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人命救助を妨げる困ったちゃん イーロン・マスクの愚行

 

f:id:syakai-no-mado:20180717224829j:plainテスラCEOのマスク氏がタイに送ったブツ

 

 

本ブログでは、このところ、今般の西日本豪雨に関連して、人命救助や被災者支援の課題について取り上げてきた。今回は、わが国ではなく、タイでの洞窟閉じ込め事件を巡る話題である。

 

わが国のマスメディアではほとんど取り上げられていないが、米国や英国では、先般のタイで子ども達13名が洞窟に閉じ込められた事件を巡って、テスラ・モーターズや民間宇宙企業スペース・エックスの最高経営責任者(CEO)を務めるイーロン・マスク氏の言動が、大きな話題となっている。

 

イーロン・マスク氏については、カリスマ的経営者として絶賛されることがある一方で、ハッタリ野郎、ペテン師、目立ちたがり屋、独裁者、激昂型性格などと評され強烈な個性の持ち主であることが知られている。

 

南アフリカ共和国で生まれ、その後渡米したマスク氏は、ペンシルバニア大学で物理学と経済学の学位を得て、スタンフォード大学大学院に進学するも、2日で辞めてITベンチャーを起業。その後、いくつかの企業の起業と売却を繰り返し、約170億円の個人資産で、2002年にスペース・エックス社を創業。2008年には、テスラのCEOに就任した。

 

マスク氏の行動原理というかミッションは、「人類救済」らしい。環境破壊や石油資源の枯渇により、人類は滅亡の危機に瀕しており、人類位が生き延びるためには、火星に移住するしかない。スペース・エックス社とテスラはそのための企業だという。

 

誰もが、ただのホラ吹きだと当初は小馬鹿にしていたが、スペース・エックス社のロケットの打ち上げが成功を重ね、テスラもEV(電気自動車)がモデルSの開発・販売で躍進し、マスク氏は時代の寵児としてもてはやされるようになった。

 

しかし、本年に入って、テスラの経営に陰りがみられるようになった。手軽な価格帯のEV社「モデル3」の量産化につまづき、週5000台生産という目標達成に向け、マスク氏自身が工場に乗り込んで社員を恫喝する日々が続いている。

 

そんなマスク氏であるが、タイのタルムアン洞窟に閉じ込められた少年たちのニュースを耳にし、スペース・エックスのロケット「Falcon 9」の「液体酸素移送管」を改造し、潜水艇として利用できるようにした「脱出ポッド」を製作したことをツイートで明らかにした。このポッドは直径が31センチほどで、「2人のダイバーがけん引できるほど軽量で、狭い隙間を通り抜けられるほど小さく」また「極めて頑丈だ」と述べている。7月8日のツイートでは、ダイバーたちがロサンゼルスの高校のプールでこのポッドをテストしている映像を公開している。

 

マスク氏は、その後のツイートで、この小型の潜水ポッドをタイに届けたことを明らかにした。同氏は(このポッドが)「役に立つことを期待している。もし役立たなかったとしても、将来何かの時に使えるだろう」と述べた。実際、救助活動に、マスク氏の潜水ポッドが使用されることは無かったが、マスク氏は自国に引き上げることなく、現地に潜水ポッドを残していく方針のようだ。

 

マスク氏のこの行為に憤ったのが、少年たちの救出作戦で重要な役割を果たした英国人ダイバーのバーノン・アンズワース(Vernon Unsworth)氏である。アンズワース氏は、CNNのインタビューで、マスク氏の小型潜水ポッドが、全く使い物もならないと指摘した上で、「PR目的のスタンドプレイ」だとして非難したのである。

 

それにかみついたのが、当のマスク氏。米国時間7月15日のツイートでアンズワース氏を「小児性愛者」と罵倒した。さらに、その後のツイートで、「何なら賭けてもいいよ、本当のことだ」とした。どちらのツイートも既に削除されているようだが、マスク氏がEV生産という大局を見失っているとの懸念が広がり、テスラ株は2.75%下げ、時価総額でほぼ20億ドルを失うハメになったようだ。

 

災害や危機が発生した際には、山師・ペテン師の類が、色々な技術を売り込みに来ることは日常茶飯の風景だ。厄介なのは、社会的発言力、影響力の強い人間が、売名行為として、科学的・技術的には明らかに妥当性を欠き有害無益な自らの技術や見解に固執することだ。時に、メディアが、この不毛な技術や見解を支持し、当局が振り回され、迅速な対応に支障を来すこともある。マスク氏の潜水ポッドはその典型例といっていいだろう。人命救助の現場では最も迷惑な行為である。

 

被災者支援と称し、売名と自己顕示欲から迷惑をかけている困ったちゃん、日本にもいるよね。先日のブログで取り上げた、某球団の買収に名乗り出ている新興通販企業の社長。全国紙などでも取り上げられ、いい宣伝効果になったとほくそんでいるに違いない。