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社会ノマド、社会の窓、流浪しながら漂泊する社会を見つめます

女性記者不倫事件簿 第1号(後編)(今話題の川村昌代氏の過去の疑惑)

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昨日の女性記者不倫事件簿 第1号(前編)では、『週刊現代』2007年1月27日号の「財務省エリート主計官と朝日新聞美人記者の不倫生活」と題する記事において、当時、財務省の主計官であった中川真氏が、週刊誌『AERA』の女性記者Aと深い関係にあると報じられていたこと、そして、中川氏のその後の経歴を提示し、現在は内閣審議官にまで登り詰めているいることを明らかにした。

 

今回は、昨日の続編として、もう一人の当事者である女性記者に焦点を当ててみる。

 

まず、最初に断っておきたいが、筆者は、基本的に個人情報を暴くことを好む悪趣味な人間でない。個人のプライベートは最大限配慮すべき、と考える常識人である。なので、当初は、『週刊現代』2007年の記事で、中川氏と昵懇であると報じられた女性記者Aが、具体的に誰であるかを明らかにすることは控えようと思っていた。

 

だけど、今週発売の『週刊現代』2018年6月2日号の記事を見て衝撃を受け、考えを改めた。女性記者Aの実名をきちんと取り上げるべきだ、と。

 

【『週刊現代』の2007年と2018年の二つの「朝日美人記者」に関する記事】

 

週刊現代』2018年6月2日号の右トップ記事(新聞の一面アタマに該当し、週刊誌が一番目玉と位置づける記事)のタイトルは、「元朝日美人記者が実名告白 「『エロ親父』福田が怖くて、記者が務まるか」。この元朝日美人記者の名前は本文中に出てくるが、川村昌代(51歳)。

 

実は、『週刊現代』2018年6月2日号で、「『エロ親父』福田が怖くて、記者が務まるか」と熱弁をふるっている女性記者、川村昌代氏こそが、な、な、な、なんと、11年前に同じく『週刊現代』2007年1月27日号で財務省主計官中川真氏との特別な関係が取り上げられた女性記者Aの正体なのである!!!

 

 財務省主計官中川氏と女性記者川村氏の2人が、2007年1月9日午後1時半すぎ、川村氏の自宅から楽しげに出てきたところを『週刊現代』が直撃インタビューし、若干言葉をやり取りしているうちに、突然、中川氏がフラと倒れかかって気を失い、救急搬送されたことは前回、昨日の女性記者不倫事件簿 第1号(前編)で取り上げたとおりである。

 

中川氏が病院に救急搬送された後、女性記者A(川村昌代氏)と『週刊現代』記者の2人が現場に残され、取材は続く。

 

-前にも、中川氏と不倫騒動を起こしていますね。

 

A「え~と、それは、誤解されるようなことがあったことはありました。でも、あちらの家のややこしいことに巻き込まれないように、私は中川さんに一筆書いてもらったんです」

 

-不倫じゃないと、一筆書いてもらった?

 

A「そうです。中川さんが、みっともないので返してほしいと言うので、原本は返しましたけど、私も訴訟を起こされたくないので、コピーをとってますよ」

 

-それにしても、取材を受けるために財務省の高官が女性の自宅を訪問するのはおかしい。

 

A「私がお願いしているわけじゃないですよ」

 

-中川さんの一方的な行為で来てくれた?

 

A「そこまでは知りません」

 

-あなたの行動は先日、朝日が発表した記者の行動基準に違反しませんか。

 

A「私、朝日新聞の社員じゃないし」

 

-記者なのだから、基準に拘束されるでしょう。

 

A「拘束されないですよ。行動基準なんて、私見たことないもん」 

2007年当時に、『週刊現在』にプライベートを詮索され、同誌に良い印象を持っていないのではないかと思われる川村昌代氏が、11年後には、『週刊現代』に実名で登場し、政治家と女性記者のセクハラ関係について熱く語っているのは、何とも摩訶不思議なことだ。

 

【ジャーナリスト川村昌代の経歴、人なり】

ここで、女性ジャーナリスト、川村昌代氏の経歴について、インターネット上のオープン情報を基に見てみよう。

 

静岡生まれの愛知県名古屋市育ち。名城大学卒業後、「中部経済新聞」や「月刊時評」、ロイター通信、「週刊文春」や「週刊朝日」、「AERA」の記者などを歴任しているようだ。

 

中部経済新聞」に在籍していたときに受けたセクハラについて、川村氏は、『週刊現代』2018年6月2日号でこう語る。

 

地方の県庁の幹部でしたが、「僕、今日車で来たから送ってあげるよ」と言う人がいました。乗ったらホテル街のほうにどんどん走っていく。おかしいと思って道路のど真ん中でサイドブレーキ引いてやりましたよ。「何するんだ、君!」って言われたけど、「あんたが何してんだ」って言い返しました。そのおじさんはそれからずっとネタをくれるようになりましたけどね。

 

伝説の名編集者花田紀凱氏が『週刊文春』の編集長時代、同誌の専属記者として官庁担当をしていた川村は、数々のスクープを連発し、「四天王の一人」と評されていた。花田氏が去った後、川村も『週刊文春』を去り、週刊朝日に転籍した。

 

2010年5月26日には、川村は、似たキャラの同業者、横田由美子氏と一緒に喜納昌吉ライブにトークゲストとして登場し、沖縄既知移設問題と官邸の裏側をテーマに対談をしているようだ。

 

2017年2月4日に川村は、花田紀凱(元「週刊文春」編集長 現「月刊Hanada」編集長)、元木昌彦(元「週刊現代」「フライデー」編集長)、今西憲之(週刊現代、新潮、朝日などで活躍するフリー記者)、山口一臣(元「週刊朝日」編集長)が司会を務めるニコニコ動画の番組に出演し、「文春砲」の功罪をテーマに討論している。このメンバー構成からも、ジャーナリズム業界における川村の大物ぶりを伺い知ることができる。

 

このように女性ジャーナリストとして業界内で定評のある川村氏であるが、一度、衆院選に出馬した過去がある。2011年4月24日に投開票が行われた衆議院愛知6区補欠選挙で、川村は、河村たかし名古屋市長が率いる地域政党減税日本」から出馬した。川村氏は、河村市長とは十数年前に取材を通じて知り合い、同年2月に出馬を打診されていたという。

 

選挙期間中に、財務省主計官との不倫問題がクローズアップされるなど対抗馬からのネガティブキャンペーンにさらされ、結局は、大きな点差がついて自民党候補に敗北したのであった。

 

ちなみに、川村氏は、Jazz Vocal業界でも名が知られているらしく、ブラジル音楽好きで、夜な夜な六本木あたりのジャズ屋に出没しているとの情報もある。

 

【ブログ主のコメント】

以上、前置きが長くなってしまったが、ここからが本論である。

 

週刊現代』2018年6月2日号の記事の中で、川村氏は、15年前に福田淳一前財務次官と飲んだことがあり、その際、足フェチの福田氏に足を見せたらパクっとかじりつかれた過去があると語る。川村が「くっさ!!」と叫ぶと、二人とも爆笑してその場は終わり。福田前次官とは、今では男女を超えた人間同士の良い関係だと指摘した上で「あんなエロ親父が怖くて記者が務まるかっての。」「ネタはもらいに行くものじゃなくて取りに行くもの」と持論を展開する。

 

このブログ記事の中で、川村氏も主張をもう少し詳しく紹介しようと思っていたところ、今ほどジャスト・タイミングで、プレジデントオンラインに、「記者歴30年で見えた本当のセクハラ 「福田発言」を叩いても女は浮かばれない」」と題する川村昌代氏のコラムが掲載された。『週刊現代』での発言と同趣旨の内容であるが、興味があれば、こちらに目を通すことをお勧めする。

 (参考)プレジデントオンラインにおける川村氏の2018年5月23日付コラム

    http://president.jp/articles/-/25193

 

川村氏が言いたいことは、「女性記者たるものセクハラに耐え、それを逆手にとってネタを取るべし」「セクハラごときでくじける女は記者として失格。女は強くあらねば」ということのようだ。「女性記者たるものセクハラに耐え、それを逆手にとってネタを取るべし」との発想の行き着く先は、「女の武器を最大限利用して、ネタを取るべし」「ハニートラップを仕掛けよ」というラジカルな取材姿勢に帰結する。とすれば、11年前の財務省主計官中川真氏との不倫が疑われる関係も、彼女にとって自らの基本的価値感に照らせば何ら恥じるものではないのであろう。

 

ともあれ、「女性記者たるものセクハラに耐え、それを逆手にとってネタを取るべし」という川村氏の主張は、福田淳一前財務次官によるテレ朝女性記者に対するセクハラ発言を巡る報道を契機として盛り上がる「#Mee Too」運動や反セクハラ運動に水を差す怪しからん見解だと、今後、論壇では批判が集まることが予想される。

 

しかし、筆者は、論壇の優等生的な連中と同じような高い位置から、川村氏を糾弾する意図は全くない。筆者の見解は正反対だ。川村氏は、「強い」女だからセクハラにくじけることなく女を武器に使っているのではない。確かに、彼女は、容姿とコミュニケーション能力に恵まれ、女性ジャーナリストとしては優位性が高かったのは事実である。

 

だけど、彼女は、大手マスコミの正社員ではなく、契約記者という社会的に弱い立場の記者である。会社の後ろ盾のある大手マスコミのぬるま湯につかった正社員記者とは異なり、社会的弱者の契約女性記者は、喰っていくためには、露骨な接触型セクハラにも耐え、女の武器を最大限活用してアグレッシブな取材を展開するしか道はない。

 

週刊誌の契約記者という弱い立場の記者にとっては、記者クラブ制度の特権を享受し、会社にも守られ、しかも高給取りの新聞社やテレビ局の正規雇用記者にジェラシーやコンプレックスを抱くこともあるだろうし、正規雇用の女性記者がちょっとした非接触型セクハラにあってベソをかいている現状に「甘ったれるんじゃねえよ。こっちは裸一貫で、まさに体を張って命賭けでネタを取ってるんだぜ」と憤りを感じるのは無理もなかろう。

 

 このブログの第1号記事「セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業」において、筆者は次のような文章を書いた。

 

少なくとも大手マスコミの正規職員の女性記者には、露骨なハニートラップを仕掛ける記者は存在しない。そこそこルックスが良く、大手マスコミの記者とあれば、体を差し出さなくても、おじさん達は、口が軽くなってポロリと内密情報をしゃべってしまいがちである。(中略)

 

その点、契約記者やフリー記者は、組織の後ろ盾がないため、専門性を売りにするかスクープを連発しなければ生き残っていけない。メディアの世界の熾烈な生存競争を勝ち抜くため、女の武器を活かして枕取材を仕掛ける女性記者が出現する。ともあれ、ハニートラップで愛のない関係を築ける女性記者は、得てして上昇志向や芯の強い野心家である。

 

この文章は、川村氏のような具体的な人物を想定して書いたものではなかったが、改めて読み返すと、まさに、川村氏のような契約記者のリアルを言い当てているではないか。

 

今週販売の『週刊現代』や『プレジデントオンライン』におけるセクハラ問題に係る川村氏の「毒を吐く」ような強烈な自己主張は、自らの発言がジャーナリズム論壇で批判を集め、自らの知名度が上がることを期待しての確信犯的売名行為であろうと推察される。

 

さらに言えば、『週刊現代』2007年1月27日号における財務省主計官との不倫疑惑報道は、もしかすれば、川村昌代氏の自作自演ではなかったのか、という気もしてくる。高級官僚との不倫疑惑が報じられて自らが被害を被るディメリットと、不倫疑惑が報じられることによりジャーナリズム業界における自らのプレゼンスが上昇し、かえってジャーナリストとしての評価が高まるメリットを比較考量し、後者の可能性が高いと緻密に計算した上で、週刊現代にこっそりネタを売り込んだのではないか、と。

 

ということで、ジャーナリズムの世界における正規雇用記者と契約記者・フリー記者の「格差社会」の歪んだ構造から、時として女性記者と取材対象者の間のハニートラップ、不倫疑惑が生起するのだ、という問題提起をして稿と閉じる。

 

【本ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/08/194300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/20/204300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/19/120000

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が起こしたセクハラ事件

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

女性記者不倫事件簿 第1号(前篇)

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一昨日まで、本ブログでは、連載企画「女性記者セクハラ被害事件簿」において、女性記者がセクハラやわいせつ事案の被害者となった20の事例について紹介してきた。セクハラやわいせつ事案とは位相が異なるものの、下半身トラブルという広義のカテゴリーでは共通する不倫問題も、女性記者を巡ってしばしば週刊誌などで報じられてきた。

 

今回からは、女性記者が当事者となり、過去に報道された不倫事案について振り返ることにより、マスコミの構造的課題について改めて考えていきた。

 

まずは、2007年1月に発覚した、財務省主計官と『AERA』契約記者の関係にまつわる事例から連載を開始する。

 

【男】財務省主計官の中川真氏(47歳)(当時)

 

【女】週刊誌『AERA』契約記者(40歳)(当時) 

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊現代』2007年1月27日号が大きくスクープ報道した

 

【事案の概要】

クリスマスイブ前日の12月23日午後9時過ぎ、東京・港区のマンションの玄関から、一組のカップルが出てきた。ミニチュアダックスフントの紐を、男性が握っている。夫婦か、恋人同士のような親密な雰囲気だ。二人は表通りでタクシーを拾い、約2時間半後の深夜零時過ぎに帰ってきた。そしてそのまま一緒に部屋に入っていった。

 

二人は、その5日前にも一緒にいた。港区内のイタリア料理店で、何人かのグループでビールやワインを飲んで盛り上がり、午前1時過ぎに解散したあと、二人は10分ほど歩き、やはり彼女の部屋に消えたのだ。

 

「中川さんとAさんは2年ほど前にも不倫騒動を起こしているのです。このとき中川さんは大変な家庭争議になったんですが、Aさんとは連絡をとらないと約束し、奥さんに許してもらった。しかし実際にはいまも関係は続いていたのです」(財務省関係者)

 

 これは、『週刊現代』2007年1月27日号の「財務省エリート主計官と朝日新聞美人記者の不倫生活」という見開きの大きな見出しの記事の冒頭部分の引用である。

 

登場人物の二人とは、財務省中川真主計官(47歳)(当時)と、朝日新聞社が発行する週刊誌『AERA』の女性記者A(40歳)である。『週刊現代』の記事を基に、二人の経歴等について、さらに紹介する。

 

中川氏は、東大法学部を卒業後、1983年に旧大蔵省に入省。主流派である主計畑を歩み、「同期でも出世レースの3~4番に入る」と評されている。篠沢恭助・元大蔵事務次官(現・国際協力銀行総裁)の娘を娶り、毛並みもいい。

 

中川氏は当時、国家予算全体の調整権限を有する主計官の1人。計9名の主計官はそれぞれ担当省庁を受け持ち、中川氏は文部科学省などを担当、扱う額は文部4兆、科学1兆の計5兆円であった。『産経新聞』のインタビューに「主計官として私は文科省という連合艦隊の総司令官だという気持ちが必要ですね」と権力者意識丸出しの発言をしている。

 

一方、女性記者Aは、夕刊紙や週刊誌などのナンバー・ワンのスクープ記者として活躍した後、2005年にAERAへ契約記者としてトラバーユしてきた大物記者で、財務省をはじめ霞が関を主な取材の舞台にしていた。

 

当時は、政権交替前の自民党政権下で安倍総理の治世であったが、同じ時期に、政府税調会長の本間正明氏が、官舎に愛人と同棲していたことが発覚し、辞任に追い込まれていた。『AERA』2007年1月1・8日号には「ボロボロ税調 本間で安部が自滅する」という見出しで、財務省関係者の証言を基に、本間氏の旅費が二重払いされていたという記事が掲載されている。この記事の執筆者の一人がA記者であり、『週刊現代』の記事では、断定調ではないが、この証言をした財務省関係者が中川氏である可能性を暗にほのめかしている。

 

中川氏は2007年1月9日、朝からA記者の家を訪問しており、午後1時半すぎ部屋から楽しげに姿を現した2人を、『週刊現代』が直撃インタビューした。

 

-お二人はどういう関係ですか。

 

中川「まあ友人ですけど」

 

A「調べてもらえばわかりますが、いろんな人が私の部屋には来るんですよ」

 

-12月23日に中川さんが深夜訪ねていますね。

 

中川「でもその日はすぐ帰りましたよ」

 

A「いろいろ彼女の取材のお手伝いをしてるんです」

 

こんなやりとりをしていると、突然、中川氏がフラと倒れかかって気を失い、救急搬送されたのであった。

 

 

【ブログ主のコメント】

 『週刊現代』の記事は、不倫疑惑を本旨としたものではなく、「これは“西山事件”に匹敵するスキャンダルだ」という中見出しを掲げ、本質的な論点は、国家公務員の守秘義務違反により国益が損なわれうる重大疑惑である、という論調であった。

 

西山事件」やら、高級官僚・政治家と女性記者の「ハニートラップ」の問題については、後日の記事の中で取り上げる予定であるので、今回は深入りしない。

 

今回のコメントとしては、両人のその後の軌跡について触れることにする。

 

 まず、中川真氏。

 

2007年7月13日 近畿財務局総務部長

2008年7月4日 財務省大臣官房付

2008年8月1日 国際通貨基金に出向

2010年7月24日 財務省大臣官房付

2010年7月26日 国際復興開発銀行に出向

2014年7月12日 大臣官房審議官

2016年6月17日 内閣官房に出向

(内閣審議官    

   兼 まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補

   兼 新国立競技場の整備計画再検討推進室総括審議官)

 

(出典)中川氏の経歴については、「スワンの夢」という謎のホームページを参考にさせていただきました。

http://www.dreamswan.com/Aflac01/P/Fsa/Mof/N01/Nakagawa-Makoto.htm

 

いかにも出来過ぎた感のある経歴は絶句ものだ。

 

不倫報道により政権の足を引っ張り、半年後には、事実上の左遷人事(?)で、森友問題で注目をあびたところの近畿財務局に出向。1年後に大阪から東京に戻った後、未だホトボリが冷めていないと判断されたのか、本省では勤務させてもらえず、計6年間、国際機関を2カ所渡る。

 

2014年夏、ようやく禊ぎが済んだのか、本省で審議官に就任。本省での仕事ぶりが評価されたのか、2016年には、内閣官房に出向して内閣審議官に着任。内閣官房ではいくつかの業務を分掌しているようだが、「新国立競技場の整備計画再検討推進室」では、「総括審議官」として、実質的に事務方のトップを務めている。

 

新国立競技場といえば、2012年11月にザハ・ハディドキールアーチ(流線型デザイン)が選定され、基本計画に着手し施工業者も決まっていたものの、総工費が当初計画を大幅に上回ることが判明するなどトラブルが続き、結局、ザハ案は2015年7月に白紙撤回となった。その後、再コンペがなされ、2016年6月、当初計画より1年強遅れで基本計画がまとまった。中川氏が総括審議官に着任したのは、白紙撤回、再コンペの混乱がひと段落し、本格的に工事がはじまる時期であった。

 

で、中川氏は、「新国立競技場の整備計画再検討推進室」では事務方のトップの地位にあるが、この推進室には組織上、彼には3人の上司が存在する。組織のトップは、杉田和博内閣官房副長官(安部政権権力中枢官僚序列No.2、警察官僚)、ナンバー2は、和泉洋人内閣総理大臣補佐官(安部政権権力中枢官僚序列No.3、建設官僚)、ナンバー3は、古谷一之内閣官房副長官補(安部政権権力中枢官僚序列No.5、財務官僚)、中川氏はその下に位置する。

 

ところで、新国立競技場の白紙撤回・再コンペ騒動の裏では、官邸と文部科学省が熾烈な権力闘争を繰りひろげていたことは有名な話だ。文部科学省が推進していたザハ案の計画を潰し、再コンペを推進した司令官が和泉洋人補佐官で、その官邸の方針に全力で抵抗したのが文部科学省の前川喜平事務次官であった。そう、出会い系バーに出入りしていたことを読売新聞に掲載され、そのことにブチ切れ、加計問題で政権批判に転じクビになったあの前川氏である。そして、前川氏の出会い系バーへの出入りをキャッチし、読売新聞に報道させた黒幕が、杉田和博副長官である。

 

10年前に、不倫騒動で安部政権の足を引っ張り、一旦、経歴にバツのついた中川氏であったが、主計官として文部科学予算を牛耳った経験があり、文部科学省に睨みが利くことから、政権の最重要案件の一つであるオリンピックメインスタジアムの整備計画の事務責任者として抜擢され、絶対権力者たる杉田和博副長官、和泉洋人補佐官両氏の意向を汲みつつ手腕を発揮しているのであろう。

 

ちなみに、中川氏の数年先輩にあたる福田淳一事務次官のご夫人は元文部事務次官、の高石邦男の長女であるが、二人の恋のキューピットを務めたのは、中川氏の義父にあたる篠沢恭助氏(元大蔵次官)である。さらに付言すると、前川喜平氏の16代前の文部事務次官にあたる高石氏は、1989年リクルート事件に関する収賄罪容疑で逮捕され、2002年最高裁判所で懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金2270万円が確定した人物である。

 

なんとも奥の深い官僚組織であるが、それにしても、元大蔵次官の篠沢恭助氏は、自分の娘のダンナ(中川氏)が不倫騒動を起こし、また、自分が夫人を紹介までした18代後の財務次官、福田淳一氏がセクハラ発言で失脚した現実をどのような境地で見ているのだろうか。

 

【予告】

今回は、不倫疑惑の片方の当事者である財務省中川真氏の紹介だけで分量が多くなってしまい、「女性記者不倫事件簿」という表題からは逸脱している感も否めないが、次回は、本論に回帰し、もう一人の当事者である、週刊誌『AERA』契約記者Aの正体に迫ります。

 

まもなくブログ開設1か月!

ブログ主は、ITやSNSの類が超苦手の40代。もともと放浪癖のあるノマド気質の人間であるが、最近、妻子から構ってもらえなくなったので、このところフラリーマン生活を続けていた。これまでブログなんぞに全く無縁であったが、新たな趣味にでもハマろうと始めたのがこのブログである。

 

ITオンチでありデザイン力も低いので、ブログのデザインの見栄えはパッとしないが、その分、中身で勝負、独自の視点で社会問題、社会現象について綴っていこうと発起して書き始めてから、まもなく1か月が経過する。

 

ブログを始める以上、ある程度、人様に読んでいただきたいというある種の顕示願望はあるが、一方で身バレしたくないので、知人などには一切周知していない。売名のための派手な広報を打つつもりもないし、ブログ村などにも登録していない。SEO対策なる概念の知識も乏しいし、そんなことに労力を割くつもりもない。

 

プロの評論家や著名人のブログならいざ知らず、どこの誰が書いているのか得体の知れない謎の新参者の雑文なんぞに目を通してくれる人がいるのだろうか、と思いつつ、とにかく好き勝手書き綴って、どこからかブログにたどり着いて読んでくれる人がいればいいだろう、ぐらいの気持ちで1か月ほどやってきた。

 

4月23日に最初の記事をアップして以来、昨日までの26本の記事を載せてきた。26本のうち、24本は女性記者を話題としてもので、残り2本は麻疹(はしか)の流行に関する自論を展開している。

 

他にも発言しようと思う社会問題、社会現象は多々あるけど、小生はひとつの事柄にハマると病み付きになりやすい性格であり、このところ、女性記者問題に没頭している訳である。

 

ハデに目立つもりは毛頭ないが、ブログをやっている以上、当然、社会的評価はある程度気になるところである。なので、googleの検索で、自分のブログ記事がどの程度ヒットするのか、先ほど確認してみた。

 

女性記者問題についてのgoogleヒット状況

 

まず、女性記者問題について。ブログを始めた時期がちょうど、財務省の福田前次官によるテレビ朝日女性記者へのセクハラが発覚した時期と重なっており、インターネット上には膨大な関連記事が存在する。

 

従って、報道機関や著名な評論家等による記事がgoogle検索の上位に来ることが想定され、実際「女性記者」と「セクハラ」で検索したところ、本ブログに記事はほとんど上位にはヒットしない。

 

けれども、「女性記者」と「セクハラ」に「レイプ」を追加し、3語で検索したところ、なんと、本ブログの第1号記事である セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業が堂々のトップに表示されているではないか。

 

次いで、「女性記者」と「セクハラ」に「不倫」を追加し、3語で検索したところ、これまたセクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業google上で2番目位に表示されている。

 

セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業は、冒頭の導入部分は若干「受け狙い」で書き始めているが、記事全体としては、ヘタな職業ジャーナリストが書いている論考よりもよほど内容的に密度が高く真相を深堀したテキストであると自負していただけに、正直、googleで高い評価をいただいているのは嬉しい限りだ。

 

一昨日まで、女性記者セクハラ被害事件簿の連載で、20の事例を取り上げてきたが、これらの事例の個別事案についても2~3語で検索すると、上位にヒットする記事が多々存在する。

 

例えば、「北海道警察」「女性記者」「セクハラ」の3語で検索すると、トップに、女性記者セクハラ被害事件簿第6号、2番目に女性記者セクハラ被害事件簿第5号、3番目に女性記者セクハラ被害事件簿第1号から第10号までの概要の3記事が順序だって並んでいる。同様に、「神崎」「セクハラ」の2語で検索すると、女性記者セクハラ被害事件簿第9号がトップに表示される。

 

また、一昨日の女性記者セクハラ被害3事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)では、昨年末に話題となった岩手県岩泉町長による岩手日報女性記者へのわいせつ事例について紹介した。これについても、多くの関連記事がネット上に存在する中で、「岩泉町長」「女性記者」「セクハラ」の3語で検索すると上位に表示されている。

 

麻疹(はしか)についてのgoogleヒット状況

 

次に、本ブログの3番目と4番目の記事として掲載した麻疹(はしか)について見てみよう。台湾から沖縄への旅行者に端を発した麻疹(はしか)の流行が社会的に注目を集めているが、筆者は、愚かで馬鹿馬鹿しい事態だ、との見解を有している。おそらく、同様の疑問を感じる人が少なからず存在ことが想定されるが、「はしか」と「騒ぎ過ぎ」、あるいは「麻疹」と「騒ぎ過ぎ」の2語で検索すると、はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさgoogle検索でトップに、次いで2位で、はしか(麻疹)根絶という幻想と脆弱な社会が表示されている。

 

ブログを始めた時期には、匿名でブログを開設したところ誰にも読まれないのではないか、という疑心を抱きつつ、良質な文章を書けば社会的評価が得られるのではないか、という気もしていたところである。果たして、上述のとおり、google検索で比較的上位に表示される記事があるということは、一定の読者を得て評価をいただいていることが裏づけられたと思っている。

 

そんなこんなで、今後も、様々な社会問題、社会現象について放言していきたいと考えているが、次回からは当面は、女性記者問題の続編として、今度は女性記者が不倫の当事者となった事例について連載する予定である。

女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号の概要

女性記者セクハラ被害事件簿の第11号から第20号までの10回にかけて、2004年から2017年にかけて発生し報道されてきた事例について紹介してきた。今回は、この10事例について概説する。各事例の詳細に関心があれば、リンク先の本文を読んでいただきたい。

 

なお、本連載は、女性記者が被害者となったセクハラ・わいせつ事件の詳細な検討が、日本における男女間の権力関係やジャーナリズムの抱える構造的課題を分析する上で重要な基礎資料になりうるのではないか、との基本的認識のもとに、セクハラ問題などへの警鐘と社会的啓発を目的としていることを改めて強調しておきたい。とりわけ、各記事の後半の【ブログ主のコメント】は、このような観点から掘り下げた考察であることをお伝えする。

 

ちなみに、女性記者セクハラ被害事件簿の第1号から第10号までの概要については、こちらをクリック

 

京都府警警備3課長が、飲食店内でNHK女性記者の体を触る

女性記者セクハラ被害事件簿 第11号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/09/212700

京都府警警備三課長の警視が、2004年1月初旬、取材を通じて顔見知りだったNHKの女性記者を京都市内の飲食店に呼び出し、店内で体に触るなどのセクハラ行為をした。NHK側が府警に抗議し、府警監察室が調べたところ、警視がセクハラを認めた。地方公務員法の信用失墜行為に当たると判断し、懲戒処分にした。警視は同日付で退職届を出し、依願退職した。

 

自民党千葉県議が懇談会の席上で、朝日新聞の女性記者の体を触る

 女性記者セクハラ被害事件簿 第12号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/10/193600

2006年6月30日に千葉市内の料亭で開催された自民党県連政調会と県政記者クラブとの懇親会(党県連主催)の席上のこと。岡田啓介県議会議員(54歳)は、20代の朝日新聞女性記者の隣に座り、無理やり体を触ったり、卑猥な言葉をかけたりした上、女性記者の携帯電話にエッチを迫る卑猥なメールを送信した。朝日新聞が抗議し、議員は「理性と記憶を失うほど酔ってしまった」と謝罪するも、党を離党勧告され、最終的に議員を辞職した。

 

長崎県警捜査二課長が、官舎に取材に来た女性記者に性的関係を要求

 女性記者セクハラ被害事件簿 第13号  

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/11/200300

警察庁から出向中の長崎県警の捜査二課長(警視、38歳)が、2006年4月から5月にかけて複数回、夜回り取材で官舎を訪ねてきたテレビ局の女性記者を部屋に招き入れた。女性記者を部屋に入れた二課長は「ネタ(捜査情報)がほしいのか」などと言って、髪をなでたり肩を抱いたり、性的関係を求める発言をするなどのセクハラ行為をした。記者は、精神的ショックで休職。警視は懲戒処分を受けた後、依願退職した。

 

長崎市の部長が、女性記者をホテルに連れ込み強姦する

 女性記者セクハラ被害事件簿第14号(加害者が自殺した二重に悲劇の事例②)

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

長崎市の原爆被爆対策部長は、2007年7月、取材を通じて知り合った20代後半の女性記者を携帯電話で呼び出し、行き先を告げないまま車でホテルに連れ込み、性的関係を強要した。記者は、精神的ショックで休職に追い込まれた。この事件のことが長崎市長の耳にも入り、10月30日夜、市長が直接部長を公舎に呼び出して事情を聞いた。翌31日の朝刊で部長のわいせつ行為が報道された。その日の夜、部長は山道で首を吊り死亡しているところを発見された。その直前、知人に自殺をほのめかしていたという。

 

新潟県関川村の78歳村議が、地元紙20代女性記者にセクハラ

 女性記者セクハラ被害事件簿 第15号  

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/13/203300

2007年6月、取材に来ていた地方紙の20代女性記者に対し、新潟県関川村役場の議員控室で、78歳の村議会議員が「キスしてやるから、こっちに来い」などと発言した。当初、議員は「そんなことはしていない」と反論したが、居合わせた関係者も発言を聞いていた。その後、記者には謝罪したものの、7月3日、関川村議会は臨時会を開き、議会の威厳を損ねたとして、村議に対して、議会で謝罪するよう、賛成多数で決議した。

 

甲子園強豪校の監督と主力選手が、毎日と朝日の新人女性記者に…

 女性記者セクハラ被害事件簿 第16号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

静岡県常葉菊川高校と言えば、高校野球の強豪校の1つであるが、同校の名監督が2006年下旬から毎日新聞の新人女性記者にセクハラ言動を繰り返し、記者は精神的ショックなどで休職した。また、同校の主力選手が、2008年夏、甲子園出場中に宿舎で、今度は朝日新聞の2年生女性記者(前述の毎日記者とは同期)に、公然わいせつ行為を働いた。毎日、朝日の両新聞社は、被害者である一方で、高校野球の主催社でもあり、歯切れの悪い対応であったことが、これを報じた週刊文春や読売新聞から皮肉られた。

 

警視庁の警部が、懇談会で女性記者にセクハラ

 女性記者セクハラ被害事件簿 第17号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/15/204500

2011年6月の夜、警視庁庁舎内で警視庁総務部広報課の職員と、雑誌記者らとの懇親会が開催されていた。この場で、40代の警視庁警部が、『週刊現代』編集部の若手女性記者に、『君、ほんとにかわいいね』などと言い、廊下に連れ出して頭をなでたりした。警部は、この記者を執拗に二次会に誘い、タクシーの後部座席で、記者に密着し『かわいいね』と連呼していたという。記者から報告を受けた上司は、警視庁に抗議した。

 

仙石官房長官(当時)が、懇談会で女性記者に卑猥な発言

 女性記者セクハラ被害事件簿 第18号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/17/200500

時は民主党政権下の2011年12月28日の夜。首相官邸内のホールで、政府高官と内閣記者会との懇談会が開催されていた。懇談会の場で、上機嫌だった仙石由人官房長官が、官房長官番を務める日経新聞の女性記者をつかまえて、卑猥な発言を繰り返した。本件は、民主党嫌いで有名な週刊文春週刊新潮が同じタイミングで取り上げられたことから、民主党政権潰しの謀略のキナ臭さを感じた仙石氏は名誉棄損で提訴し、法廷闘争にまで発展した。

 

神奈川県警副署長が、全国紙女性記者と酒を飲み体を触る

 女性記者セクハラ被害事件簿 第19号

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/18/201400

神奈川県警小田署では、2015年5月頃、放火殺人事件や箱根山噴火などへの対応で多忙を極め、記者も多数詰めかけていた。某日、副署長の警視(53歳)が全国紙の女性記者と酒を飲んだ際、体を触るなどのセクハラ行為をした。女性記者側から抗議があり、副署長は懲戒処分を受けた。県警は処分の事実を公表していなかったが副署長が休職状態にあることに感づいた神奈川新聞が報道して表面化した。副署長は体調不良を理由に依願退職した。

 

岩手県岩泉町長74歳が、地元紙女性記者に抱きつきキスする

 女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/19/120000

岩泉町の伊達町長(74歳)は、2017年10月中旬の早朝、岩手日報の女性記者が取材目的で宿泊していた町内のホテルを訪ね、抱きついて複数回キスするなどのわいせつ行為に及んだ。記者は精神的ショックを受け、休職した。岩手日報は、町長に謝罪と公人としての誠実な対応を要求して報道。町長は、記者が連れ去られる幻聴、幻覚を見たので記者を助けに行ったという不思議な弁解をしたことから、ワイドショーなどでも面白おかしく取り上げられた。SKE48須田亜香里が、番組で自分も高校時代に同様の被害にあったことをカミングアウトし、被害を受けた女性記者を気遣ったことも話題となった。

女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

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 女性記者のセクハラ被害とSKE48の須田亜香里と何が関係あるのか、と疑問を持つ読者もいるかも知れない。その理由をご存知の方も多いと思うが、後ほど触れることとして、まずは事案の説明から。

 

 【加害者】岩手県岩泉町の伊達勝身町長(74歳)

 

【被害者】岩手日報の20代の女性記者

 

【明るみに出たきっけ】

岩手日報』が2017年12月6日朝刊で報道した

 

【事案の概要】

県都盛岡市に北東方向で隣接し、本州一面積が広い町として知られる岩手県岩泉町。同町は、2016年8月30日、岩手に上陸した台風10号の豪雨災害により、20名を超える犠牲を出すなど甚大な被害を受けた。災害復興が急ピッチで進められるさなかに事件は発生した。

 

岩泉町の伊達町長は、2017年10月中旬の早朝、岩手日報の女性記者が取材目的で宿泊していた町内のホテルを訪ね、何度もヘアのドアをノックした。記者が開けると部屋に入り、抱きついて複数回キスするなどのわいせつ行為に及んだ。この女性記者は精神的ショックを受けて、休職した

 

日刊ゲンダイの記事に、地元関係者の発言が載っているので引用する。

 

「女性記者は岩泉から離れた支局勤務で、町議会があると取材に来ていました。その日は議会は開かれていなかったため、何の取材で来たのかは分かりません。宿泊したホテルは朝風呂をやっていて、朝5時30分から営業しています。朝6時でも、宿泊客以外の客の出入りがあります。女性記者は20代に見えるかわいらしい感じの方で、前夜も伊達町長ら4、5人と会食していましたよ。随分、遅い時間にホテルに戻ったそうです」

 

 一方で、加害者側の伊達町長も、わいせつ行為に及んだ後、10月25日からPTSDを理由に入院し、公務に復帰したのは12月5日である。

 

町長の公務復帰前日の4日に、岩和町では、伊達町長の本件わいせつ行為に関する怪文書が町議会議員宛に撒かれた。その怪文書には、町長が示談金500万円で事件を隠蔽しようと工作した、入院理由がPTSDというのは嘘で、わいせつ行為の発覚を恐れての雲隠れである、などと記載されていた。

 

同6日、岩手日報は朝刊の1面で、「岩泉町長が辞職へ」との見出しの記事で同社の女性記者が伊達町長からわいせつ行為を受けたと報道するとともに、同日11時から、専務取締役と総務局長が一連の経緯等について記者会見を行った。

 

「問題の性質を考慮して慎重に対応してきたが、岩泉町内などで一部事実と異なる文書が出回り、さまざまな憶測も出始めていることから報道に踏み切った。今後も誠実な対応を求める。」

 

岩手日報社が出回っていると指摘する文書とは例の怪文書のことであり、示談金500万円が支払われたかのような記載は事実無根であり、看過できない虚偽情報だとして問題視して、自社の紙面での報道に踏み切ったようだ。

 

会見で同社は、事案発生後のいきさつを次のように説明した。女性記者の訴えを受けた同社幹部が、事案が起きた約1週間後、盛岡市内で伊達氏と面会し抗議したところ、抱きついたことだけは認めて謝罪したが、キスとわいせつ目的については否定。同社が謝罪文の提出を求めたが拒否。双方が代理人を立てて協議している最中に怪文書が出回り、同社は態度を硬化。示談交渉には応じず、刑事告訴も検討している旨を会見で表明し、「町長には、謝罪と公人としての誠実な対応を求める」とのコメントを出した。

 

【顛末】

岩手日報の紙面で報じられた12月6日の夕方、町役場に集まった報道陣を前に、伊達町長はぶらさがり取材に応じた。

 

町長の説明では、女性記者とは取材を通じて以前から知り合いで、10月に取材に応じた後、ホテルで複数人で会食したという。翌朝、自宅で顔を洗っている時に「助けて」という記者の声が聞こえてきた。前の日に会食した女性記者が連れて行かれる幻聴に襲われ、彼女を助けるために、宿泊先のホテルに向かった。宿泊している部屋を確認して記者に電話し、部屋のドアを開けた記者を見て「ほっとしてハグしてしまった」という。

 

伊達町長は、台風10号の豪雨災害の直後から激務と心労で眠れない生活が続いており、2017年2月、PTSDと診断された。災害から1年が過ぎた9月以降、幻聴や幻覚が激しくなったという。伊達町長は一連の行為をPTSDの影響によるものと強調し、女性記者に抱きついたことについて「病とは言え、社会通念上、許される行為ではない」と謝罪した。

 

女性記者に対する思いを問われた町長は、「早朝に自分自身は助けに行ったつもりがあっても、やはり、驚いたと思います。たぶん、すごい形相で走っていったと思うし、息づかいも荒かったと思います。大変な恐怖を持ったと思いますし、はなはだ迷惑だったと思う。心からおわび申し上げたい」と陳謝した。

 

女性記者がキスされたと訴えている点では「私にはそういう認識はない」と否定。わいせつ目的ではなく「迷惑行為だった」と繰り返した。出処進退について問われると、「辞職を含めて周囲と協議する」と明言を避けた。

 

結局、町長は8日、町議会に9日付の辞職を申し出て、全会一致で承認された。

 

岩泉町によると、一連の報道を受け、町には6日から8日までの3日間に全国から約100件の電話や50件以上のメールが寄せられ、ほとんどが町長の辞職を促す内容だったという。

 

 

【本件の余波】

今回のケースは、PTSDによる幻聴、幻覚を訴える70代の禿げた爺さん町長が、「助けて」という幻聴に導かれたと主張して女性記者に接近し、抱きついたり、キスなどの行為に及んだ、というネタとしての面白さから、当時、ワイドショーなどでも取り上げられて話題となった。

 

SKE48の須田亜香里は12月10日、TBS系「サンデー・ジャポン」に出演、岩泉元町長によるわいせつ事件を扱ったニュースの中で、自身も、高校時代に全く同じ被害に遭っていた事実をカミングアウトした。

 

須藤は「高校生の頃におじさんに道案内を頼まれて、最後にありがとうと握手を求められて握手をしたら引き寄せられてキスをされたことがあって…」と過去のわいせつ被害を告白。「怖くて硬直して動けなくて、今でも腕を強く引っ張られたりすると、たまに涙がでちゃう時もあるくらい、本当に怖い」との心の傷の深さを明かした。

 

その上で、「今はノックの音を聞くだけでも怖いと思う」「休職しても無理はない」と被害にあった女性記者を思いやった。

 

今回の記事の冒頭で、須田亜香里の写真を掲載したのは、この発言ゆえである。

 

一方、AKB48の指原莉乃は12月17日、フジテレビ系『ワイドナショー』に出演。出演メンバーは、指原ほか松本人志東野幸治古市憲寿と、いずれも安部総理の「飯友」で、「御用タレント」と指摘される面々である。岩泉の伊達町長、それから同じ時期、職員へのセクハラが発覚した福井県あわら村長の2つの事例を取り上げた際、指原は、次のようにコメントした。

 

「もちろん女性が被害に遭うことに違いないし、絶対あってはいけないことだと思うんですけど。でも立て続けにこうなると、市長さんとか町長さんだと、よく思っていない人も多いじゃないですか。だからハニートラップの可能性も今後増えてくるかもしれないじゃないですか」

 

さらに指原は、自身がセクハラやパワハラの被害にあったことはないかと問われ、「本当にないです。言われたことないですし、まわりもたぶんない」と答えた。その上で、橋本市長のセクハラが女性が運転する車の中で起こったことに触れ、「ドライブに行ってるわけじゃないですか」と、女性の落ち度をあげつらうようなコメントをした。

 、

安部総理から「政治家に向いている」とベタ褒めされ、空気を読むことに秀でた才能を持つ指原のこれらの発言については、セクハラ被害を受けた女性を貶めるもので、セカンドレイプとも言える悪質なものだとの批判もなされた。

  

【ブログ主のコメント】

 今回で女性記者セクハラ被害事件簿も20回を数えることになる。ところで、今更ながらであるが、そもそもセクハラって何だろう。折しも5月18日に政府が、衆議院逢坂誠二議員からの質問主意書に対し、「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」とする答弁書閣議決定したことが物議を醸しているところでもある。セクハラは接触型と非接触型に大別できるようであるが、性的関係の強要(レイプ)から、「お姉ちゃん、お茶(お願い)」「これ、セクハラ!」の類の会話に至るまで、非常に幅の広い言動に対して、セクハラの語が日常用語として軽く用いられている。

 

でも、これらピンからキリまでの諸行為を、セクハラの一言で包含するのは、重大な性犯罪行為をむしろ矮小化することにつながりはしないだろうか。もちろん、男性の潜在的女性差別意識に基づく女性蔑視的発言を問題視し、潜在的女性差別意識を解消するための社会運動の必要性も理解できる。重大な性犯罪行為も根源的には、加害男性の潜在的女性差別意識に起因していると言えなくもない。

 

だけど、性的関係の強要、尻や胸をさわる、抱きつく、キスするなどの接触型行為は、強制性交等罪や強制わいせつ罪等に該当する重大な性犯罪である。重大な性犯罪だという社会的認識を高めるためにも、これらの行為には、ある種薄っぺらい日常用語である「セクハラ」の語を安易に用いない方がいいのかも知れない。この意味において、「セクシャル・ハラスメントが刑法等の刑罰法令に該当する場合には犯罪が成立し得るが、その場合に成立する罪は、当該刑罰法令に規定された強制わいせつ等の罪であり、『セクハラ罪』ではない」という逢坂議員の質問に対する政府の答弁は正鵠を射た指摘ともいえるだろう。

 

女性記者セクハラ被害事件簿における20回の連載の中で、わいせつ行為が原因で休職に追い込まれた女性記者が、第6号広島県警署長からの被害)、第13号長崎県警捜査2課長からの被害)、第14号長崎市の部長からの被害)、第16号(甲子園強豪校の監督と選手からの被害)、そして今回第20号の5件で計6人も存在する。また、わいせつ行為を受けた後に、それだけが原因ではないと思われるが、退社に至った女性記者も第3号石川県警巡査部長からの被害)、第7号(社の先輩からの被害)のケースで2人いる。

 

「たかだかちょっとしたセクハラを受けたぐらいで休職するようなウブでヤワな小娘に、記者など勤まらない。プロとして失格だ。」おそらく、マスコミの世界では、このような価値観が今なお支配的であろう。

 

確かに、女性記者の中には、わいせつ行為を受けないよう回避する能力が高かったり、わいせつ行為を受けてもメゲない人も確かに存在する。とは言え、須田亜香里が訴えるように、多くの女性にとって、わいせつ行為は、長年にわたって癒えない傷になりうる重大な問題なのである。

 

マスコミの産業構造上、女性記者が取材相手などからわいせつ行為の被害を受けるリスクが非常に高いことに鑑み、若手女性記者に対し、わいせつ被害を回避・防御する能力を高めるための研修制度を充実させることも重要ではないか。

 

次に、本件に係る別の論点として、地方公共団体と地元紙の特別な関係について付記しておく。女性記者セクハラ被害事件簿第2号において、県警と地元紙が、持ちつ持たれつ、の共存関係にあることを紹介したが、同じ構図が、都道府県知事や市町村長、あるいは地方公共団体と地元紙との関係にも当てはまる。

 

自治体は、全国紙によりも優先して地元紙に手厚く情報を提供し、その見返りとして「提灯記事」を書いてもらい、行政に対する批判記事を回避する。また、地元紙は概して現職知事や市町村長と良好な関係を構築・維持し、首長と地元紙幹部は日頃から非公式に、地元の政財界に関する機密情報の交換を密に行い、地元権力基盤をより強固なものとする。

 

他方、地元紙としても地元政財界に対する発言力を維持し、販売部数獲得、広告収入強化につなげるという共存共栄関係にあるのだ。(さらに余談であるが、県庁や市町村がらみの談合など不正を耳にした住民や内部告発者が、社会正義の観点から地元紙に内々に情報提供した時に、地元紙が行政に密告し、情報提供者が不利益を蒙ってしまう恐ろしい実態もある。)

 

通常、首長と地元紙の力関係は、相対的に前者が優位の関係にあるが、時として両者の力関係が逆転し、地元紙が首長を「支配」する状態が生じることがある。地元紙に牙を向けると、首長は政治生命を絶たれることもあるのだ。

 

最近では、新潟県泉田裕彦前知事が、地元紙新潟日報との対立の末、日報による執拗なネガティブキャンペーンによって退陣に追いやられ、同様に、鹿児島県の伊藤祐一郎前知事が、地元紙南日本新聞の機嫌を損ね、同社に潰されたことは有名である。

 

このように、知事でさえ手のひらで転がすことを物ともしない県内の絶対権力者たる地元紙にとって、たかだか人口1万程度の田舎町長の息の根を止めることなど朝飯前である。で、今回のケースであるが、岩手日報の幹部はヤクザの親分よろしく伊達町長に対し、「うちの可愛い娘を傷ものにしやがって、ごめんなさいで済むと思うな。オマエの命で落とし前をつけろ」と退陣を迫り、刀ではなくペンでもってか弱き町長を切り刻んだのである。

 

否、切り刻んだ、というより、自死に追いやったというのが正確な表現だ。12月6日の時点では、町長は辞任を明確に表明していないにも関わらず、1面肩で「伊達岩泉町長が辞任へ」という大きな見出しを掲げ、町長を辞任に追いこんだのである。地元紙、恐るべし。

 

最後に断っておくが、筆者として、伊達町長をかばったり、岩手日報を貶める意図は全くない。なんと言っても非があるのは町長であって、社員が休職に追い込まれたことに厳重抗議した岩手日報の対応は正当なものである。ただし、今回の顛末の後背には、性的トラブルに係る男女の力関係の問題に加えて、地元紙と地元首長の力関係という別の社会構造問題の存在についても銘記しておくべきである、というのが筆者の見解である。

 

福田事務次官財務省に抗議しなかったテレビ朝日はみっともない、町長に毅然と抗議した立派な岩手日報の爪の垢を煎じて飲むべし、という時評を以前目にしたが、この論者は本質を理解していないのだな、と思えてしまう。

 

【出典】

・2017年12月7日、9日の新聞各紙 ほか 

指原莉乃に関するLITERAの記事

 指原莉乃がセクハラ問題で「ハニートラップの可能性」発言! 男の論理を内面化する指原に聞かせたい、はあちゅうの言葉|LITERA/リテラ

 

【予告】

次回は、女性記者セクハラ被害事件簿の第11号から第20号までの記事の概要まとめを行う予定である。

 

【本ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/23/012930

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/08/194300

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が起こしたセクハラ事件

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

女性記者セクハラ被害事件簿 第19号

【加害者】神奈川県警小田署副署長の警視(53歳)

 

【被害者】全国紙の女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

神奈川新聞が2015年6月30日に報道

 

【事案の概要】

 神奈川県警小田署副署長の警視(53歳)が、全国紙の女性記者と酒を飲んだ際、体を触るなどのセクハラ行為をした。

 

【顛末】

副署長は、6月26日付けで、減給100分の10(1カ月)の懲戒処分を受けた。県警は「公表基準に該当していない上に、関係者からの強い要望がある」として処分した事実を公表していなかった。

 

副署長自身は、6月に入ってから出勤しておらず、30日付で「体調不良」を理由に依願退職した。

 

 

【ブログ主のコメント】

またもや、50代の警察幹部による女性記者へのセクハラ事例である。警察関係者による同様のケースは、このブログの連載で繰り返し繰り返し紹介してきた(参考:女性記者セクハラ被害事件簿第1号秋田県警本部長、第2号広島県警署長、第3号石川県警巡査部長、第6号北海道警察署長、第8号高知県警巡査長、第10号大阪府警副署長、第11号京都府警警備3課長、第13号長崎県警捜査2課長、第17号で警視庁広報課の警部が加害者の事例を取り上げてきた)。

 

おそらく、警察取材の現場では、ポリ公から女性記者へのこの手のセクハラは日常茶飯であり、表沙汰になるのは氷山の一角に過ぎないと考えるべきであろう。本件も、神奈川新聞が報じなければ(あるいは後述のとおり、出稿が1日遅れれば)明るみに出ることなく、葬り去られていた可能性が高い。

 

ちなみに、本件セクハラが発生し、明るみに出た時期、神奈川県警小田原署管内では重大事件が相次ぎ、現場のお巡りさんたちは混沌状態にあった。

 

というのも、同署管内では、湯河原町で2か月前の4月21日に放火殺人事件が発生。さらに、5月6日には箱根山の噴火警戒レベルが1から2に引き上げられた。殺人事件の捜査に、噴火対応で関係行政機関や住民対応などに追われる中、多数の報道関係者が同署に押しかけ、署内は戦場さながらの緊迫した状況にあったと想像できる。

 

そのような中、特ダネをゲットしようと副署長に接近した女性記者が、酒の誘いに応じたところ、セクハラ被害にあったということなのだろう。で、女性記者が上司に相談し、上司が警察側に抗議し、加害者が処分される、という高知県警の2000年の事例(本連載第8号記事参照)以来のパターンを辿ったものと推測される。

 

本件は、関係者が公表を望まなかったので非公表とされていたが、警察署の広報官たる副署長が来る日も来る日も欠勤が続いていることに疑問を感じた地元紙・神奈川新聞が感づいて複数の県警幹部に当たり、記事化されたのだろう。

 

そして、6月30日朝、神奈川新聞が報道し、各社が追っかけ取材に勤しんでいる最中に、次なるスーパー大事件が発生した。同日午前11時半頃、新横浜-小田原間を走行していた東京発新大阪行き「のぞみ225号」の先頭の1号車で、71歳の男が、ガソリンをかぶりライターで火を着け焼身自殺し、車内で火災が発生したのだ。いわゆる「東海道新幹線火災事件」である。さらに同日、箱根山が爆発的噴火を起こし、噴火警戒レベルが3に引き上げられた。

 

もし、今回のセクハラ事案について、神奈川新聞が6月30日の朝刊で報じていなければ(すなわち、出稿が1日遅れていれば)、新幹線火災事件や箱根山噴火関連報道ラッシュが続く中で、本件セクハラ事案ごときは時機を逸してお蔵入りになっていた可能性が高いと思われる。物事はタイミングというものが重要である。

 

【出典】

・『神奈川新聞』2015年6月30日朝刊

・『産経新聞』2015年6月30日ネット配信記事

・『NHK』2015年6月30日ネット配信記事

 

【予告】

次回は、岩手県の某町長から地元紙女性記者が受けたセクハラ事例を取り上げる。

女性記者セクハラ被害事件簿 第18号

 

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【加害者】仙谷由人官房長官(当時)

 

【被害者】日経新聞アラフォー女性記者

 

【明るみに出たきっかけ】

週刊文春』『週刊新潮』の両誌が2011年1月13日号で報道

 

【事案の概要】

時は民主党政権下の2011年12月28日の夜。首相官邸内のホールでは内閣記者会との懇談会が開催されていた。

 

菅直人総理や仙谷長官や秘書官などに、記者やカメラマンを交えた“御用納め”で、ケータリングの軽食が用意され、100人ほどが集まっていた。

 

まず、『週刊文春』の記事を引用する。

 

「懇談会では『小沢(一郎)をぶっ潰せ!』という掛け声があがるなど大盛況でした。仙谷氏の周りには管首相を上回る数の政治部記者が集まり、彼の実力者ぶりを見せ付けました。上機嫌だった仙谷氏は、そのうち一人の女性記者をつかまえて、繰り返しセクハラ発言を始めたのです」(官邸記者)

 

被害に逢ったのは日経新聞政治部で、官房長官番を務めるMさんだった。(中略)

仙谷氏はMさんを隣の席に座らせ、お酒を注がせたりしていた。

 

「仙谷さんはMさんの肩に手を回して記念撮影もしていましたが、そのままMさんの胸に手が触れかねない勢いでした」(別の官邸記者)

 

そして仙谷氏は都内高級住宅街に住むMさんに、

「あんた、いいところに住んでるんだってな」

と探りを入れながら、下ネタを口にし始めたという。

「65歳はぜんぜん(アソコが)立たないからダメなんだよ」

 

政治部記者が解説する。

「仙谷氏は65歳の話をしていましたが、じつは彼は64歳で(笑)、自分はまだ元気なんだというアピールだったようです。その後も仙谷さんはMさんに向かって何度も『立つ』とか『立たない』というセクハラ話を繰り返していて、周りにいた記者はドン引きでした」

 

次に、『週刊新潮』の記事から。

 

彼女は大人の対応で、必死に受け流そうとしているように見えたという。だが、

「明らかにセクハラ。記者の間でも、普通の企業なら完全にアウトだと話題になった」(官邸担当記者)

 

仙谷氏代理人を通じて、「そのような事実はない」と否定。

「そりゃ、女性記者は長官番である以上、彼を“告発”しにいく。仙谷さんはそれを見越しているんでしょう」(前出担当記者)

  

【顛末】

仙谷氏は、『週刊文春』と『週刊新潮』の記事で名誉が傷つけられたとして、発行元の文芸春秋と新潮社に各1000万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴。

 

東京地裁は2012年6月12日、「(仙谷氏の発言は)セクハラに当たると問題視されてもやむを得ない」と指摘、仙谷氏側の請求を棄却した。判決は、仙谷氏が当時、男女共同参画推進本部副本部長を務め、セクハラ根絶を推進する職責があった点も考慮し、記事に公益性と真実性があるとした。

 

【ブログ主のコメント】

本ブログの連載において、大物政治家によるセクハラ事案は、「女性記者セクハラ被害事件簿 第9号」における公明党神崎武法代表(当時)によるケース以来、本件で2例目である。

 

第9号の神崎氏と今回の仙谷氏のケースに共通するのは、セクハラ被害を受けた女性記者本人が直接的に被害を訴えて明るみに出たのではなく、周囲の者がスキャンダルなネタとして興味を持ち、週刊誌で取り上げられたという点だ。

 

もしかすれば、セクハラを受けた女性記者は、加害者に憤って抗議したいという意向を強く有しているものの、相手との力関係から泣き寝入りを余儀なくされている実情を周囲の者が忖度して週刊誌に持ち込んだのかも知れない。

 

あるいは、女性記者自身は、この手のセクハラにはすっかり耐性ができており、本人は全く問題視していないにも関わらず、周囲の者が興味本位で騒ぎ立てているだけの可能性もゼロではないだろう。こういう発想自体、フェミニストからは糾弾されることは必至だろうが、セクハラに全く耐性のない20代のウブな乙女ならいざ知らず、オジさん達に揉まれてきた(「胸を」ではなく「社会の荒波に」的な意味での揉まれである)アラフォー女性であれば、半ば諦めに近い形で、セクハラ発言を聞き流しセクハラオヤジを適当にあしらう術を身につけているかも知れないからだ。

 

ともあれ、大物政治家の女性がらみのスキャンダル、要するにセクハラや不倫問題は、格好の週刊誌ネタである。おっと、「大物政治家の女性がらみのスキャンダル」という書き方自体、大物政治家が男性であることを前提としており、不適当だ。女性政治家であれば、男性がらみのスキャンダルが問題となる。いや、異性とのセクハラや不倫だけでなく、同性相手の性的関係も問題になりうるな、という論点はさておき。

 

ここで十分注意する必要があるのは、大物政治家の性的トラブル報道には、謀略的要素が少なからず存在することだ。時として、ある政治勢力が、政敵を潰すためのネガティブキャンペーンの材料として、最も容易で利用価値が高いのがセクハラ、不倫といった性的トラブルである

 

よく知られていることに、週刊誌各誌や新聞各紙には、それぞれ政治的な色(選好)がある。週刊文春週刊新潮は、元々保守色が強い雑誌で、自民党の広報誌的役割を担うことがあり、いわゆる革新系の野党議員のスキャンダルを大きく取り上げるのがお家芸である。これに対し、週刊現代週刊ポストは、時に政権与党に与することもあれば、時に与党に厳しい姿勢で臨むこともある。

 

このような背景事情を踏まえると、仙谷氏のスキャンダルを、週刊文春週刊新潮が全く同じタイミングで取り上げたことには、保守陣営による民主党政権潰し、あるいは仙谷潰し策動の香りがプンプンするものである。特に、週刊新潮は露骨で、「「赤い官房長官」の正気と品性が疑われる桃色言行録」という見出しに、本文中でも「赤い上に桃色の官房長官」などと、仙谷氏が「エロい共産主義者」であるとの「印象操作」を凝らしている。

 

両誌の報道に、謀略のきな臭さを嗅ぎ取ったからこそ、仙谷氏は、名誉毀損訴訟を提訴したのであろう。結局、東京地裁は、「記事に公益性と真実性がある」とし、仙谷氏敗訴の判決を言い渡している。週刊文春週刊新潮が、純粋に公益性の観点から報道したのか、それとも政治的意図を帯びた計謀であるかの判断はともかくとして、大物政治家たるもの、ちょっとしたセクハラ発言が命取りになりうることを肝に銘じ、李下に冠を正さず、が本件の教訓であろう。

 

【予告】

次回は、神奈川県警の副署長による全国紙の女性記者へのセクハラ事案を紹介する。