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社会ノマド、社会の窓、流浪しながら漂泊する社会を見つめます

日韓レーダー照射問題はメディア・リテラシー、クリティカル・シンキングの好材料である

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自衛隊が公表した「飛行経路」


 


本ブログにおいて、一昨日、昨日と日韓レーダー照射問題について取り上げてきた。一昨日は、韓国駆逐艦から自衛隊哨戒機に対しSTIR-180からレーダー波が照射されたのは真か偽か、について筆者の見解を述べた。昨日は本件について、日本の軍事評論家10名が、どのような見解を示してきたのか振り返ってみた。

 

このレーダー照射問題については、日韓両国間で、主張が食い違う点が多く、両国のメディアや評論家、ブロガーなどによって、様々な議論が行われてきた。

いま一度、主な論点を挙げてみよう。

 

(1)そもそも、韓国駆逐艦から自衛隊哨戒機に対しSTIR-180からレーダー波が照射されたのか、否か。


(2)STIR-180レーダーが照射されていたのが事実として、その事実を自衛隊が確証したのはいつの時点だったのか。また、韓国軍において、誰がどのような目的でレーダー照射を指示したのか。
 もしSTIR-180レーダーが実際には照射されていなかったのであれば、自衛隊において、判断ミスが生じた原因は何か。また、誰の判断・責任で照射されたと虚偽の報告を行ったのか。


(3)問題発生場所はどこか?能登半島付近なのか、韓国名の独島(日本名の竹島)付近なのか、どちらからも離れた海域なのか。


(4)問題発生時点の気象条件(波の状況)は、穏やかだったのか、荒れていたのか。


(5)韓国が対応していた遭難船は、北朝鮮の漁船だったのか、それとも工作船だったのか。韓国は遭難船を救助していたのか、それとも、燃料を供給していたのか。


(6)自衛隊は、どのようにして北朝鮮遭難船と韓国海警備艇駆逐艦の存在を探知したのか。自衛隊が、韓国軍の無線を傍受していたのか、それとも、通常の哨戒活動中に偶然発見したのか。


(7)自衛隊哨戒機は、韓国駆逐艦に何メートルの距離まで接近していたのか。また、これは客観的にみて、駆逐艦の乗員に脅威を与える距離であったのか。


(8)自衛隊哨戒機内で「FC系レーダー波を探知」することは、客観的にみて、乗員にどの程度の脅威を与えるものなのか。ミサイル攻撃を受ける直前であると差し迫った生命の危機を感じるレベルなのか、それとも、大した脅威は感じていなかったのか。


(9)自衛隊哨戒機からの航空緊急無線呼び出しを韓国駆逐艦が受信しなかったのは、無線障害あったのか、それとも受信状況は良好で、韓国側が故意に無線呼び出しを無視したのか。


(10)レーダー照射問題を政権浮揚のために利用したのは、安部政権か、文政権なのか、それとも双方なのか。

 

軍事組織や国家権力中枢の機密主義・隠蔽体質により、これらのファクトが完全に解明されることは期待できないが、日韓双方から公式・非公式に提示された資料や発言、メディアや評論家等による議論を、先入観を持たず、健全な懐疑心で批判的に読解することにより、どちらの主張が、より論理的で、より説得力があるかを考察することが可能である。

 

この作業は、原告、被告の双方から示される極論や巧妙なレトリック、詭弁交じりの対立的な主張を、自由心証主義により事実認定していく裁判官の判断プロセスにも似たものとも言えるだろう。

 

フェイクニュースやマインドコントロール手法を駆使した商業広告や宗教勧誘、政治的プロパガンダに溢れたネット社会において、個々人は我が身を守るために、情報の真偽を見抜く力を養うこと、すなわち、メディア(情報)リテラシーを高めることが必須である。

 

筆者は、今回の日韓レーダー照射問題は、メディア(情報)リテラシークリティカル・シンキングの素養を高める好材料であると思っている。中立的な意見によりも、両極端の意見・記事を読み比べることによって、より批判的な思考力が研ぎ澄まされることであろう。

 

両極端の意見・記事とは、ここでは、片や「レーダー照射は行われていなかった、嘘つきは日本のほうだ」との主張であり、他方で「反韓嫌韓のスタンスが鮮明」な主張、の両者を指すことは自明であろう。以下において、メディア(情報)リテラシークリティカル・シンキングの実践力を磨くための生の教材として、それぞれの立場の典型例である6名(のブログ等)をプロ(職業執筆家)、アマ(個人ブロガー)を区別することなく取り上げて紹介する。

 

各自、裁判官になった気分で、両極端な意見・記事群を読み比べ、様々な論点について、どちらの主張がより合理的で説得力があるのか、どちらが、フェイク、ガセネタであるのか、ジャッジしてみたら面白いと思う。

 

レーダー照射は行われていなかった、嘘つきは日本のほうだと主張する記事群

「レーダー照射は行われていなかったのではないか、仮に照射がされていたとしても、大した問題ではない。」との立場の主張を繰り返し記事にしてきたブログ等は、筆者の調べた限り次の6つ存在する。


【1】誰かの妄想・はてなブログ http://scopedog.hatenablog.com/

ざっと過去の記事を眺めたところ、ネトウヨ歴史修正主義批判、辺野古基地問題など安部政権批判の内容が多いブログだ。

レーダー照射問題については、2018年12月30日に「広開土大王艦事件について日本側の公開映像に関する件」http://scopedog.hatenablog.com/entry/2018/12/30/070000

という題の記事を掲載して以降、30件以上の関連記事を掲載。

 

【2】スパイク通信員の軍事評論 http://spikemilrev.com/index.shtml

昨日のブログ記事でも紹介したが、軍事評論家の田中昭成氏が、2006年から軍事関連情報を連載しているブログ。

レーダー照射問題については、2018年12月29日に「レーダー照射事件は日韓共に情報開示不足」http://spikemilrev.com/news/2018/12/29-1.htmlという題の記事を掲載して以降、1月25日までに、9件の関連記事を掲載。

 

【3】コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」

https://hbol.jp/hbo_series_group_name/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%A9%E3%83%89%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E3%81%AE%E7%A7%81%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%AE%E5%88%86%E9%87%8E%E3%81%AF%E5%B0%82%E9%96%80%E5%A4%96%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8C

コロラド博士を自称する牧田寛氏が、ハーバー・ビジネス・オンラインという扶桑社が運営するオンライン情報サイトに記事を連載。
(扶桑社と言えば、右派・反韓嫌韓の著作を多数刊行し、先日、女子大生何ちゃらランキングで物議を醸した雑誌「SPA!」を発行するフジ産経グループの出版社であるが、ハーバー・ビジネス・オンラインには何故か左派の記事も少なからず掲載されている。)

レーダー照射問題については、2019年1月8日に「日韓「レーダー照射問題」、何が起きていたのか、改めて検証する」https://hbol.jp/182872/4という題の記事を掲載して以降、2月8日までに、8件の関連記事を掲載。

なお、反韓嫌韓の人たちは、牧田氏の主張に怒り心頭のようで、牧田寛氏によるレーダー照射事件の記事への反論 - pollux6’s blogというブログが立ち上がっているようだ。

 

【4】ブースカちゃん(@booskanoriri)の「へろへろblog」https://booskanoriri.com/

ITやらカメラ、動物、飛行機などなど多彩な趣味?を綴っており、政治や軍事面であまり「色」はないブログのようだ。

レーダー照射問題については、2018年12月29日に「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(1)」https://booskanoriri.com/archives/3464という題の記事をアップして以降、1月20日までに6件の関連記事を掲載。

 

【5】Goodbye! よらしむべし、知らしむべからず http://c3plamo.ddns.net/blog/

このブログ主は、反自民党、反信濃町創価学会)、アンチ大マスコミ・テレビ各局を標榜している。

 レーダー照射問題については、2019年1月1日に「早とちりだったか? ~火器管制レーダーとの錯誤か」http://c3plamo.ddns.net/blog/archives/2019/01/c_1.htmlと題する記事を掲載して以降、1月30日までに13件の関連記事を掲載。
このブログ主は「安部政権の言うこと何ぞ信用できる訳がない」という立場で、安部政権を茶化した表現も目立つ。

 

【6】日中朝不戦ブログ http://blog.livedoor.jp/kobatetu01-memo/

林哲夫(コバテツ)氏が運営する「日中不戦」、北朝鮮問題を考えるブログ。

レーダー照射問題については、2018年12月27日に「韓国によるレーダー照射(問題なし?)」と題する記事をアップして以降、2月7日までに26本の記事を掲載。

 

反韓嫌韓のスタンスが鮮明な記事群

韓国と北朝鮮は内通している、レーダー照射を仕組んできた韓国に対し経済制裁や国交断絶も視野に入れ毅然とした対抗措置を講じるべき、といった主張がネット上で溢れている。

このようなスタンスの論者の中で、レーダー照射問題について多数の記事をアップしているブログ等を6つ紹介する。

 

【1】キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】) https://ameblo.jp/calorstars/

自衛隊の処遇改善を求める請願活動などを実施する「自衛官守る会」という市民団体の代表を努める国防ジャーナリスト、小笠原理恵氏が運用しているブログ。

2018年12月22日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を15本ほど掲載している。


【2】鈴木衛士氏のブログ記事 http://agora-web.jp/archives/author/eijisuzuki

「元航空自衛隊情報幹部」の肩書きの鈴木氏が、「アゴラ」にブログ記事を連載している。
2018年12月24日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を4本ほど掲載している。


【3】木走正水氏のブログ記事 https://blogos.com/blogger/kibashiri/article/

ブロガーの木走氏が、BLOGOSに政治経済、社会問題についての記事を連載。
2018年12月27日以降、レーダー照射問題に関する関連記事を4本ほど掲載している。

なお、厳密に言えば、木走氏はレーダー照射問題について制裁措置を主張しているわけではない。韓国だけが「子供のけんか」を止められないかわいそうな国であるとして、日本の「大人の対応」を支持している。

 

【4】Obiekt よく分かる軍事ニュース解説 https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/

匿名の軍事ブロガー「JSF」氏による軍事ニュースの解説サイトで、2013年1月から計250件ほどの解説記事が掲載されている。

レーダー照射問題については、2018年12月21日に「韓国海軍の駆逐艦海上自衛隊の哨戒機に向けて火器管制レーダーを照射」https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181221-00108571/と題する記事をアップして以降、1月29日までに7件の関連記事を掲載。

このブログの関連記事は、軍事技術面からの解説が中心であり、韓国批判の色合いは強くない。


【5】東アジア黙示録 https://dogma.at.webry.info/

反日ファシズムを迎撃するコラム」と謳われているブログ。

レーダー照射問題に関連して、
日本海に“文在寅ライン”出現…南鮮海軍の愚かな野望(2018年12月22日)
・照射事件の封印された始末書…南北が跋扈する“冷戦の海”(2019年1月6日)
・南北ウラ合意の極秘支援作戦…文在寅に叩き付けた絶縁状(1月22日)
・南鮮軍と組んだ反日メディア…上海沖の“未確認飛行物体”(1月28日)
の4本の原稿が掲載されている。


【6】BBの覚醒記録 https://blog.goo.ne.jp/bb-danwa

売国奴」「皇室問題」「日韓問題」などに関する多数の記事を書き込んでいるブログ。

レーダー照射問題に関連する記事は30本程度掲載されている。韓国に対して弱腰の岩屋防衛相を更迭すべき、と主張している。

 

 

 


【本ブログ内の関連記事】

・レーダー照射問題の真相を今一度考える
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/05/235000

・軍事評論家は、日韓レーダー照射問題をどう論じたか
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/06/235000

 

・6年前の日中レーダー照射事案との対比において、今般の日韓事案を再考する(その1)
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/10/174500

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その2)「危険な行為」と「極めて危険な行為」の差異
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/12/233000

・6年前の日中レーダー照射事件との対比において、今般の日韓事案を再考する(その3)「慎重かつ詳細な分析」と「慎重かつ綿密な解析」の違いを深読みする
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/16/235500