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日韓の国力を冷静に国際比較する(その3):デジタル競争力ランキング2019の結果

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スイスのIMDが9月26日に発表した世界デジタル競争力2019ランキング

 

 

今般、スイスのIMD World Competitive Centerが、「世界デジタル競争力ランキング2019」を公表した。


このランキングは、2015年から毎年公表されており、世界の63カ国を対象に、各国が、政府の業務、ビジネスモデル、社会生活の変革につながるデジタル技術の開発や採用に、どれだけ積極的に取り組んでいるかを評価しランキング形式にまとめたものである。

 

具体的な指標については後述するとして、果たして、日本と韓国は、世界何位にランキンしているであろうか?

 

【世界63カ国ランキング】
まずは、上位30カ国を列記しよう。国名の後の括弧内の数字は昨年の順位である。

1位 米国(1)
2位 シンガポール(2)
3位 スウェーデン(3)
4位 デンマーク(4)
5位 スイス(5)
6位 オランダ(9)
7位 フィンランド(7)
8位 香港(11)
9位 ノルウェー(6)
10位 韓国(14)
11位 カナダ(8)
12位 アラブ首長国連邦(17)
13位 台湾(16)
14位 オーストラリア(13)
15位 英国(10)
16位 イスラエル(12)
17位 ドイツ(18)
18位 ニュージランド(19)
19位 アイルランド(20)
20位 オーストリア(15)
21位 ルクセンブルグ(24)
22位 中国(30)
23位 日本(22)
24位 フランス(26)
25位 ベルギー(23)
26位 マレーシア(27)
27位 アイスランド(21)
28位 スペイン(31)
29位 エストニア(25)
30位 リトアニア(29)

 

米国をはじめとするトップ5カ国は、昨年と順位は変わらず磐石だ。

で、日韓を比較すると、日本は昨年から1ランクダウンの23位で、韓国は4ランクアップの10位になってますね。

 

【人口大国29カ国のランキング】
この手のランキングでよく指摘されるのは、広範な諸分野に投資等を分散させる必要のある人口大国と、人口規模が小さく特定の分野に資源配分等を集中することが可能な小国とを、同列に並べるのはナンセンス、という主張だ。このため、報告書では、人口が2000万人以上の人口大国29カ国のみに限定したランキング・リストも示されている。上位15カ国を列記しよう。


1位 米国  
2位 韓国
3位 カナダ
4位 台湾  
5位 オーストラリア
6位 英国
7位 ドイツ
8位 中国
9位 日本
10位 フランス
11位 マレーシア
12位 スペイン
13位 ポーランド
14位 ロシア
15位 サウジアラビア 

 

人口2000万人以上の人口大国のみに限定すると、韓国は米国に次いで世界2位、日本は9位と、ますます両国の格差の大きさが浮き彫りになる結果となっている。

 

【アジア太平洋14カ国のランキング】
地域内比較という観点から、報告書では、地域ごとのランキング・リストも示されている。アジア太平洋14カ国のランキングを列記する。


1位 シンガポール
2位 香港
3位 韓国
4位 台湾
5位 オーストラリア
6位 ニュージランド
7位 中国
8位 日本
9位 マレーシア
10位 タイ
11位 インド
12位 フィリピン
13位 インドネシア
14位 モンゴル

 

このランキングからは、「日本が、アジアや世界のデジタル・IT革命をリードする」とウソぶく安部政権のIT立国やらSociety5.0のかけ声が、虚言・妄言の類に過ぎないことが明らかになっちゃいますね。またしても、不都合な真実

 

【6年間の推移】
2015年から2019年までの各年の日本と韓国のランキングの推移を示す。
日本: 23位 →23位 →27位 →22位 →23位
韓国: 18位 →17位 →19位 →14位 →10位

過去の推移をみると、もはやデジタル競争力の領域では、日本は韓国の足元にも及ばないことは明らかだ。

 

参考までに、中国の推移も示そう。
中国: 33位 →35位 →31位 →30位 →22位
韓国同様、中国も年々ランクをアップさせており、ついに2019年は日本と中国のランクが逆転しちゃっている。

 

自称・愛国派の人たちにとっては屈辱的な結果であるが、これが世界の中の日本の現実なのだ。


安部政権は、7月から半導体製造に必要な材料などに関する「対韓輸出規制」を行っている。これは、日韓の実力差を悟った政権中枢が、何とか韓国の足を引っ張りたいがための必死のもがきである。しかし、各種ベンチマークから両国の基礎体力を判断すれば、一部材料の輸出規制を行ったところで、韓国経済が壊滅的な打撃を受けるものではなく、むしろ、ブーメランとなって日本経済に大きな損失を及ぼすものであることは自明なのだ。

 

【各指標に関する補足説明】

ここから先は、「世界デジタル競争力ランキング」が評価の対象とする指標について紹介する。

 

このランキングは、31の統計指標と、専門家の意見をもとに分析した20の調査データの計51の指標をもとに評価・スコアリングし、総合的な順位を決定したものである。

 

評価にあたっては、「知識(knowledge)」「テクノロジー(technology)」「将来性(future readiness)」の3要素のラインキングと、この3要素はさらに、3つの下位要素ごとの分析が行われる。

 

まず、「知識」については、新たな技術を発見し、理解し、実現するノウハウをどれだけ持ち合わせているかが評価対象になる。(1)人材、(2)教育トレーニング、(3)科学的集中、の3つの下位要素から構成される。

 

次に、「テクノロジーについては、デジタル化技術の開発を促進する政策、規制、投資環境やテクノロジーの枠組みなどを評価する。(1)規制枠組み、(2)資本力、(3)技術的枠組み、の3つの下位要素から構成される。

 

3つ目の「将来性」については、デジタル技術の浸透、俊敏性、デジタルトランスフォーメーションに向けた国の準備度合いなどを評価する。(1)適応力、(2)ビジネスのスピード、(3)ITインテグレーション、の3つの下位要素から構成される。

 

各要素ごとの日韓両国のランキングを見てみよう。前者が63カ国中の日本のランキング、後者が韓国である。
知識:25位-11位
テクノロジー:24位-17位
将来性:24位-4位

 

次に下位要素ごとの日韓両国のランキングを見てみよう。
「知識」の下位要素
(1)人材:46位-30位
(2)教育トレーニング:19位-5位
(3)科学的集中:11位-6位

 

「テクノロジーの下位要素
(1)規制枠組み:42位-26位
(2)資本力:37位-29位
(3)技術的枠組み:2位-7位

 

「将来性」の下位要素
(1)適応力:15位-4位
(2)ビジネスの機敏性:41位-5位
(3)ITインテグレーション:18位-21位

 

3つの要素と9つの下位要素ごとの日韓ランキングを示したが、その中で、日本が韓国よりも上位にランクされているが、「技術的枠組み」と「ITインテグレーション」の2つの下位要素のみである。

 

【51指標のランキング】
最後に、「世界デジタル競争力ランキング」における評価項目である51指標全ての項目について、日韓を比較しておく。いずれにも、前者が63カ国中の日本のランキング、後者が韓国である。63カ国中、1位か2位の優位な項目は青色、おおむねワースト10の劣位の項目は赤色で示す。

 

下位要素「人材」に関する6指標
 PISAの数学の学習到達度:4位-6位
 国際的経験:63位52位
 高度なスキルを有する外国人:51位-49位
 都市マネジメント:11位-17位
 デジタル技術のスキル:60位-26位
 留学生の流動性:25位-50位

 

下位要素「教育トレーニング」に関する6指標
 職業訓練:15位-33位
 国民の教育支出:55位-22位
 高等教育の達成度:6位-3位
 第三期教育における生徒・教師比率:1位-34位
 自然科学分野の卒業者:42位-9位
 学位を持つ女性:8位-20位

 

下位要素「科学的集中」に関する7指標
 研究開発費の支出割合:6位-1位
 一人あたりの研究開発費:16位-5位
 女性研究者数:54位-53位
 研究開発の論文生産性:15位-25位
 科学技術分野の雇用:36位-30位
 ハイテク特許:4位-3位
 教育と研究開発領域のロボット:4位-13位

 

下位要素「規制枠組み」に関する7指標
 ビジネスの開始:42位-7位
 契約の実行:38位-2位
 移民に関する法令:56位-61位
 技術の開発と実行:37位-50位
 科学研究に関する立法:41位-34位
 知的財産権:31位-37位

 

下位要素「資本力」に関する6指標
 IT&メディア企業の時価総額:17位-3位
 技術開発のための資金:32位-42位
 銀行金融サービス:45位-54位
 国の信用力(Fitch、Moody's、S&P):31位-19位
 ベンチャーキャピタル:36位-48位
 情報通信事業の投資:57位-46位

 

下位要素「技術的枠組み」にかする6指標
 情報通信技術:36位-12位
 モバイルブロードバンドの加入者:1位-10位
 ワイヤレスブロードバンドの普及:2位-19位
 インターネットの利用者:5位-16位
 インターネットの回線スピード:14位-2位
 ハイテク産業の輸出額:21位-19位

 

下位要素「適応力」に関する5指標
 電子参加:5位-1位
 インタネットの販売:16位-1位
 タブレットの所有:24位-13位
 スマートフォンの所有:19位-17位
 グローバリゼーションへの態度:44位-19位

 

下位要素「ビジネスの機敏性」に関する5指標
 機会と脅威:63位-43位
 世界ロボットシェア:2位-3位
 企業活動の機敏性:63位-28位
 ビッグデータ解析の活用:63位-40位
 知識の移転:45位-35位

 

下位要素「ITインテグレーション」に関する4指標
 電子政府:10位-3位
 公私の協働:37位-41位
 サイバーセキュリティー:41位-23位
 ソフトの著作権侵害2位-20位

 

 

【出典】

IMD World Digital Competitiveness Ranking 2019

https://www.imd.org/wcc/world-competitiveness-center-rankings/world-digital-competitiveness-rankings-2019/

 

 

【本ブログ内の関連記事】

日韓の国力を冷静に国際比較する

(その4):2019年社会進歩指標(Socail Progress Index)の成績は?
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/09/29/184500

 

(その2):世界幸福度ランキング2019の結果から
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/03/21/021200

(その1):パスポートの「実力」は?
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/03/06/010000