダー照射問題は)もともとよほど悪質でなければ大きな問題にはならなかったと思う」「こうしたことは2度とあってはいけないので、何が原因かをきちんと検証しなくてはならない」「当時のデータで簡単にわかること。両国ともきちんとやれば大きな問題にはならなかったと思うが、ここ数日のギクシャクしたやり取りを見ていると心配です」と述べていた。

https://tfm-plus.gsj.mobi/news/RQlTjThwC1.html?showContents=detail

 

一方、1月7日には、次のようにツイートしている。

「日韓レーダー問題では、どちら側に非があるかはもう韓国側に決定してるので、自分が知りたいのは、韓国側内部に何が起きてるのか?ということですね。
安全保障というより韓国政治の分野なので、そちらの専門家の分析を知りたい。(なんか根拠情報のない憶測が今のところ多い気が)」

 
(5)関賢太郎

情報サイト「乗りものニュース」に、記事を連載中の航空軍事評論家。
レーダー照射問題については、12月22日以降に5本の記事を載せている。
関氏は、自衛隊との関係が良好のようで、12月上旬には、P-1哨戒機を擁する厚木基地第3航空隊に対する取材なども行っている。

https://trafficnews.jp/post/writer/関%20賢太郎(航空軍事評論家)


韓国駆逐艦から射撃管制レーダーが照射されたか否かの事実関係については、事実であるとの立場に立ちつつも、韓国側の意図しない偶発的事故であるとの見解を示す。
その上で、韓国が海自P-1哨戒機は「脅威」であったとして謝罪要求を続けるならば、韓国は対外的な信用を失うことになるだろうと主張する。


(6)田岡俊次

元・朝日新聞記者という経歴もあって、ネトウヨからは「反日」「左翼」呼ばわりされている軍事ジャーナリスト。

 韓国のレーダー照射は「危険行為」に該当せず…根深い韓国軍の反日姿勢、日本を仮想敵国化(2019.01.08)

https://biz-journal.jp/2019/01/post_26184.html

 韓国駆逐艦から射撃管制レーダーが照射されたか否かの事実関係については、事実であるとの立場に立ちつつも、「危険行為」に該当しないとの立場を表明。さらに、韓国の国内事情について忖度し、日本は大人の対応をすべきと説く。


(7)高橋浩祐

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。

 海外メディアは冷ややかな日韓レーダー照射問題(2019.02.02)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019020100003.html?page=1

 レーダー照射問題について、海外メディアは「ああ、また日韓がいつものように揉めている」と冷ややかで、ほとんど関心を示していないとした上で、日本が「政治マター」化していると批判。中朝を利するだけであり、原宿やソウルの明洞(ミヨンドン)の若者たちを見習って頭を冷やせ、と主張する。


(8)田中昭成

「平和を守るための戦争概論」などの著者。「スパイク通信員の軍事評論」http://spikemilrev.com/index.shtmlというウェブサイトに、軍事関連情報を連載している。

 レーダー照射問題については、2018年12月29日に「レーダー照射事件は日韓共に情報開示不足」http://spikemilrev.com/news/2018/12/29-1.htmlと題する記事を掲載して以降、1月25日までに、9件の関連記事を掲載。

 射撃管制レーダーが照射されたか否かの事実関係については、否の可能性を示唆する主張を展開している。


(9)西村金一

昨日の本ブログ記事でも取り上げたが、自衛隊出身で、防衛省情報分析官、幹部学校戦略教官などを歴任。

 今回のレーダー照射問題については、韓国の警備救難艦が救助していた遭難船は漁船ではなく北朝鮮の特殊工作船であり、その工作船に韓国が燃料を提供していた事実を隠蔽したいがためにレーダー照射が行われたとの主張をメディア等で展開している。

 

そんな西村氏が、「レーダー波照射音の公開は、韓国に弁明の機会を与えただけだ」https://blogos.com/article/352685/という記事において、防衛省が公開した音声データはSTIR-180レーダー照射がなされた決定的証拠にはならない、と、むしろ韓国政府が喜ぶような主張をしている。西村氏によれば、パルス信号の詳細なデータを開示しなければ、レーダー照射がなされた絶対的証拠にならないらしい。


(10)文谷数重

航空自衛隊出身の軍事専門誌ライター。

 韓国レーダ照射への抗議は誤り(2018.12.26)

https://japan-indepth.jp/?p=43360

 韓国駆逐艦から射撃管制レーダーが照射されたか否かの事実関係については、事実であるとの立場に立ちつつも、日本政府は抗議するべきではなかった、騒ぐほどの必要性はなかった、と主張。
なお、この記事については、次のような批判がなされているようだ。

https://goyang88.com/archives/3411

 

まとめ

 今回は、レーダー照射問題について、10人の軍事評論家の見解を振り返ってみた。

10人の見解をスーパー超訳すると、次の5群に大別される。

(筆者の事実誤認があるかも知れないので、異論等があれば、コメントいただければ幸甚である)

 

①レーダー照射は韓国の陰謀。韓国を征伐すべし!
  小笠原理恵、西村金一
②レーダー照射は韓国側の失態。韓国はきちんとオトシマエをつけよ!
  小川和久
③レーダー照射は韓国側の過失。でも、大した問題ではないよ。
  黒井文太郎、関賢太郎、田岡俊次、高橋浩祐、文谷数重
④照射されたか否かの事実関係はともかく、日本の世論は危うい
  井上孝司
自衛隊の誤認であって、実はレーダー照射されていないのではないか
  田中昭成


ネトウヨ層からすれば、④や⑤の論者のみならず、③ですら「パヨク」呼ばわりの対象であり、片や、親韓左派グループからすれば、②ですら「安倍政権の走狗」呼ばわりの対象になっちゃっているようだけど、左右分断図式で短絡的に捉える思考は健全ではありませんね。

 

 

 

【本ブログにおける関連記事】

・レーダー照射問題の真相を今一度考える
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/05/235000

・日韓レーダー照射問題は、メディア・リテラシークリティカル・シンキング好材料である
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/08/235500

 

・6年前の日中レーダー照射事案との対比において、今般の日韓事案を再考する(その1)
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/10/174500

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その2)「危険な行為」と「極めて危険な行為」の差異
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/12/233000

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その3)「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の違いを深読みする
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/16/235500

レーダー照射問題の真相を今一度考える

 

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2018年12月28日に自衛隊が公表した映像

 

 

2018年12月21日に、日韓でいわゆる「レーダー照射問題」が勃発してから45日が経過した。


徴用工問題や観艦式における旭日旗禁止事案などで日韓で険悪なムードが続く中、今回のレーダー照射問題によって日韓関係は決定的に悪化し、特に日本の一般世論では、韓国を「友好国」ではなく「敵国」視する論調が広まっている。

 

これまでの経緯を簡単に振り返ってみよう。

 

レーダー照射問題の経緯

 

まず、日本の防衛省が、12月21日に、「海上自衛隊厚木基地(神奈川県)所属のP1哨戒機が20日午後3時ごろ、石川県・能登半島沖の排他的経済水域内の上空で韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けた」と発表した。岩屋毅防衛相は「不測の事態を招きかねず、極めて危険な行為である」旨を述べ、韓国に強く抗議したことを明らかにした。

 

12月27日に、日韓の実務者協議が開催され、韓国側が照射を否定した。翌28日に防衛省は、P1哨戒機が撮影した約13分の映像を公開した。

 

年が明け1月2日に、韓国国防省は、「友好国の艦艇が公海上で遭難漁船を救助している人道主義的状況で、日本の哨戒機が低空威嚇飛行をした行為そのものが非常に危険な行為」であったとし、日本側に謝罪を求める声明を発表した。1月4日には、韓国側の正当性を主張する映像を公開した。

 

1月21日には日本側防衛省が「本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難」との声明を出し、「韓国レーダー照射事案に関する最終見解」と火器管制用レーダー探知音・P-1の当日の飛行ルートなどを公開した。


1月22日には韓国国防部が「日本が両国関係と韓米日協力、さらには国際社会の和合に何の役にも立たない不適切な世論戦をこれ以上しないことを今一度厳重に求める」との抗議文を発表した。

 

嘘つきは日韓のどっちだ?


以上が一連の経緯である。日韓両国政府は、韓国の駆逐艦「広開土大王」から自衛隊P1哨戒機に向けて火器管制レーダー(STIR-180)からレーダー波が照射されたか否か、という事実関係を巡って真っ向から対立している。

 

STIR-180からレーダー波が照射されたか否の真実は一つしかなく、日韓両政府のうち、片方が真実を語り、他方は虚偽の発言をしていることになる。では、果たしてどちらの主張が真なのであろうか。

 

筆者の基本認識は、国家・政府なるものは嘘つきの塊で、とりわけ軍事組織は、嘘つきの極致で、秘密保持を錦の御旗に都合の悪いデータを恣意的に隠蔽したり、平然と改竄をやってのける連中であると考えている。自国も他国も嘘つきという点で大差なく、自国政府の見解を無条件に信用し、相手国政府の主張を無条件に否定する態度は、愚かで危なっかしいと思っている。

 

レーダー照射問題についても、日韓両政府とも、内政事情などから嘘をつく動機があり、日本政府が嘘をコイでいる可能性もあるし、逆に、韓国政府が嘘をコイでいる可能性もあると考えている。

 

筆者は、ミリタリーやレーダーについて専門的知識を持っている訳ではないが、STIR-180からレーダー波が照射されたか否かの真相を知りたく、日韓両政府の見解、評論家などの関連記事に幅広く目を通し、日韓両政府のどちらの見解がより論理的・合理的で、より説得力のある主張を展開しているのかを自分なりに批判的に思考してきた。

 

で、日韓両政府のどちらが真でどちらが嘘か、自分なりに色々考えてきた結論を開陳すると、絶対的な証拠が欠如しており、結局のところ「わからない」としか言いようがない。

 

韓国政府の主張に立脚した事件像


「STIR-180からレーダー波は照射していない」とする韓国政府の主張にも一定の説得力があり、この立場に立脚すれば、この間の経緯は次のように映る。

 


接近してきた自衛隊の哨戒機に対し、駆逐艦「広開土大王」からは、レーダー波自体は照射していないが光学カメラを稼働させるためSTIR-180レーダーを指向させた。

 

哨戒機内ではレーダー波捕捉を示唆するアラームが鳴ったが、この時点で、NW-08、SPS-95kなどの別のタイプのレーダーを稼働しており、また、警備救難艦からもSTIR-180と同様の周波数帯のドップラー・レーダーが稼働していた。

 

STIR-180からレーダー波自体は照射されていないものの、レーダーが哨戒機の方向を向いていたことから、哨戒機の乗務員は、警報音を、STIR-180からのレーダー波であると「早とちり」した。

 

自衛隊内部では、本件について政治問題化させることなく、慎重な解析と対応が必要と考えていたところ、官邸からの命令により、翌21日に、攻撃直前の行為を受けたと韓国に対する糾弾を開始した。

 

韓国においては、哨戒機が、他のレーダー波を誤認した可能性などが指摘されていたが、日本政府は明言を避け、日本国内では一部の右派政治家や嫌韓評論家が激しい韓国バッシングを展開し、冷静な議論が不可能な状況に陥った。

 

1月21日に日本側が、もうこれ以上議論しないと捨て台詞を吐いて最終見解を公表し、この中で、STIR-180からのレーダー波が照射されていたと明言した。しかし、同時に公表したレーダー探知音と称する音声データは、単なる機械音に過ぎず、STIR-180からのレーダー波であることを裏付けるものではない。

 


断っておくが、これは、あくまでも、韓国側の主張を前提としたときに描写される事件像であり、筆者自身の見解ではない。一つのものの見方であると思うが、韓国側の主張には、日本側の主張を前提としたときに、いくつか難点がある。

 

韓国側においても、自衛隊哨戒機が、何らかのレーダー波を探知したであろうことは全否定しないが、駆逐艦のNW-08、SPS-95kなどの別のレーダー、あるいは警備救難艦からのレーダー波を、自衛隊がSTIR-180のレーダー波と誤認した、とするのが韓国側の立場である。

 

やっぱりSTIR-180レーダー波は照射されていたのか?

 

確かに、これらのレーダーの中には、STIR-180と同じ周波数帯のものも存在しているようであるが、いずれも回転しながらレーダー波を出す捜索レーダーであり、特定の目標に向け一定期間継続的に照射するSTIR-180のようなレーダー波とは、明確に特性が異なるものであるらしい。

 

また、1月21日に防衛省が公開した音声データについて、韓国側は単なる機械音に過ぎないと一蹴しているものの、自衛隊が公表した音声データを音声編集ソフトによりスペクトログラム解析を行い、STIR-180による信号に合致すると指摘するブログ記事が存在する。

 

スペクトログラム解析の結果について評価する能力を筆者は持ち合わせていないが、解析結果を前提とすれば、STIR-180レーダー波が照射されたことは紛れもない事実と言えるかも知れない。

 

先に書いたとおり、軍事組織は嘘つきの極致であり、平然と隠蔽や捏造をやってのける連中である。古今東西を問わず、歴史上、かかる事例は枚挙に暇無い。故意か過失かはともかく、実際にはSTIR-180レーダーを照射していたにも関わらず、韓国側が意地で否定し続けている蓋然性が高いと考えられる。

 

しかしながら、極めて陰謀論的発想であるが、安倍総理の意向を忖度して、あるいは組織防衛のため、実際にはSTIR-180レーダーは照射されていないにも関わらず、STIR-180による信号に合致するよう自衛隊が組織的に音声データを偽装・改竄した可能性も完全には否定できない。

 

何しろ、日本は、不都合な事実が発覚すれば、「鉛筆なめなめ」「お化粧」と称して、悪びれることなく平然と行政組織が公文書を書き換え情報操作をするのがお家芸の得意技とするお国柄である。

 

そんなこんなでSTIR-180レーダー照射の有無についての真相は闇の中。両国で協議を続けたところで、あるいはレーダー技術等の専門家が高度専門的な討議を行ったところで、非難の応酬に終わってしまい、真相が解明されることはないだろう。

 

ただし、韓国駆逐艦から自衛隊哨戒機に向けてSTIR-180レーダー照射されていたとしても、「直ちに対空ミサイル攻撃が予想されるような緊迫した状態であった訳ではなく、外交問題化させることなく、両国の実務レベルで協議して一件落着すれば済む事案であった。」というのが、多くの軍事評論家が示す見解だ。

 

日本側が官邸主導で韓国を挑発的に批判したことによって、両国政府、両国軍事組織、両国国民の間で、相互不信感と敵国意識が強まったのだとしたら、残念なことである。

 

 

(参考)1月21日に防衛省が公開した音声データについて

 

本文中で、筆者は、「自衛隊が公表した音声データを音声編集ソフトによりスペクトログラム解析を行い、STIR-180による信号に合致すると指摘するブログ記事が存在する」と記載した。

 

具体的には、(1)「記憶は人なり」というブログの記事と、(2)自称軍事オタクの「誤字脱字な研究室 @gozidatuzinaLab」氏が、「軍事系まとめブログ」に読者投稿した論考の2つがある。

 

(1)防衛省が公開したレーダー探知音を分析する

https://wave.hatenablog.com/entry/2019/01/22/060500


ミリタリー情報などを綴った「記憶は人なり」というブログにおける記事。同ブログでは、2018年12月22日、23日、31日にもレーダー照射問題にかかる記事が掲載されている。

 

(2)「めちゃくちゃすごい音」の意味するところとは?韓国駆逐艦レーダー照射事案、公開された音声を解読する。

http://gunji.blog.jp/archives/1073635147.html


F-35は素晴らしい戦闘機であることを知らしめたい自称軍事オタクの「誤字脱字な研究室 @gozidatuzinaLab」氏が、「軍事系まとめブログ」に読者投稿した論考。

 

これらの解析結果を前提とすれば、「STIR-180レーダー波が照射されたことは紛れもない事実であると思われる」と本文執筆時点では考えていたが、先ほど、「一般社団法人日本戦略研究フォーラム」のブログに掲載された西村金一氏の「レーダー波照射音の公開は、韓国に弁明の機会を与えただけだ」https://blogos.com/article/352685/という記事を目にした。


西村金一氏といえば、自衛隊出身で防衛省情報分析官、幹部学校戦略教官などを歴任した右派の軍事評論家である。今回のレーダー照射問題については、韓国の警備救難艦が救助していた遭難船は漁船ではなく北朝鮮の特殊工作船であり、その工作船に韓国が燃料を提供していた事実を隠蔽したいがために自衛隊哨戒機にレーダー照射が行われたのだ、との主張をメディア等で展開している。

 

そんな西村金一氏が、驚くべきことに、1月21日に防衛省が公開した音声データはSTIR-180レーダー照射がなされた決定的証拠にはならない、と、むしろ韓国政府が喜ぶような主張をしているではないか。西村氏によれば、パルス信号の詳細なデータを開示しなければ、レーダー照射がなされた絶対的証拠にならないらしい。

 

う~ん、ますます謎が深まるばかりだ。

 

 

 

【本ブログにおける関連記事】

・軍事評論家は、日韓レーダー照射問題をどう論じたか
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/06/235000

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 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/08/235500