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麻疹(はしか)を馬鹿騒ぎする箕面市 vs 健全な大阪府医療対策課

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この病院における麻疹症例の公表を巡って市と府が対立


 

今月上旬の大阪「あべのハルカス」店員における感染事案に端を発し、麻疹の流行が報じられてきた。感染事例が報告された自治体においては、患者の感染経路や生活状況を根掘り葉掘り調べ上げ、詳細に記者発表するのがブームとなっているようだ。この状況について、ブログ主は、先日の記事「またしても、はしか(麻疹)狂想曲が奏でられている - 麻疹流行を騒ぎ過ぎる不健全な社会」において、次のように批評した。

 

たかだか麻疹(はしか)ごとき感染症に対し、自治体の保健当局(保健所)が、あたかも社会の存続を脅かしかねない天然痘やエボラ感染症、クリミア・コンゴ熱のような致死性が極めて高い一類感染症でも発生したかのごとく、一例一例、感染経路や交通移動ルート等について詳細な疫学調査を実施し、人権侵害につながりかねない恐怖を煽るプレス発表を平然と行っている様は正気の沙汰とは思えない。

 

自治体の保健当局の連中は、一類感染症と五類感染症の違いをそもそも理解しているのであろうか。はしかのような所詮五類感染症については、本体的には社会防衛よりも患者のプライバシー保護のほうが、感染症法の理念に照らし重要性が高いことを認識しているのだろうか。

 

国立感染症研究所による誤ったリスク認知の洗脳を受けてしまった自治体保健所職員が、はしか症例が発生した際、その必要性等について何ら疑問を感じることなく不毛で無駄な追跡調査や広報に職務として全身全霊取り組み消耗している様は、気の毒だし滑稽ですらある。

 

 

今回は、正気の沙汰とは思えない馬鹿げた自治体の対応に関し、基礎自治体広域自治体の間(具体的には、箕面市大阪府)の攻防について、記録に留めるべく紹介しよう。

 

2月13日に、NHKが「「はしか公表しないよう」大阪府池田保健所が病院側に伝える」という2分29秒のニュースを独自ネタ(スクープ)として報じるとともに、Webにも原稿が掲載された。(記事は、この記事の末尾に掲載。ただし、既に公式ホームページからは掲載期限切れで削除されている)

 

記事の内容を簡単に要約すると、「箕面市立病院で1月下旬にはしかの患者が確認され、詳しい状況を公表しようと考えていたところ、大阪府の池田保健所から公表するなと指摘された。ただ、病院側は、広く注意を呼びかける必要があると判断し、周辺の医療機関に情報提供した」ということのようだ。

 

この記事は、一見、中立的な報道を装っているが、麻疹患者発生の事実を保健所が隠蔽しようとした、との批判したい意図があからさまである。NHKの独自ネタ(スクープ)であったこの情報は、共同通信などの報道機関も後追いし(末尾の引用を参照)、池田保健所の対応を問題視する論調が拡散した。

 

そして、10日後の23日夕方には、NHKが続報的に、「大阪箕面市で新たに はしか患者」と題するニュースを報じた。テレビ、ラジオで報道されたかどうかは不明であるが、23日19時38分に、NHKの関西 NEWS WEBに掲載されている(末尾の引用を参照)。

 

この23日の記事の要旨は、「2月21日に受診した患者1名が麻疹と診断され、箕面市の独自判断で公表し、この患者が受診した時間帯に病院を訪問した人たちに注意喚起を行っている。ただし、所管する池田保健所では今回の患者について発表していない」という内容で、13日の記事同様、麻疹患者について情報開示しない保健所の姿勢を批判する意図が行間から滲み出ている。

 

そして、23日夕刻のNHKの記事掲載から遅れること約2時間、同日21時41分には、毎日新聞が「20代男性がはしか感染 大阪・箕面市が発表 保健所は公表断り」と題する追っかけ記事をウェブサイトに掲載している。この毎日新聞の記事は、有料記事の設定なので、一部しか読むことができないが、内容はNHKの記事の単なる二番煎じであろう。

 

記事の内容はさておき、ここで注目したいのは、この毎日の記事を引用して、箕面市の倉田哲郎市長が、次のように二言ツイートしていることだ。

 

 

なるほど。現場の保健所ではなく、大阪府本庁の医療対策課が公表に待ったをかけたのか。箕面市の倉田市長様のツイートのお陰で、箕面市立病院における麻疹患者公表を巡る裏事情が明らかとなったことについては、同市長に心から敬意を表したい。

 

が、しかし、である。情報公開について大阪府本庁の消極的姿勢を非難しつつ、自らの開示姿勢を自画自賛する政治的意図が明らさまであるし、感染症対策の本質について倉田市長は余りにもナイーブだとしか言いようがない。ま、倉田市長は元郵政官僚なので、郵便、電波には精通していても、感染症問題はズブの素人だ。

 

自称行政ウォッチャーでもあるブログ主としては、大阪府本庁において、麻疹について積極的情報開示を控える判断をした実質的責任者が誰なのか、大阪府の医療対策課長なのか、その部下の係長レベルなのか、それとも課長の上司の部長や室長なのか、そして、その責任者は事務官なのか技官(医師)なのか、非常に興味深いところである。

 

ちなみに、ちょっこら大阪府のホームページをググッたところ、現在の課長は、田邉雅章氏。田邉氏は、もともと呼吸器科医師でICD(インフェクションコントロールドクター)でもあったようなので、臨床感染症の専門家だ。大阪府庁に入庁してからも、新型インフルエンザ等対策やエボラ感染症、中東呼吸器症候群(MERS)、デング熱などの対策に従事しており、感染症対策は得意分野のようだ。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3603/00000000/ishi6.pdf

 

感染症対策の経験豊富な医師でもある大阪府医療対策課長自身が、感染症法の理念等に照らして、麻疹ごときに馬鹿騒ぎをするのはナンセンスであると正常な判断力に基づき、麻疹に係る情報公開について慎重な対応を講じたのだろうか。あるいは、麻疹のみならず風疹やインフルエンザの流行続きで疲労困憊状態にある医療対策課や保健所のスタッフの負担軽減を図るため、労務管理の観点から、在阪メディアの沈静化を目指したのだろうか。

 

ともあれ、感染症法の制定経緯や理念、麻疹についての正確な科学的知見を理解すれば、麻疹症例がたかだか一例発生したことで行政が騒ぎ立てることが滑稽至極の愚行であることが判るはずだ。 当面、大阪府医療対策課においては、マスコミや麻疹ワクチン礼賛派医師などから批判が殺到するかも知れないが、これら無知蒙昧なヤカラからの批判に屈することなく、毅然とした対応を続けてほしい

 

 

(参考)2月13日のNHK記事、翌14日の共同通信記事、23日のNHKの記事

 

「はしか公表しないよう」大阪府池田保健所が病院側に伝える
2019年2月13日NHKの1分29秒のニュース)

大阪府内ではしかの感染が相次ぐなか、先月はしかの患者が出た大阪 箕面市の病院が情報を公表しようとした際に大阪府の保健所が公表しないよう伝えていたことが関係者への取材で分かりました。


大阪府内ではことしに入ってからはしかの患者が急増していて、今月3日までのおよそ1か月間に報告された患者の数は38人と、すでに去年1年間の2倍を超えています。


このうち箕面市を含む「豊能地域」では去年12月に旅行先のマレーシアから戻った男性がはしかを発症し、この男性が受診した箕面市立病院などでは、これまでにこの男性を除く13人がはしかにかかっています。


関係者によりますと箕面市立病院が先月下旬、2人の患者が出た時点で詳しい状況を公表し注意を呼びかけようとしたところ、大阪府の池田保健所から「患者が不特定多数の人に接触している状況ではない」などとして、公表しないよう伝えられたということです。


ただ病院側は、広く注意を呼びかける必要があると判断し、周辺の医療関係者に伝えたということです。


池田保健所はNHKの取材に対し「ほかの医療機関に与える影響などを考慮して公表は感染のおそれが不特定多数になってからにしたいと考えた。ただ、保健所には情報の公表や非公表を指示する権限はなく、公表を拒否したつもりはない」と説明しています。


専門家は、はしかは感染力が強いため速やかに情報公開する必要があると指摘しています。


感染症対策に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「詳しい背景が分からないのでよしあしは判断できないが、感染症は、まだ感染していない人にできるだけ早く注意を呼びかける必要がある。また、医療機関にも状況を早く伝えないといけない。どのような状況ならどの程度の情報を公表するのか事前のルール作りが大切だ」と話しています。

 

保健所がはしか発生病院公表せず 大阪・池田、「追跡できる」
2019/2/14 12:27 2/14 14:02updated
©一般社団法人共同通信社

 はしか患者が出た大阪府箕面市箕面市立病院から公表するかどうか1月下旬に問い合わせを受けた池田保健所(同府池田市)が「患者が接触した先が不特定多数ではなく、個別の調査で追跡できる」と返答し、非公表にしていたことが14日、取材で分かった。同保健所は「対応に問題はなかった」としている。


 はしかは感染力が非常に強いとされる。同病院では既に複数の患者が出ており、感染が広がっていると判断。病院自ら箕面市内の他の医療機関に対し情報提供した。


 池田保健所のホームページでは2月8日付で住民へ注意を呼び掛けているが、エリアや医療機関の内訳は明らかにしていない。

 

大阪箕面市で新たに はしか患者
02月23日 19時38分(NHKの関西 NEWS WEB)

21日に大阪・箕面市の市立病院を受診した男性患者1人が「はしか」と診断され、箕面市では同じ時間帯に病院を訪れた人たちに注意を呼びかけています。


箕面市立病院によりますと、2月21日に高熱が出るなどして病院を受診した箕面市の男性1人が「はしか」と診断されたということです。


この男性は数日前から高熱が出ていて、当初、別の診療所を受診したあと箕面市立病院に来たということで、症状が重いため入院していますが、今は快方に向かっているということです。


このため箕面市立病院は、21日午前10時から午後1時の間に病院を訪れた約400人に、注意を呼びかけるお知らせを送ったということです。
所管する池田保健所では今回の患者について発表していませんが、箕面市では広く注意を呼びかける必要があるとして、独自に公表したということです。


「はしか」は最初は発熱やせきなどかぜのような症状で、その後、発疹が出るということで、箕面市や病院は、はしかを疑う症状があれば事前に医療機関に連絡して速やかに受診してほしいとしています。

 

 

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