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女性記者セクハラ被害事件簿 第24号(朝日新聞の社内セクハラ事例を通じ、同社の体質を考える)

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 (写真は、週刊文春の記事とは直接関係ありません。詳細は、【ブログ主のコメント】をお読みくだされ)

 

 

 【加害者】朝日新聞論説委員(経済担当)の男性

 

【被害者】朝日新聞経済部の女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊文春』2018年5月31日号(5月23日発売)が報道

 

【事案の概要】

朝日新聞社の社内で、上司が女性記者にセクハラをした疑い事例があるということを同社関係者から聞きつけた週刊文春が報じた。本年3月、経済部の歓送迎会が開かれた。女性記者は幹事の一人で、その後、男性の上司とバーに流れた。朝日新聞の中堅社員が証言する。

 

「そこで上司は女性記者に無理やりキスを迫り、自宅にまで上がりこもうとしたそうです。女性記者は、後日、被害を同僚記者らに打ち明けたとか」

 

その後、上司は経済担当の論説委員となり、以前と変わらず働いているという。

 

文春が女性記者に取材を申し込むと、「ごめんなさい、広報を通していただけますか」。上司の男性は「それは広報に聞いて頂けますか」との回答であったという。

 

文春が朝日新聞広報部に確認を求めると、次のような回答であった。

 

「ご質問いただいた個別の案件につきましては、お答えを控えます。当事者の立場や心情に配慮し、保護を優先する立場から、ご質問にお答えできない場合があることをご理解下さい」

 

【ブログ主のコメント】

まず最初に断っておくが、ブログ主は朝日嫌い、朝日憎しの立場の者ではない。むしろ、朝日新聞は、トータルに判断すれば、比較的まともな新聞社だと思っている。正直言えば、ブログ主が知り合いの朝日記者にこっそり提供したネタが、朝日新聞の3本社(東京、大阪、西部)版全てで1面アタマを飾ったことも何度かある。それ位、ブログ主は朝日のよき理解者であると自認している。

 

だけれども、2週間前に、週刊文春に報じられた社内セクハラの一件は余りにもイタダケナイ、というか情けな過ぎる話だ。広報が「当事者の立場や心情に配慮し、保護を優先」てな発言は、見事なまでの最悪の広報対応だ。

 

朝日新聞』2018年5月3日の紙面で、東京編集局長補佐・藤原泰子氏(元人事部ハラスメント担当)が、「セクハラ問題、朝日新聞はどう対応する」という記事で、次のようなことを書いている。

 

朝日新聞社は1999年にセクハラ防止規定を整備。2013年にはハラスメント対応などの事案を専門的に担当する専従チームをおいています。社外からのセクハラに具体的に行動を起こし、それを報じたケースもあります。

 

保健師や外部相談機関などの窓口も用意され、社内の研修を進めています。また、半年ごとに会社に提出する書類で、上司に知られず人事部に相談できる仕組みもあります。社内向けハンドブックでは「セクハラを我慢してまでとってこなければならない契約もネタも本社にはありません」と宣言しています。

 

過去の具体例にあがったケースは、相談を受けていたら、当然会社としてきちんと対応する事案です。 しかし、座談会で話が出たように、それでも窓口への相談をためらう人たちが少なくないのが課題です。1月下旬の本紙フォーラム面の「#MeToo」特集で、メディアで働く人たち191人に聞いたアンケートでも、セクハラに遭ったことがあると答えた119人中7割近くが誰にも相談しなかったと答えています。

 

朝日新聞の記者のうち女性は2割ですが、最近は新人記者の半分近くは女性です。「権力取材」の場から女性を排除することはありえません。

 

また、非公式の場での1対1の取材は、公式発表が真実かを検証し、隠されている不正や背景を明らかにするために必要な手段の一つ。情報源の秘匿は、男女問わず大事なルールです。

 

そういうときに、セクハラから身を守るノウハウをどうやって共有するか。被害相談のハードルを低くし、上司が相談をきちんと受けとめる環境をどうつくるか。会社としても重い課題として取り組むとともに、セクハラを許さない社会にするために、世の中の意識を変えていくきっかけにしたいと考えています。

 

おいおい、元人事部ハラスメント担当が紙面で大見栄切っていることと、週刊文春が報じた社内セクハラへの対応とでは、まるっきし正反対ではございませんか。大人の社会には、オモテとウラ、ホンネとタテマエというものがあって、オモテのタテマエ論の綺麗ごとが、リアルワールドでは通用しないことは当たり前ではござりまするが、それにしても、この2か月間、セクハラ問題が大きな社会問題となり、社会正義を標榜し、セクハラに甘い社会、企業体質を厳しく追及してきた急先鋒の朝日新聞自身が、社内セクハラを放置するという最悪の杜撰な対応をしているという、笑い話にすらならない現実。

 

女性記者セクハラ被害事件簿第23号で取り上げたように、西日本新聞では、送別会の後、後輩女性記者にキスをした男性記者に対し出勤停止10日間の懲戒処分を下している。今回の朝日の論説委員は、後輩女性に無理やりキスを迫っただけでなく、自宅にまで上がりこもうとしたというではないか。西日のキス魔よりも、朝日の論説委員のほうが更に悪質だ。なのに、一切お咎めなし!?

 

本件セクハラをもって、一部のネトウヨが主張するように社長がクビになるような話ではないと思う。だけど、セクハラ加害のオッサンが、何ら処分を受けることなく、毎日、ノウノウと論説会議に参加して社論を決める議論に加わり、そのことに他の論説委員のオッサン、オバハン達の誰も異議を唱えない状況って、今どきのまともな大企業では考えられないことだ。

 

セクショナリズム官僚主義がはびこる朝日新聞のことだから、経済部出身の論説委員に処分を下せば、政治部-社会部-経済部の3部間のパワーバランスが崩れるのでこれを回避することを最優先するという、部外者には全く意味不明のウチワの理屈でもって、関係者に口封じをしてホトボリが冷めるのを待って水に流そう、という魂胆なのであろう。

 

一時期、慰安婦問題で保守反動勢力から叩かれまくった朝日新聞ではあるが、最近は「ノーと言える朝日新聞」をキャッチフレーズに、朝日新聞を中傷する記事に対しては徹底的に法廷闘争に持ち込む強気の経営戦略をとっているらしい。

 

でも、保守反動勢力に対してノーと言うことは当然大事だけど、それ以前にセクハラに対してノーと言える社内環境を整備しなければ、(ブログ主もその一人である)リベラル勢力からもソッポを向かれちゃいますよ。朝日さん。

 

繰り返すが、ブログ主は決して朝日嫌いではなく、むしろ朝日シンパであるが、東京編集局長補佐・藤原泰子氏(元人事部ハラスメント担当)の署名記事に触発されて、おいおい、と言いたくなる事例をオマケとして2例付記しておこう。

 

まず1例目。元朝日新聞記者の秋山千佳氏が、4月17日、フジテレビの番組に生出演し、福田次官のセクハラ発言疑惑についてのコメントとして、新人時代に取材相手からセクハラ被害に遭い、会社の先輩に相談したものの、「我慢しろ」と言われたと告白をしている(冒頭の写真は、秋山氏の告発を取り上げたテレビ番組のシーン)。

 

秋山氏の発言内容を再現すると、「取材相手に突然胸をわしづかみにされ、社に戻って男性の先輩に相談したところ、『これくらい我慢しろ』といわれてしまった」「(当時)その場ではショックで何も言えない。とても受け止められなかった」「私の場合は、ほかの会社の先輩記者に相談して解決を図っていった」とのこと。

 

本件の事実関係等ついて、夕刊フジ朝日新聞広報部に照会したところ、秋山氏の9年間の在籍を認めたうえで、「お問い合わせいただいた番組中のご発言については詳細を把握しておらず、コメントいたしかねます」「なお、弊社は『セクシュアル・ハラスメントの防止に関する規定』を定めており、従業員から被害の申し出に対しては、会社として適切に対処しております」との回答であったようだ。お役所そっくりの見事な官僚答弁だなぁ。。

 

次に2例目。女性記者セクハラ被害事件簿第16号で取り上げた事例であり、事案の詳細に関心があれば第16号の記事を読んでいただきたいが、2008年夏の高校野球選手権の最中の出来事。優勝校である静岡の常葉菊川の選手が、甲子園出場のための宿泊中のホテルで、主催社たる朝日新聞の若手女性記者に公然わいせつ行為を働いたのだ。この事例も週刊文春の報道によって発覚したが、この時の朝日新聞社の対応も、藤原泰子氏の言っていることは真逆の事なかれ主義に徹した対応であった。

 

【本ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

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・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/08/194300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/20/204300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/19/120000

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が、朝日と毎日の女性記者にしでかしたこと

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

 

・女性記者不倫事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/06/03/194500