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女性記者セクハラ被害事件簿 第19号

【加害者】神奈川県警小田署副署長の警視(53歳)

 

【被害者】全国紙の女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

神奈川新聞が2015年6月30日に報道

 

【事案の概要】

 神奈川県警小田署副署長の警視(53歳)が、全国紙の女性記者と酒を飲んだ際、体を触るなどのセクハラ行為をした。

 

【顛末】

副署長は、6月26日付けで、減給100分の10(1カ月)の懲戒処分を受けた。県警は「公表基準に該当していない上に、関係者からの強い要望がある」として処分した事実を公表していなかった。

 

副署長自身は、6月に入ってから出勤しておらず、30日付で「体調不良」を理由に依願退職した。

 

 

【ブログ主のコメント】

またもや、50代の警察幹部による女性記者へのセクハラ事例である。警察関係者による同様のケースは、このブログの連載で繰り返し繰り返し紹介してきた(参考:女性記者セクハラ被害事件簿第1号秋田県警本部長、第2号広島県警署長、第3号石川県警巡査部長、第6号北海道警察署長、第8号高知県警巡査長、第10号大阪府警副署長、第11号京都府警警備3課長、第13号長崎県警捜査2課長、第17号で警視庁広報課の警部が加害者の事例を取り上げてきた)。

 

おそらく、警察取材の現場では、ポリ公から女性記者へのこの手のセクハラは日常茶飯であり、表沙汰になるのは氷山の一角に過ぎないと考えるべきであろう。本件も、神奈川新聞が報じなければ(あるいは後述のとおり、出稿が1日遅れれば)明るみに出ることなく、葬り去られていた可能性が高い。

 

ちなみに、本件セクハラが発生し、明るみに出た時期、神奈川県警小田原署管内では重大事件が相次ぎ、現場のお巡りさんたちは混沌状態にあった。

 

というのも、同署管内では、湯河原町で2か月前の4月21日に放火殺人事件が発生。さらに、5月6日には箱根山の噴火警戒レベルが1から2に引き上げられた。殺人事件の捜査に、噴火対応で関係行政機関や住民対応などに追われる中、多数の報道関係者が同署に押しかけ、署内は戦場さながらの緊迫した状況にあったと想像できる。

 

そのような中、特ダネをゲットしようと副署長に接近した女性記者が、酒の誘いに応じたところ、セクハラ被害にあったということなのだろう。で、女性記者が上司に相談し、上司が警察側に抗議し、加害者が処分される、という高知県警の2000年の事例(本連載第8号記事参照)以来のパターンを辿ったものと推測される。

 

本件は、関係者が公表を望まなかったので非公表とされていたが、警察署の広報官たる副署長が来る日も来る日も欠勤が続いていることに疑問を感じた地元紙・神奈川新聞が感づいて複数の県警幹部に当たり、記事化されたのだろう。

 

そして、6月30日朝、神奈川新聞が報道し、各社が追っかけ取材に勤しんでいる最中に、次なるスーパー大事件が発生した。同日午前11時半頃、新横浜-小田原間を走行していた東京発新大阪行き「のぞみ225号」の先頭の1号車で、71歳の男が、ガソリンをかぶりライターで火を着け焼身自殺し、車内で火災が発生したのだ。いわゆる「東海道新幹線火災事件」である。さらに同日、箱根山が爆発的噴火を起こし、噴火警戒レベルが3に引き上げられた。

 

もし、今回のセクハラ事案について、神奈川新聞が6月30日の朝刊で報じていなければ(すなわち、出稿が1日遅れていれば)、新幹線火災事件や箱根山噴火関連報道ラッシュが続く中で、本件セクハラ事案ごときは時機を逸してお蔵入りになっていた可能性が高いと思われる。物事はタイミングというものが重要である。

 

【出典】

・『神奈川新聞』2015年6月30日朝刊

・『産経新聞』2015年6月30日ネット配信記事

・『NHK』2015年6月30日ネット配信記事

 

【予告】

次回は、岩手県の某町長から地元紙女性記者が受けたセクハラ事例を取り上げる。