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女性記者セクハラ被害事件簿 第17号

【加害者】警視庁総務部広報課の警部(40代)

 

【被害者】『週刊現代』編集部の若手女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊朝日』2011年8月19日号で掲載

 

【事案の概要】

2011年6月24日の夜、警視庁庁舎内で警視庁総務部広報課の職員と、雑誌記者らとの懇親会が開催されていた。この場で、40代の警視庁警部Sが、『週刊現代』編集部の若手女性記者Aに対しセクハラ行為を働いたのである。そのときの模様を、『週刊朝日』の記事から引用する。

 

「懇親会は18時スタートでしたが、S氏は20時くらいには、かなり酔っていました。会は警視庁内の書庫で行われたため、ギュウギュウ詰め状態だったのに、女性記者を見るや近寄っていって『かわいいね』と顔を近づけていた。時間が経つにつれて暴走し始め、チャックを全開にして女性記者に股間を近づける始末でした。そんな状態でS氏が目をつけたのが『週刊現代』の若手記者Aさんでした。Aさんを見るや、『君、ほんとにかわいいね』などと言い、廊下に連れ出して頭をなでたりしていました。ほかの警察側の参加者は『ヤバイな』という目で見ていたが、何も言いませんでしたね」(参加した記者)

 

警察官の扱いに慣れているベテラン女性記者たちは、S氏を「まあまあ」といなしていたが、Aさんは、むげにできなかったようだ。それが、S氏をエスカレートさせてしまったのかもしれない。

 

「懇親会の後、何人かで2次会に行ったようですが、その際もS氏は『行くんだろ?』とAさんを執拗に誘っていました。2次会に向かうタクシーの中でもS氏によるセクハラがあったと聞きました」(別の参加者)

 

Aさんは、タクシーの後部座席でも、泥酔していたS氏に密着され『かわいいね』と連呼されていたようだ。

 

 

【顛末】

後日、記者が上司にS氏のことを報告したところ、上司は激怒し、『女性に対してひどすぎる』と警視庁広報課に抗議した。

 

S氏は周囲に「酔っていて覚えていない」と漏らしているようだが、関係省によると、警視庁内では『処分せざるをえないだろう』という空気になったという。

 

週刊朝日』が警視庁広報課に事実関係を確認したところ、「御指摘のような事実は把握しておりません」との回答であった。

 

 

【ブログ主のコメント】

 「酔っ払った勢いで40代のオヤジが、若い女性に顔を近づけて『かわいいね』を連呼することはセクハラとしてセーフか、アウトか」、という問いかけをすれば、おそらく男性の8割以上は、「これくらい、セーフでしょ。この程度のことでセクハラだなんて騒ぎすぎだよ。むしろ、『かわいいね』と褒められた女性は内心嬉しいはずだ」と答えるに違いない。

 

一方、女性に聞いたら、9割以上が「キモい。絶対嫌。自分なら耐えられない。」と回答すると思われる。

 

セクハラにもいろんなグレードがあるが、この手のセクハラ発言が許容できるか否かの認識は、男女間で大きな差異が存在するのが現実だ。懇親会には、各社雑誌記者が参加していたはずだが、これを問題視して記事にしたのは『週刊朝日』だけで、しかも1か月半ほど経過してのこと。各記者が、こんなエピソードがあったと報告したところ、各紙デスクは話題性なしと判断したのだろう。

 

男性が問題視するほどのことではないと思っていても、女性が嫌がることは、社会通念として、セクハラとしてアウトだと男性側も認識を改める必要がある。

 

ともあれ、今回の警部殿は、『かわいいね』発言だけでなく、「チャックを全開にして女性記者に股間を近づけ」たり、タクシーで女性記者に密着していたようなので、完全にアウトだ。

 

通常、この手のセクハラ事案は『週刊現代』のようなスキャンダル好き週刊誌が好んで取り上げるネタであり、新聞社系の週刊誌は一歩引いている感があるが、本件は、『週刊現代』が被害者側で、報道したのが朝日新聞社の発行する週刊誌だったという点において興味深いものである。

 

ちなみに、女性記者の上司が警視庁に抗議したようだが、お詫びの「品」として、特大スクープが『週刊現代』に提供されたのであろうか。筆者もこれを検証するほどの暇人ではないが、もし、『週刊現代』で2011年秋から冬にかけて、警視庁がらみのスクープ記事が載っていたとしたら、本件セクハラのお詫びのしるしだと考えるのが妥当である。

 

【予告】

次回は、先般の記事「女性記者セクハラ被害事件簿 第8号」で取り上げた高知県警巡査長による高知新聞女性記者へのセクハラ事案について、改めて追加コメントを行う予定である。