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女性記者セクハラ被害事件簿第26号(読売新聞のセクハラ記者の実名が判明!)

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法政大学自主マスのパンフから


 

 3月23日土曜日の夜、読売新聞を除くマスコミ各社(時事、朝日、毎日、共同)が、読売新聞富山支局の男性記者が、懇親会で他社の女性記者にセクハラをして処分された旨を一斉に報道した。

 

他社に先駆けて配信された時事通信の記事を引用しよう。

 

懇親会でセクハラ=読売記者、処分へ―富山


 読売新聞グループ本社は23日、富山支局の男性記者(32)が、報道各社の懇親会で、酒に酔って他社の女性記者にセクハラをしたと発表した。懲戒処分とし、支局長の監督責任も問う方針としている。

 同社によると、男性記者は今月1日夜、富山市内で開かれた懇親会で、女性記者に性的な発言をしたり、体に触ったりした。制止されても繰り返したという。

 読売新聞グループ本社広報部の話 被害に遭われた方、関係者の皆さまに深くおわびします。今後、再発防止に努めてまいります。 

 


【ブログ主のコメント】

ブログ主が、知り合いの女性記者(社名は伏せる)に取材したところ、加害者である読売新聞男性記者の素性が判明した。

 

この男性記者は、法政大学社会学部出身で、2008年に読売新聞東京本社に内定。振り出しは富山支局で、一旦東京本社の花形部署に栄転したものの、すぐに再び初任地に送還されてしまったようだ。法政大学の自主マスコミ講座(自主マス)のOBで、同講座の案内冊子に、ガッツポーズの写真と、「君が周りに刺激を与えてやれ!!」というコメントが掲載されている。

 

この読売記者は、業界内で名うての女好き、セクハラ大魔王だったらしく、同業他社の女性記者を「食い」まくり、さらには、取材先の自治体の若手女性職員にも「お手つき」を繰り返していたようだ。(ただし、モテるタイプなので、強引に手を出すことなく、基本的には合意の上でコトに至っていたようだ。)
ともあれ、酒が入るとセクハラ発言・セクハラ行為が進み、そのうちスキャンダルになるだろうとマスコミ界隈で噂になっていたらしい。

 

(後日追記 ↑でこの読売記者を一方的に貶めるようなことを書いてしまったが、さらにリサーチを進めたところ、必ずしも、読売男性記者にのみ非がある訳ではないとの証言も、被害女性が勤務する報道機関の関係者から得られた。被害を訴えた女性記者は、社内では事を荒たげる困ったちゃんとして有名で、彼女をメン○ラー扱いする人もいたとの指摘があったことも両論併記的に記しておく。)

 

 

ところで、引用した時事通信の記事には、「報道各社の懇親会」「富山市内で開かれた懇親会」とだけ記載されており、具体性が乏しいが、他社の記事によれば、記者だけの懇親会ではなかったようだ。


共同通信の記事には、「報道各社の記者らとの懇親会」「懇親会は富山市内の飲食店で1日夜、複数の報道機関の記者らが参加して開かれた」とある。

出ました!マスコミ得意の「ら」弁。静岡弁の「だら」、東北弁の「ずら」と同様、マスコミが多用する業界方言の「ら」。標準語では「など」であるが、その詳細をボカしたときに用いられる。


要するに、記者だけではなく、記者以外の参加者も同席していたことが確認できるが、その人たちの具体的な属性は明らかにしたくない、という意図がうかがえる。


さらに検索を進めると、朝日新聞の記事には、「懇親会には報道各社や富山県職員計約10人が出席」と明記されている。なるほど、合点がいった。記者仲間と県庁の若手女性記者と一緒に合コンでもやっていたのだろう。

 

ちなみに、本件と同様に、読売新聞の記者が同業他社の女性記者にチョッカイを出したケースとしては、本ブログの記事女性記者セクハラ被害事件簿 第5号で取り上げた1999年のケースも存在する。このケースでの加害記者と、今回の記者への同社処分の内容を比較することで、セクハラを巡る社会的認識の硬化が見て取れる。

 

それにしても、本件は、読売新聞グループ本社の正式発表に基づき、報道各社が記事を配信しているが、当事者である読売新聞のサイトには本件は全く取り上げられておらず、また、本件について報道各社に発表したプレスリリースについても、同社のホームページで確認することができないのは残念だ。

 

 

【ブログ内の関連記事】

・セクハラ、レイプ、不倫が頻発する女性記者という職業

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・女性記者セクハラ被害事件簿 第1号から第10号までの概要

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・女性記者セクハラ被害事件簿 第11号から第20号までの概要

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・女性記者セクハラ被害事件簿 第20号(SKE48須田亜香里も言及して話題となった事例)

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・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が起こしたセクハラ事件

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・女性記者不倫事件簿 第1号から第10号までの概要

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女性記者セクハラ被害事件簿 第25号(鹿児島県警警視、共同通信記者などにセクハラ発言の巻)

久々に、女性記者へのセクハラ事案を紹介する。


3ヶ月ほど前に報道された、やや古い事案であるが、この後、別件事案を紹介するのに先立って、記録として留めておこう。

 

鹿児島県警の50代の男性警視が、同僚(女性警察職員)や取材中の女性記者に対しセクハラ発言をしたことが発覚し、懲戒処分された事案である。


朝日新聞が、2018年12月26日にネット配信した記事を引用しよう。

 

女性記者らにセクハラ、50代警視を減給 鹿児島県警


 20~30代の複数の女性に対し、セクハラやパワハラ行為をしたとして、鹿児島県警は26日付で、県警本部に所属する50代の男性警視を減給3カ月(10分の1)の懲戒処分にしたと発表した。セクハラの被害者には県警職員3人のほか、共同通信社の記者1人が含まれていた。

 県警は計4人のセクハラ被害者のうち、1人について身分を公表しなかったが、共同通信社が同日、鹿児島支局の20代の女性記者に対するセクハラ発言があったとして、県警に抗議したことを明らかにした。

 共同通信社によれば、処分された警視は11月9日、所属していた警察署内で取材中の女性記者に対し、セクハラ発言をしたという。発言内容については、公表していない。

 県警監察課の発表では、警視は2016年3月ごろ~今年11月ごろ、おもに業務中に女性警察職員3人ら知人女性に対してセクハラ発言をし、同年5月ごろ、別の女性警察職員1人にパワハラ発言をしたとされる。

 警視は「世間話で場を和ませようとした。認識が甘かった」と話しているという。職員以外のセクハラ被害者の身分を公表しない点について、「本人の意向で氏名の特定につながる」としている。

 警視は同日付で、警務課付の異動が発令された上、本人の申し出により警部補に降格されたという。

 共同通信社は「ハラスメントは人権侵害で記者の正当な取材活動を妨げ、萎縮させる行為であり極めて遺憾。本日の発表に際し、県警にあらためて再発防止の徹底を文書で申し入れた」とのコメントを発表した。(井東礁)

 
【ブログ主のコメント】

ブログ主は、昨年の5月に、連載企画として、女性記者が被害者となった過去のセクハラ事案を20件紹介した。


この20件のうち、警察関係者が加害者であったケースとしては、

女性記者セクハラ被害事件簿第1号秋田県警本部長、

第2号広島県警署長、

第3号石川県警巡査部長、

第6号北海道警察署長、

第8号高知県警巡査長、

第10号大阪府警副署長、

第11号京都府警警備3課長、

第13号長崎県警捜査2課長、

第17号で警視庁広報課の警部、

第19号で神奈川県警副署長(警視)、
が加害に及んだ10件がヒットし、実に全体の半数が警察関係者によるセクハラであった。(各号数をクリックすると、各記事に飛べるようにリンクを張っている)


いい年をコイたお巡り中堅幹部が、自分の年齢の半分以下、あるいは自分の娘と同年代か、自分の娘よりもさらに年下の、うら若き20代の女性記者にチョッカイを出してしまう構造的背景事情については、過去の記事で繰り返し考察してきた。

 

今回の警視は、「世間話で場を和ませようとした」と弁明しているが、おそらく、特段悪気なく、女性を見たらシモネタを言いたくなるタイプのオヤジだったのだろう。

 

かつては、軽いジョークで済まされたシモネタ談義が、現在では、軽いジョークで済ますことができなくなった事実について、世のオヤジ達の認識は希薄なので、きっと同様の事例は今後も繰り返されるに違いない。

 

 

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・女性記者セクハラ被害事件簿 第16号  

 高校野球強豪、常葉菊川の監督と選手が起こしたセクハラ事件

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/14/200200

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第6号

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例①

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/03/173500

 

・女性記者セクハラ被害事件簿 第14号 

 加害者が自殺した二重に悲劇の事例②

 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/05/12/203300

日韓の国力を冷静に国際比較する(その2) 世界幸福度ランキング2019の結果から

 

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3月20日に公表された「世界幸福度ランキング2019」

 

 このたび、国連から、「世界幸福度報告2019」なるレポートが公表された。というと、誤解を招きやすいので正確に説明すると、国連の理事会なりで承認手続きを経た報告書ではなく、2012年に当時の国連事務総長であった潘基文氏とコロンビア大学ジェフリー・サックス教授が創設した国際的ネットワークである国連「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の支援によって、同年から毎年作成している報告書である(2014年は未実施)。

 

すなわち、国連が組織として公的にオーソライズしたランキングではなく、国連ブランドのもとに参集した専門家によって取りまとめられているものであることに留意が必要である。


ともあれ、このランキングで、日韓がそれぞれ何位にランキングされているかを紹介する前に、世界幸福度ランキングの算定手法について簡単に説明しておこう。

 

このランキングの算定に当たっては、以下の7つの指標についての各国の分布の回帰式を求め、その上で各国の数値を、その合計値(ladder score)が0-10の間の値を取るよう調整して加算される。
人口当たりのGDP
健康寿命
社会的支援(「困ったときに助けてくれるものと信頼できる親類や友人がいますか?」という問いにyesと答えた人の割合)、
人生の選択の自由度(「あなた自身の人生における選択の自由について、満足ですか?」という問いにyesと答えた人の割合)、
寛大さ(「過去1カ月にいくら募金しましたか?」という問いを一人あたりGDPで調整した値)、
政治・社会的腐敗(「あなたの国の政府に汚職/腐敗が蔓延していますか?」「ビジネスに汚職/腐敗が蔓延していますか?」という問いにyesと答えた人の割合の平均値)
Dystopia + residual(最富裕層と最貧困層の所得比、つまり貧富の差を示す指標)

 

なお、①と②については客観的に算定される数値であるのに対し、③~⑥は、米国のギャラップ社が各国で実施した世論調査の結果が用いられている。

 

では、世界幸福度ランキング2019の結果を上位から順に列記してみよう。

1 フィンランド
2 デンマーク
3 ノールウェイ
4 アイスランド
5 オランダ
6 スイス
7 スウェーデン
8 ニュージーランド
9 カナダ 
10 オーストリア

 

ま、1位から10位までは、民主主義が成熟した北欧などの先進諸国が並んでおり、誰もが納得する順位ではなかろうか。では次。

11 オーストラリア
12 コスタリカ
13 イスラエル
14 ルクセンブルク
15 英国
16 アイルランド
17 ドイツ
18 ベルギー
19 米国
20 チェコ

 

11位から20位を見ると、コスタリカイスラエルチェコなどがランクインしているのは意外な印象を受ける。元データを詳細に見てみると、この3国とも、「③社会的支援」と「⑦Dystopia + residual」の項目について比較的評価が高く(社会的支援が行き届き、貧富の差が小さい)、とりわけ、コスタリカチェコは「④人生の選択の自由度」の項目の評価が比較的高く、イスラエルは「⑤寛大さ」の項目の評価が比較的高いことが、トータルで高位となった要因である。

 

イスラエル国民が、自国について「寛大さ(Generosity)」が高いと評価していることは意外であるが、ここで言う「寛大さ」とは日本語における一般的な意味での他民族や隣人への「寛大さ」を意味するものではなく、「過去1か月間に寄付した金額」が評価ポイントであることに留意が必要であろう。

 

続いて、21位以下を見てみよう。

21 アラブ連合
22 マルタ
23 メキシコ
24 フランス
25 台湾
26 チリ
27 グァテマラ
28 サウジアラビア
29 カタール
30 スペイン
31 パナマ
32 ブラジル
33 ウルグアイ
34 シンガポール
35 エルサルバドル
36 イタリア
37 バーレーン
38 スロバキア
39 トリニダード・トバゴ
40 ポーランド
41 ウズベキスタン
42 リトアニア
43 コロンビア
44 スロベニア
45 ニカラグア
46 コソボ
47 アルゼンチン
48 ローマニア
49 キプロス
50 エクアドル

 

あれあれ、本調査対象の156カ国のうち、上位50位までに、日韓とも登場しないではないか。

 

実は、このランキングで、韓国は54位、日本は58位である。日韓とも、「①人口当たりのGDP」「②健康寿命」「③社会的支援」の3項目は比較的高評価であるのに対し、「④人生の選択の自由度」「⑤寛大さ」「⑥政治・社会的腐敗」「⑦Dystopia + residual」の4項目が低評価であることに引きづられて、トータルでは50位以下にとどまる結果となったようだ。


とりわけ、韓国では「④人生の選択の自由度」と「⑥政治・社会的腐敗」の両項目、日本では「⑤寛大さ」と「⑦Dystopia + residual」の項目が極めて低評価であった。

 

ちなみに、過去7回の日本のランキングの推移は、
2012年 44位
2013年 43位
2015年 46位
2016年 53位
2017年 51位
2018年 54位
2019年 58位
である。

 

同様に、韓国の7年間の推移は、
2012年 56位
2013年 41位
2015年 47位
2016年 58位
2017年 55位
2018年 57位
2019年 54位
である。

 

この手の複数の指標を評価するランキングについては、用いる指標の意味合いが常に問題となる(果たして、世界幸福度ランキングの7つの指標を並列的に並べた数値が、各国の客観的な幸福度を意味するものか)し、異なる文化的背景・価値体系の国々を統一的尺度で評価することが妥当なのか、という根本的な疑問が呈されることもあるが、ともあれ、日韓の国際比較という本稿の趣旨からすれば、このランキングによれば、日韓両国は世界的には50~60位程度でドッコイドッコイの国だ、ということになる。

 

前回紹介したパスポートの「実力」では世界1位2位を競っている両国であるが、幸福度の国際比較では先進諸国の中で最下位位争いをしている実態を両国民は認識しておいたほうがいい。

 

一点だけ追記すると、20位以内にランキングされているコスタリカイスラエルチェコにおける各指標の値と、日韓の値を比較検討することによって、日韓両国における社会政策のあり方を考えるヒントが得られるのではないだろうか。

 

 

【出典】

WORLD HAPINESS REPORT 2019

http://worldhappiness.report/ed/2019/

 

 

【本ブログ内の関連記事】

日韓の国力を冷静に国際比較する

(その4):2019年社会進歩指標(Socail Progress Index)の成績は?
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/09/29/184500

(その3):デジタル競争力ランキング2019の結果
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/09/28/140000

 

(その1):パスポートの「実力」は?
https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/03/06/010000

日韓の国力を冷静に国際比較する(その1) パスポートの「実力」は?

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日韓のパスポートの実力は?(写真はイメージ)


 


英国のコンサルティング会社「ヘンリー&パートナーズ」では毎年、国際航空運送協会(IATA)の資料を基に、各国のパスポート所持者がビザなしで渡航できる行き先の数を順位付けした「パスポート・インデックス」なるものを公表している。

 

この指標では、日本は、2018年、2019年に2年連続1位となっている。これについて、先日、ある政治家のブログを見ていたら、「日本のパスポートは世界最強となった。これは、日本の社会や政治、日本人に対する国際的な信頼性が高いことを意味するものであり、安倍政権の地球儀俯瞰外交の輝かしい成果でもある」といった主旨の記載があった。

 

この政治家が誰であったか記憶していないが、別の日の同人のブログ記事では、ネトウヨよろしく汚い言葉で韓国を罵った上で、明確な根拠を示すことなく「韓国は外交力が低く、諸外国からは全く信頼されていない三流国家である」旨の記載を行っていた。


この政治家の頭の中では、
①ある国のパスポートでビザなし渡航できる国の数が多いことは、その国の国際的信頼性の高さを示すものである
②韓国の国際的信頼性は極めて低い
という2つの前提が並列的に存在しているようであるが、ここで、事実関係を検証しよう。


本年1月8日に発表された「2019パスポート・インデックス」では199カ国のパスポート所持者を対象に、227カ国中ビザなしで渡航できる行き先の数を算出して順位を付けしている。上位国は以下のとおり。
1位 日本(190カ国)
2位 韓国シンガポール(189カ国)
3位 フランス、ドイツ(188カ国)
4位 デンマークフィンランド、イタリア、スウェーデン(187カ国)
5位 ルクセンブルク、スペイン(186カ国)


昨年3月に発表された2018年のデータでは、上位国は以下のとおりであった。
1位 日本シンガポール(180カ国) 
2位 ドイツ (179カ国) 
3位 デンマークフィンランド、フランス、イタリア、スウェーデン、スペイン、韓国 (178カ国) 
4位 ノルウェー、イギリス、オーストリアルクセンブルク、オランダ、ポルトガル(177カ国) 
5位 スイス、アイルランドアメリカ、カナダ(176カ国)


その1年前の2017年3月のデータでは、上位国は以下のとおりであった。
1位 ドイツ(158カ国)
2位 スウェーデンシンガポール(157カ国)
3位 デンマークフィンランド、フランス、スペイン、ノルウェー、イギリス、アメリカ(156カ国)
4位 イタリア、オランダ、ベルギー、オーストリアルクセンブルクポルトガル、スイス、韓国、日本(155カ国)
5位 マレーシア、アイルランド、カナダ(154カ国)

 

3年分のデータから明らかなことは、
1)いわゆる欧州先進国などが例年上位にランキングされている。順位は年によって多少前後するが、その差(ビザ不要国数の差)は、せいぜい1~数カ国程度に過ぎない
2)アジアでは、日本、韓国、シンガポールの3国がランクインされており、3国のパスポートの実力は大差ない
ということである。

 

あれあれ? 

先ほどの政治家の
①ある国のパスポートでビザなし渡航できる国の数が多いことは、その国の国際的信頼性の高さを示すものである
②韓国の国際的信頼性は極めて低い
という2つの認識は両立し得ませんね。

 

もし、①「ビザなし渡航できる国の数が多いことは、その国の国際的信頼性の高さを示すものである」のが事実であれば、韓国の国際的信頼性の高さは日本とほぼ同等ということになる。

 

一方、②「韓国の国際的信頼性は極めて低い」のが絶対事実であるのであれば、日本のパスポートでビザなし渡航できる国の数が多いことが、日本の社会や政治、日本人に対する国際的な信頼性が高いことを必ずしも意味するものでもなければ、安倍政権の外交の成果でもなんでもない、ということになっちゃいますね。


筆者自身の見解は、ビザ不要国数という指標は、この単独指標をもってある国の国際的信頼性や外交力の高さを絶対的評価するのは適当ではないが、その国の政治イデオロギーの中立性、宗教的寛容性、社会の安定性に対する国際的な信頼性の高さ、外交力を総合的に判断する指標の1つであると考えている。

 

日韓関係においては、「不幸な歴史」の経緯から両国間で複雑な感情が存在し、日本国内では反韓嫌韓勢力が少なからず存在しているが、韓国と歴史認識等を巡る対立・ワダカマリが存在しない日本以外の国々においては、韓国という国の信頼性が低いといった評価はなされていないと言えるだろう。

 

尤も、上述のとおり、ランキング上位国において、ビザ不要国数の差は、せいぜい1~数カ国程度であり、順位を競うことに本質的な意味はない。だけどおそらく、日本では、官邸から外務省に対し、ランキング1位を実現・維持せよ、との厳命が下され、外務省では、ランキング1位を達成することを最重要懸案事項と位置づけ、かなりのリソースを割いてきたことであろうことが容易に想像できる。

 

同様に、韓国においても、「日本に負けるな、1位を目指せ」をスローガンに、ビザ不要国数を増やすことに外交資源を割いてきたのであろう。

 

この手の国際比較ランキングで高位を獲得することが、自国民の自尊心をくすぐり、時の権力者にとっては政権浮揚の好材料にはなるのだろうが、1位だ2位だと一喜一憂することは本質的には不毛なことであり、国際情勢が激動化・緊張激化する中で、両国とも、もっと本質的で大局的な外交活動を展開するべきであろうに。

 


(補記)
NHKホームページの解説委員室の「解説アーカイブス」には、2018年4月4日の増田剛解説委員による【日本のパスポートが『世界最強』!?」(くらし☆解説)】という記事が掲載されている。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/293822.html

 

この記事で気になったのは、
2018年のランキングを示した表を載せているが、
1位は日本、シンガポール
2位はドイツ、
3位については、「フランス、イタリア、スペインなど」と3カ国のみを明記していること。

 

2018年は、デンマークフィンランド、フランス、イタリア、スウェーデン、スペイン、韓国の7カ国が同数であったのだが、どのような価値判断でフランス、イタリア、スペインを代表として掲げたのであろうか。

 

デンマークフィンランド、韓国など」と表示することもあり得たであろうが、ともあれ、3位として韓国を明示しなかったのは、韓国嫌いの現政権に対する忖度があったのだろうか、気になるところである。
(ちっとググってみたところ、増田剛解説委員はネトウヨから反日・親韓派とレッテル貼りされているようなので、なおさら、韓国を明示することを回避したのかも知れない。)

 

(注)冒頭の写真は、以下の記事における写真をお借りしている。

https://money-academy.jp/power-passport/

 

麻疹(はしか)は、所詮5類感染症に過ぎない …麻疹が怖いと煽るお医者さん、感染症法をきちんと勉強しようね ♪  

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Twitter上では、麻疹こわいというツイートがあふれているけど‥

 


ツイッター上では、医師国家資格保有を標榜する一部の人たちが、麻疹はこわい、などと恐怖を煽る主張を執拗に続けている。また、麻疹患者に係る自治体の報道発表資料をつぶさに引用し、いちいち、○○線が危ない、○○は危険、などと、危険地帯を設定し拡散している医師もいるようだ。はっきり言って、人権意識が希薄な無知蒙昧な輩だとしか言いようがない。

 

一つ断言できることがある。現在、ツイッター上で、麻疹は怖い、怖いと恐怖を煽る主張を執拗に続けている医師たちは、50年前に医療現場にいたら、ハンセン病が怖い怖いと恐怖を煽って隔離・断種政策推進の旗を最前列で振っていたに違いない。全く同じメンタリティーなのだ。

 

麻疹がこわい病気だとホザいている医師たちに聞いてやりたい。ぢゃあ、貴殿にとって、AIDSは怖い病気なのか、B型肝炎C型肝炎は怖い病気なのか。そして、もし、AIDSやB型肝炎C型肝炎が怖くないと明言するのであれば、怖くないこれらの病気と、怖いとホザいている麻疹との違いは何なのか、と。

 

ブログ主は、これまで5回にわたって、麻疹流行騒ぎが馬鹿馬鹿しいと繰り返してきたが、ツイッター上で指摘いただいたコメントへの回答も兼ね、今回の記事では、感染症法における麻疹の位置づけを再確認することとしましょう。

 

その前に、最初に断っておくが、ブログ主は決してワクチン反対派ではない。これまでも明言しているように、自分の子どもには麻疹ワクチンを接種している。ただただ、麻疹流行に対する自治体やメディア、医療関係者の反応が常軌を逸していると指摘したいに過ぎないので、ご了知いただきますよう。

 

あ、それから、「素人が何ヌカす」と、メクジラ立てる権威主義者は、ブログ主も、もしかして医籍番号の入った紙切れを一枚持っているかも知れない、という前提でこの記事読んでみてくださいね。

 

 

感染症法とは

俗に、感染症法、感染症予防法と呼ばれる正式名称「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」は1998年に制定されたものである。法律制定当初は、「感染症新法」と呼ばれることがあったが、何故、「新法」なのか、と言えば、従来存在した「伝染病予防法」「性病予防法」「エイズ予防法」の3つを統合して新設されたからである。

 

他の数多ある法律と比べて、この感染症法のユニークな点は、日本国憲法と同じように、前文が設けられていることである。通常、法律は、第1条に法の目的を規定し、第2条で基本理念を規定するのが常套だ。だけど、感染症法については、その理念や制定経緯が、第2条の基本理念では書ききれないため、わざわざ前文がおかれているのだ。感染症法の前文、第1条、第2条を引用する。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

(前文)
人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。

医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。

一方、我が国においては、過去にハンセン病後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。

このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。

ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。


(目的)
第一条 この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。

(基本理念)
第二条 感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、これらを目的とする施策に関する国際的動向を踏まえつつ、保健医療を取り巻く環境の変化、国際交流の進展等に即応し、新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権を尊重しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。

 

 感染症は、時には文明を存亡の危機に追いやるものである一方で、社会が感染症の脅威を誇張・誤認したり、患者への差別・偏見、さらには特定の感染症に対する隔離政策など重大な人権侵害が行れてきた事実を国家として猛省し、患者の人権尊重をまずは大前提とし、様々な感染症についてそのリスクの大きさに応じて、最小限度の措置を講ずる比例原則の考え方を基本として制定されたのが、現在の感染症法である。

 

感染症法では、感染症蔓延防止のために行政が講じるべき措置として、次のような措置が規定されている。(カッコ内は法律の条番号)


①建物の立入制限・封鎖(32条)、

②交通の制限・遮断(33条)、

③患者からの検体採取等の強制(16条の3)、

④入院の強制(19条、26条)、

⑤健康診断受診の強制(17条)、

⑥就業制限(18条)、

⑦死体の移動制限等(30条)、

生活用水の使用制限等(31条)、

⑨汚染場所の消毒(27条)、

⑩ねずみ、昆虫等の駆除(28条)、

⑪所有物の移動制限、廃棄等(29条)


これらは、感染症の蔓延防止のため、立法権者が都道府県知事等に授権した措置であるが、憲法で定められた基本的人権(身体的自由権や財産権)の侵害に直結するものであり、行政による恣意的な運用が許されるものでなく、各措置が適用可能な対象疾患(感染症)が法律において明確に規定されている。また、法22条の2及び法34条においては、これらの措置について、「感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない」と明記されている。


それでは、各措置が適用可能な対象疾患を具体的に見てみよう。感染症法においては、病原体の感染力や罹患した場合の重篤性、感染経路の違い、サーベイランスの必要性などの観点を踏まえ、様々な感染症を1類感染症から5類感染症まで、大きく5つに分類している。(新型インフルエンザ等感染症や指定感染症、疑似症などの概念もあるが、議論が複雑になるので、ここでは省略する)

 

そして、1類から5類までの類型ごとに、都道府県知事が講じることができる措置の内容は異なっているのだ。1類感染症から5類感染症まで、順に見てみよう。


1類感染症

1類感染症としては、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、痘瘡、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱の7疾患が規定されている。

 

これらはいずれも、致死性が高く、病原体の感染力も高く、患者が1例でも発生すれば、その1例の患者から社会全体に感染症が蔓延し、社会の存続を脅かしうるメチャクチャ怖い感染症である。

 

もしも国内で1類感染症が発生した場合には、蔓延防止のため都道府県知事には、上述の「①建物の立入制限・封鎖」から「⑪所有物の移動制限、廃棄等」まで全ての措置を講じることが認められている。

 

①から⑪までの措置のうち、「①建物の立入制限・封鎖」と「②交通の制限・遮断」の2つは、1類感染症のみに適用される措置である。これは、社会防衛のため、患者が所在する建物を丸ごと封鎖したり、汚染された地域全域を強制的に閉鎖するという、パニック映画にしばしば登場するような究極の強権措置である。

 

いずれにしても、感染症法は、1類感染症から社会を防衛するため、患者本人のみならず病原体に汚染した疑いのある人たちの身体的自由を拘束するような重大な人権侵害も許容しているのである。


2類感染症

2類感染症としては、急性灰白髄炎(ポリオ)、結核ジフテリア、SARS、MARS、特定鳥インフルエンザが規定されている。

 

2類感染症は、1類感染症ほどではないが、重篤性や病原体の感染力が高い感染症であり、①と②の措置の適用とはならないが、患者が発生して際には、③から⑪までの措置を講じることが認められている。

 

「③患者からの検体採取等の強制」「④入院の強制」「⑤健康診断受診の強制」については、患者の身体的自由権を侵害するものであるが、法令上は、ウムを言わさず無理やり強制するのではなく、まずは勧告を行い、本人が拒否る場合に、強制執行することになっている。


3類感染症

3類感染症としては、コレラ、細菌性赤痢腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス、の5つの腸管感染症が該当し、⑤から⑪までが措置の対象となる。

 

コレラ赤痢、腸チフスなどは、かつてはメチャクチャ怖い病気の代表選手であったが、抗生剤の開発などにより致死性が下がったので、1類や2類のように、検体採取や入院を強制すべき感染症ではない。

 

ただし、3類感染症に感染した患者が、飲食店等で従事すれば、利用客に感染させる恐れがあることから、「⑤健康診断受診の強制」「⑥就業制限」の措置対象となっている。また、患者の糞尿を介して病原体が拡散しうるので、都道府県知事が必要と認めるときは、「⑦死体の移動制限等」「⑧生活用水の使用制限等」の措置対象となる。


4類感染症

1類から3類感染症以外で、主に動物等を介してヒトに感染する4類感染症は、ヒトからヒトには感染しないものが多いが、蔓延防止のため、必要に応じ、「⑨汚染場所の消毒)」「⑩ねずみ、昆虫等の駆除」「⑪所有物の移動制限、廃棄等」の3つの措置が適用対象となる感染症である。

 

具体的な疾患としては、E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病炭疽鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ以外)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病の10疾患が法律に明記されるとともに、日本脳炎デング熱、レジオネラ症などが政令で定められている。

 

黄熱や狂犬病炭疽など、いかにも怖そうな病気もラインナップされているが、①から⑧までを適用してまで社会防衛すべき感染症ではない、という位置づけである。

 

5類感染症

最後に5類感染症であるが、これは、行政において発生動向調査を行い、国民や医療関係者に情報提供すべきとされる感染症である。ある程度は国民の健康に影響を与えるおそれがあるものの、社会においてありふれた感染症であり、患者の権利と蔓延防止の必要性を比較考量すれば、社会防衛の名のもとに、患者の身体的自由権や財産権を侵害することが一切許容されず、①から⑪までのいずれの措置の対象とはならないのが5類感染症である。

 

具体的疾患としては、インフルエンザ、ウイルス性肝炎(A型、E型を除く)、クリプトスポリジウム症、AIDS、性器クラミジア症、梅毒、麻疹、MRSAの8疾患が法律に明記されるとともに、風疹や水痘、百日咳などが省令で定められている。

 

5類感染症の中で麻疹だけ例外?まさか!

ここで、感染症の専門家が、「インフルエンザとB型・C型肝炎クリプトスポリジウム症、AIDS、性器クラミジア症、梅毒、麻疹、MRSAとでは、感染経路や好発年齢、症状、発症後の経過、感染防御手法等が大きく異なり、これらを同列に扱うのは全くナンセンスだ。法律がおかしい」と反発したくなる気持ちも理解できなくはない。

 

だけど、いずれも、社会においてありふれた感染症であり、患者の権利と蔓延防止の必要性を比較考量すれば、社会防衛の名のもとに、患者の身体的自由権や財産権を侵害することが一切許容されない、その程度の感染症に過ぎないという点では共通するのだ。

 

考えてみるがいい。B型肝炎C型肝炎、あるいはAIDSの患者一人ひとりの生活状況や交通移動ルートを根掘り葉掘り調べ上げて暴き立て、「怖い怖い。伝染しないようくれぐれも気をつけよう」なんてパニックを誘発するような広報をする自治体があるだろうか。あるいは医者がこんな発言すれば、100%確実に医道審議会送りで行政処分ものだ。

 

インフルエンザやクリプトスポリジウム症、性器クラミジア症、梅毒、MRSAも一緒だ。これらの病気でも、死に至る患者は存在する。だけど、致死性の怖い病気だと恐怖を煽ったり、患者のプライバシーを暴くようなイカれた広報を行う自治体など存在しない。むしろ、地域住民に対し、過度に恐れず冷静な対応を呼びかけるのが行政の使命のはずだ。市民がパニックを誘発しないよう、行政が冷静な広報を行うべきなのは、1類から4類感染症であっても事情は同じだ。

 

にもかかわらず、何故か、あまた存在する感染症の中で、唯一の例外として、たかだか5類感染症の1つである麻疹だけは、医学界が「怖い怖い。伝染しないようくれぐれも気をつけよう」なんて主張を展開し、行政も追従して、致死性の怖い病気だと恐怖を煽り、患者のプライバシーを侵害するイカれた広報が平然と行われる。医学界や行政が結託して、社会の存続を脅かす重大事態が発生したかのごとく厳戒態勢を取るよう市民に呼びかけ、官製パニックを創出して嬉々としている様は、どう考えても正気の沙汰ではない。

 

ここまで麻疹騒ぎの愚かさを縷々述べても、それでもなお、「麻疹ウイルスは感染力がメチャクチャ高い上に、感染者の1000人に一人は死ぬし、SSPEのリスクもあるので、やっぱメチャクチャ怖い病気であることは歴然とした事実だ」とムキになってノタまう輩がいるかも知れない。

 

確かに、ライノやコロナなどが原因の普通の感冒と加べると麻疹の症状は比較的重いし、免疫不全状態の者が麻疹ウイルスに感染した場合には時に命取りになることはブログ主も否定しない。

 

だけどね、基礎疾患を有しないごく普通の幼児にとっては、なんだかんだ言って、麻疹は、ごくごくありふれた感染症の1つに過ぎない。

 

ではもう一度聞こう。HBVは怖いウイルスなのか、否か。

 

HBVは、空気感染しないもののメチャクチャ感染力は高く、AIDS患者の唾液をバケツ一杯飲んでもHIVには感染しないという比喩的表現との対比において、活動性慢性B型肝炎患者の血液をたった一滴25メートルプールに垂らしても、プール水は感染力を有することがある、というのは公言できないが事実だ。半ばタブーであるが、保育所で、B型肝炎の患児から健康な児童がHBVに感染した蓋然性が高いケースは無数にある。HBVに感染すると、しばしば急性期・亜急性期に劇症肝炎で命を落とすし、キャリアとなって、数十年後に肝硬変や肝がんを発症して死に至ることもある。

 

だけど、小生はHBVが怖い病気だとは思わない。同様に、麻疹についても、特別な社会防衛を講じるべき怖い病気とは思わない。地球上に生存する人類は日常生活を営む上で、日々、様々な健康リスクにさらされている。HBVも麻疹ウイルスも、ヒトが生きていく上で遭遇する様々な健康リスクの1つに過ぎない。HBVが怖い、麻疹ウイルスが怖いというのであれば、極論であるが、人間を辞めるしかない。

 

原因不明のSIDS、先天性・後天性の様々な病気、交通事故などの不慮の事故、自然災害などなど、子どもの命を奪う要因は無数に存在する。そんな中にあって、基礎疾患を全く有しない健康な幼児が、麻疹発症後に重症化し、死に至る確率は非常に低いものであり、ヒトが生きていく上で遭遇する他の様々な健康リスクとの対比において、所詮数多あるリスクの一つに過ぎない。


最後に、更に火に油を注ぎます

この文章を読んでいて、ハラワタが煮えくり返っている小児科医がいれば、さらに火に油を注ごう。

 

「ワクチンの副作用が心配なんです」と不安を訴える保護者に対し、「全然問題ないよ」と答える小児科医。それでも、「だけど、全く副作用がない訳ではないでしょ」と食い下がる保護者を面倒に感じつつ、「副反応が全くない訳じゃないけど、世の中ゼロ・リスクなんて存在しないよ。ゼロ・リスクの追求は不健全!」と口にした、あるいは心の中で呟いている小児科医は少なくないはず。

 

そんな小児科医様に、このフレーズをそのままプレゼントしよう♪
「麻疹に罹って、全く重症化しない訳じゃないけど、世の中ゼロ・リスクなんて存在しないよ。ゼロ・リスクの追求は不健全!」


ともあれ、ごくごくありふれた取るに足りない感染症の1つ、その程度の麻疹による子どもへの健康リスクを、さらに引き下げたいと考える親がいれば、ワクチンを接種すればいいだけの話だ。もっとも、ワクチンの効果には限界があるので、自分の子どもへのワクチン接種を拒否る親がいても決してネグレクトではないし、他の子どもへの感染リスクを高めたとして糾弾される筋合いはない。

 

麻疹についてリスク認知の歪んだ医師たちの中には、「予防接種を拒否する親がいても社会を守るために、ワクチン接種を強制すべきだ」、なんて主張する奴も存在するようだ。しかし、感染症法の制定経緯や理念等に照らせば言語道断だ。

 

所詮麻疹のような5類感染症は、社会においてありふれた感染症であり、患者の権利と蔓延防止の必要性を比較考量すれば、社会防衛の名のもとに、患者の身体的自由権や財産権を侵害することが一切許容されない、その程度の感染症に過ぎない。

 

予防接種の強制は、究極の身体的自由権侵害行為であり、法治国家日本では、1類感染症であったとしても、到底認められるものではない。いわんや、たかだか5類感染症ごときで、強制接種はあり得ないんだよ。

 

 

ついでに述べておくと、「麻疹患者を隔離せよ」とツイートする医師もいるようだが、これも感染症法に照らせば論外の暴言である。感染症法では、1類感染症及び2類感染症については、行政が患者を強制的に入院させる権限を有しているものの、それ以外の感染症については、隔離という発想はそもそも存在しない。3類であろうが、5類感染症であろうが、患者が、憲法で保障された身体的自由権を侵害され、移動が制限されることはあってはならないのだ。

 

仮に、麻疹患者が自由に外出し、その結果、当該患者が他人に感染させたとしても、何ら罪にはならないんだよ。繰り替えすけど、麻疹は、ごくごくありふれた感染症の1つに過ぎず、感染(うつ)し、感染(うつ)されることは社会生活を営む上での日常のひとコマに過ぎず、麻疹を感染されることは社会生活を営む上で受忍すべきリスクである、というのが感染症立法者の意思なのである。

 

ここまで書いちゃうと、かなり原理主義者じみてきてしまった。基礎疾患を有しない健康人だけならともかく、先天性免疫不全者など、健康弱者、マイノリティーへの配慮を著しく欠落した空理空論、暴論だ、といった批判は容易に想定されるところである。筆者は、決して麻疹患者が自由に外出することを推奨している訳ではない。麻疹患者の外出は道徳的に非難すべき愚行である。

 

だけど、健康弱者の人権を最大限考慮してもなお、現行法の解釈としては、麻疹の流行は社会生活を営む上で受忍すべきリスクの1つであることに変わりなく、先天性免疫不全者など健康弱者の麻疹予防のためには、個人免疫を増強するため予防接種の徹底が不可欠であろう。

 

最後に更に付言しておくと、麻疹患者が自由に外出して他人に感染させるのは「バイオテロ」に等しい暴挙だ、といった趣旨の医師によるツイートを目にしたことがある。だけど、医療関係者が、安易に「バイオテロ」という言葉を使うのも注意しましょうね。

 

感染症法では、バイオテロの対象となりうる病原体を、特定病原体等として、一種病原体等から四種病原体等までに分類しているが、麻疹ウイルスは特定病原体等に該当するものではない。素人が、比喩的に「バイオテロ」の語を使うのならまだしも、医師が安易に患者を名指しして用いると、重大な名誉既存、人権侵害行為ですからね。

 

最後に

筆者は、幼児期に麻疹ウイルスに自然感染したので、終生免疫が強固に獲得されており、残念ながら、麻疹ウイルスに再感染したくても感染できない体である。でも、もし、麻疹ウイルスに再感染することがあって、自分が感染した事実を病院や自治体が公表してプライバシーが侵害され、また、自治体等の公表した情報をツイッター等に転載し、感染者である自分のことをバイキン扱いする医師がいたら、名誉毀損で提訴するだろう。

 

裁判したら、絶対にオイラが勝訴し、プライバシーを暴き立てた自治体や、それをツイートした医師が100%敗訴するのは確実だ。

 

ツイッターで、麻疹は怖い、怖いと恐怖を煽る論陣を張っているお医者さん達、感染症法についてきちんと勉強しましょうね。

 

 

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麻疹(はしか)を馬鹿騒ぎする箕面市 vs 健全な大阪府医療対策課

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この病院における麻疹症例の公表を巡って市と府が対立


 

今月上旬の大阪「あべのハルカス」店員における感染事案に端を発し、麻疹の流行が報じられてきた。感染事例が報告された自治体においては、患者の感染経路や生活状況を根掘り葉掘り調べ上げ、詳細に記者発表するのがブームとなっているようだ。この状況について、ブログ主は、先日の記事「またしても、はしか(麻疹)狂想曲が奏でられている - 麻疹流行を騒ぎ過ぎる不健全な社会」において、次のように批評した。

 

たかだか麻疹(はしか)ごとき感染症に対し、自治体の保健当局(保健所)が、あたかも社会の存続を脅かしかねない天然痘やエボラ感染症、クリミア・コンゴ熱のような致死性が極めて高い一類感染症でも発生したかのごとく、一例一例、感染経路や交通移動ルート等について詳細な疫学調査を実施し、人権侵害につながりかねない恐怖を煽るプレス発表を平然と行っている様は正気の沙汰とは思えない。

 

自治体の保健当局の連中は、一類感染症と五類感染症の違いをそもそも理解しているのであろうか。はしかのような所詮五類感染症については、本体的には社会防衛よりも患者のプライバシー保護のほうが、感染症法の理念に照らし重要性が高いことを認識しているのだろうか。

 

国立感染症研究所による誤ったリスク認知の洗脳を受けてしまった自治体保健所職員が、はしか症例が発生した際、その必要性等について何ら疑問を感じることなく不毛で無駄な追跡調査や広報に職務として全身全霊取り組み消耗している様は、気の毒だし滑稽ですらある。

 

 

今回は、正気の沙汰とは思えない馬鹿げた自治体の対応に関し、基礎自治体広域自治体の間(具体的には、箕面市大阪府)の攻防について、記録に留めるべく紹介しよう。

 

2月13日に、NHKが「「はしか公表しないよう」大阪府池田保健所が病院側に伝える」という2分29秒のニュースを独自ネタ(スクープ)として報じるとともに、Webにも原稿が掲載された。(記事は、この記事の末尾に掲載。ただし、既に公式ホームページからは掲載期限切れで削除されている)

 

記事の内容を簡単に要約すると、「箕面市立病院で1月下旬にはしかの患者が確認され、詳しい状況を公表しようと考えていたところ、大阪府の池田保健所から公表するなと指摘された。ただ、病院側は、広く注意を呼びかける必要があると判断し、周辺の医療機関に情報提供した」ということのようだ。

 

この記事は、一見、中立的な報道を装っているが、麻疹患者発生の事実を保健所が隠蔽しようとした、との批判したい意図があからさまである。NHKの独自ネタ(スクープ)であったこの情報は、共同通信などの報道機関も後追いし(末尾の引用を参照)、池田保健所の対応を問題視する論調が拡散した。

 

そして、10日後の23日夕方には、NHKが続報的に、「大阪箕面市で新たに はしか患者」と題するニュースを報じた。テレビ、ラジオで報道されたかどうかは不明であるが、23日19時38分に、NHKの関西 NEWS WEBに掲載されている(末尾の引用を参照)。

 

この23日の記事の要旨は、「2月21日に受診した患者1名が麻疹と診断され、箕面市の独自判断で公表し、この患者が受診した時間帯に病院を訪問した人たちに注意喚起を行っている。ただし、所管する池田保健所では今回の患者について発表していない」という内容で、13日の記事同様、麻疹患者について情報開示しない保健所の姿勢を批判する意図が行間から滲み出ている。

 

そして、23日夕刻のNHKの記事掲載から遅れること約2時間、同日21時41分には、毎日新聞が「20代男性がはしか感染 大阪・箕面市が発表 保健所は公表断り」と題する追っかけ記事をウェブサイトに掲載している。この毎日新聞の記事は、有料記事の設定なので、一部しか読むことができないが、内容はNHKの記事の単なる二番煎じであろう。

 

記事の内容はさておき、ここで注目したいのは、この毎日の記事を引用して、箕面市の倉田哲郎市長が、次のように二言ツイートしていることだ。

 

 

なるほど。現場の保健所ではなく、大阪府本庁の医療対策課が公表に待ったをかけたのか。箕面市の倉田市長様のツイートのお陰で、箕面市立病院における麻疹患者公表を巡る裏事情が明らかとなったことについては、同市長に心から敬意を表したい。

 

が、しかし、である。情報公開について大阪府本庁の消極的姿勢を非難しつつ、自らの開示姿勢を自画自賛する政治的意図が明らさまであるし、感染症対策の本質について倉田市長は余りにもナイーブだとしか言いようがない。ま、倉田市長は元郵政官僚なので、郵便、電波には精通していても、感染症問題はズブの素人だ。

 

自称行政ウォッチャーでもあるブログ主としては、大阪府本庁において、麻疹について積極的情報開示を控える判断をした実質的責任者が誰なのか、大阪府の医療対策課長なのか、その部下の係長レベルなのか、それとも課長の上司の部長や室長なのか、そして、その責任者は事務官なのか技官(医師)なのか、非常に興味深いところである。

 

ちなみに、ちょっこら大阪府のホームページをググッたところ、現在の課長は、田邉雅章氏。田邉氏は、もともと呼吸器科医師でICD(インフェクションコントロールドクター)でもあったようなので、臨床感染症の専門家だ。大阪府庁に入庁してからも、新型インフルエンザ等対策やエボラ感染症、中東呼吸器症候群(MERS)、デング熱などの対策に従事しており、感染症対策は得意分野のようだ。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3603/00000000/ishi6.pdf

 

感染症対策の経験豊富な医師でもある大阪府医療対策課長自身が、感染症法の理念等に照らして、麻疹ごときに馬鹿騒ぎをするのはナンセンスであると正常な判断力に基づき、麻疹に係る情報公開について慎重な対応を講じたのだろうか。あるいは、麻疹のみならず風疹やインフルエンザの流行続きで疲労困憊状態にある医療対策課や保健所のスタッフの負担軽減を図るため、労務管理の観点から、在阪メディアの沈静化を目指したのだろうか。

 

ともあれ、感染症法の制定経緯や理念、麻疹についての正確な科学的知見を理解すれば、麻疹症例がたかだか一例発生したことで行政が騒ぎ立てることが滑稽至極の愚行であることが判るはずだ。 当面、大阪府医療対策課においては、マスコミや麻疹ワクチン礼賛派医師などから批判が殺到するかも知れないが、これら無知蒙昧なヤカラからの批判に屈することなく、毅然とした対応を続けてほしい

 

 

(参考)2月13日のNHK記事、翌14日の共同通信記事、23日のNHKの記事

 

「はしか公表しないよう」大阪府池田保健所が病院側に伝える
2019年2月13日NHKの1分29秒のニュース)

大阪府内ではしかの感染が相次ぐなか、先月はしかの患者が出た大阪 箕面市の病院が情報を公表しようとした際に大阪府の保健所が公表しないよう伝えていたことが関係者への取材で分かりました。


大阪府内ではことしに入ってからはしかの患者が急増していて、今月3日までのおよそ1か月間に報告された患者の数は38人と、すでに去年1年間の2倍を超えています。


このうち箕面市を含む「豊能地域」では去年12月に旅行先のマレーシアから戻った男性がはしかを発症し、この男性が受診した箕面市立病院などでは、これまでにこの男性を除く13人がはしかにかかっています。


関係者によりますと箕面市立病院が先月下旬、2人の患者が出た時点で詳しい状況を公表し注意を呼びかけようとしたところ、大阪府の池田保健所から「患者が不特定多数の人に接触している状況ではない」などとして、公表しないよう伝えられたということです。


ただ病院側は、広く注意を呼びかける必要があると判断し、周辺の医療関係者に伝えたということです。


池田保健所はNHKの取材に対し「ほかの医療機関に与える影響などを考慮して公表は感染のおそれが不特定多数になってからにしたいと考えた。ただ、保健所には情報の公表や非公表を指示する権限はなく、公表を拒否したつもりはない」と説明しています。


専門家は、はしかは感染力が強いため速やかに情報公開する必要があると指摘しています。


感染症対策に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「詳しい背景が分からないのでよしあしは判断できないが、感染症は、まだ感染していない人にできるだけ早く注意を呼びかける必要がある。また、医療機関にも状況を早く伝えないといけない。どのような状況ならどの程度の情報を公表するのか事前のルール作りが大切だ」と話しています。

 

保健所がはしか発生病院公表せず 大阪・池田、「追跡できる」
2019/2/14 12:27 2/14 14:02updated
©一般社団法人共同通信社

 はしか患者が出た大阪府箕面市箕面市立病院から公表するかどうか1月下旬に問い合わせを受けた池田保健所(同府池田市)が「患者が接触した先が不特定多数ではなく、個別の調査で追跡できる」と返答し、非公表にしていたことが14日、取材で分かった。同保健所は「対応に問題はなかった」としている。


 はしかは感染力が非常に強いとされる。同病院では既に複数の患者が出ており、感染が広がっていると判断。病院自ら箕面市内の他の医療機関に対し情報提供した。


 池田保健所のホームページでは2月8日付で住民へ注意を呼び掛けているが、エリアや医療機関の内訳は明らかにしていない。

 

大阪箕面市で新たに はしか患者
02月23日 19時38分(NHKの関西 NEWS WEB)

21日に大阪・箕面市の市立病院を受診した男性患者1人が「はしか」と診断され、箕面市では同じ時間帯に病院を訪れた人たちに注意を呼びかけています。


箕面市立病院によりますと、2月21日に高熱が出るなどして病院を受診した箕面市の男性1人が「はしか」と診断されたということです。


この男性は数日前から高熱が出ていて、当初、別の診療所を受診したあと箕面市立病院に来たということで、症状が重いため入院していますが、今は快方に向かっているということです。


このため箕面市立病院は、21日午前10時から午後1時の間に病院を訪れた約400人に、注意を呼びかけるお知らせを送ったということです。
所管する池田保健所では今回の患者について発表していませんが、箕面市では広く注意を呼びかける必要があるとして、独自に公表したということです。


「はしか」は最初は発熱やせきなどかぜのような症状で、その後、発疹が出るということで、箕面市や病院は、はしかを疑う症状があれば事前に医療機関に連絡して速やかに受診してほしいとしています。

 

 

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フィリピンでの麻疹(はしか)流行に対し、予防接種は本質的解決にならない

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フィリピンにおける麻疹(はしか)流行の温床であるスラム(イメージ写真)



筆者が昨年4月に書いたブログ記事はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ
を巡って、某医師限定会員制サイトにおいて、「またもや反ワクチン派の素人が、愚かなデマを撒き散らしている」と罵られている。

 

このブログ記事を読んで、小生のことを反ワクチン派とレッテルを貼る医師は、よほど事理弁式能力(知能)が低いヤカラであるとしか思えない。

 

これまでの関連記事を素直に読んでいただくと明らかだと思うが、小生は、はしか(麻疹)ワクチンについては、決して反ワクチンではない。私事であるが、自分の子供にも、はしか(麻疹)ワクチンは打っている。数多あるワクチンの中では、最も臨床的有用性の高いワクチンであると考えている。HPVワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルエンザ・ワクチンといった、凡そワクチンと呼ぶには値しない「百害あって一利なし」のクソと、はしかワクチンを同類扱いするのは誤りだ。

 

筆者は、はしか(麻疹)ワクチンの臨床的有用性自体は否定していない。ただただ、接種率を上げたいがために、医学界や行政が、はしかの健康リスクを誇張し、必要以上に恐怖を煽る不適切な広報をしていることを問題視するとともに、WHO(世界保健機関)が推進するはしか根絶計画なんぞ土台無理で果かない夢物語だ、と主張しているに過ぎない。

 

はしかの健康リスクについて、厚生労働省では、「死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人と言われています。」と主張しており、マスコミ報道でも、はしかは致死性の感染症であると言及されることが多い。沖縄県立中部病院の高山義浩医師は、ハフスポストの記事の中で、「いま、日本では約100万人の出生ですが、その全員がワクチンを接種しないことで麻疹に感染してしまうとしたら、毎年、約千人の子どもたちが死亡するでしょう。」と答えている。https://www.huffingtonpost.jp/yoshihiro-takayama/measles-20180426_a_23421172/

 

だけど、昨年4月のブログ記事「はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ」でも記載したとおり、日本のような先進国において、はしかの死亡率が0.1%というのは嘘っぱちだ。

 

先天性の免疫不全をはじめ何らかの基礎疾患を有する乳幼児が、麻疹ウイルスに感染すると、しばしば重篤化し、最悪の場合、命取りになることは筆者も否定しない。NICUや重症心身障害児施設などでは、絶対に麻疹を持ち込んではいけない。

 

だけど、特段基礎疾患がなく、日本でごくふつうに食生活を送っている子どもであれば、はしかを発症したとしても、1週間程度は、グロテスクな全身皮膚症状がみられるが、たいてい何ら後遺症を残すことなく1~2週間後には全快するはずだ。

 

ただし、衛生状態、栄養状態、医療水準が劣悪な発展途上国においては話は別だ。前置きが長くなったが、今回の本題はここからだ。

 

先日のブログにも書いたが、現在、フィリピンではしかが爆発的に流行しており、今年に入ってこれまでに130名以上がはしかで死亡している。2月19日のNHKニュースでも報じられている。

 

 

フィリピン はしかが猛威 患者8400人以上 130人余死亡

2019年2月19日 16時19分

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190219/k10011820131000.html?utm_int=word_contents_list-items_001&word_result=はしか

日本で感染の拡大が懸念されるはしかですが、フィリピンでは、ことしに入って8400人以上の患者が確認され、130人余りが死亡するなど猛威をふるっていて、ドゥテルテ大統領が国民に予防接種を呼びかける事態となっています。

フィリピンではことしに入ってから、首都マニラがあるルソン島などではしかの感染が広がっていて、現地の保健省によりますと、今月16日までの患者の数は8443人に達し、136人の死亡が確認されています。

はしかで亡くなった人は去年の同じ時期と比べ5倍に増えていて、およそ半数は1歳から4歳の子どもだということです。

こうした事態を受けて、ドゥテルテ大統領はテレビメッセージで、はしかは致命的な合併症を引き起こすおそれがあると警告したうえで、国民に予防接種を受けるよう呼びかけました。

今月11日には横浜市の10代の女性がフィリピンからの帰国後にはしかの感染が確認されていて、マニラにある日本大使館はフィリピンへの渡航者に対して感染が疑わしい場合はすぐに医療機関で受診するよう呼びかけています。

 

このニュース記事を読むと、一見、「はしかは致死性の感染症である」という厚生労働省や医学界の主張を補完しているように思えるかも知れない。しかし、所得格差が著しく、衛生状態、栄養状態、医療水準が劣悪な環境におかれた貧困層の子どもたちの存在が深刻化している発展途上国におけるはしかの流行と、先進国における流行とは全く異次元の現象である。

 

衛生状態の劣悪な環境に居住し、栄養状態の不良の貧困層の子どもたちは、抵抗力(感染症防御のための免疫力)が脆弱であり、元からはしかを発症した際に重症化しやすい境遇におかれている。フィリピンにおけるはしかによる死亡者の大半はスラムに居住する最貧困層の子どもたちであって、途上国であっても衣食住に不自由しない中所得者層以上の階級で、はしかによる死亡者はほとんどいないはずだ。


貧困層の子どもたちを、はしかから救う、という名目でワクチン接種を推進すると、何が起こるのか。確かに、一時的にはしかの流行は抑制されるだろう。しかし、元より栄養状態の劣悪な子どもたちは、免疫応答が不十分であり、ワクチンを接種したとしても、免疫記憶の獲得が不十分で持続せず、数年後には麻疹ウイルスに対する感受性が高まり、ウイルスに感染してしまう可能性が高い。元の木阿弥だ。

 

また、最貧困層の子どもたちが、麻疹ワクチン接種により麻疹ウイルスへの感染が防御され、はしかによる重篤化を免れたとしても、麻疹ウイルスほど重篤性の高くない呼吸器感染症や腸管感染症に罹患し、それによって命を落とす危険性が残存する。

 

麻疹ウイルスほど重篤性の高くない呼吸器感染症や腸管感染症への罹患を防ぐため、例えば、ロタワクチンやRSワクチンが開発されている。これらはそれぞれのウイルスへの感染を防御するためのワクチンであり、ロタウイルスやRSV以外にも脅威となりうる病原体は無数に存在する。

 

結局、途上国における最貧困層の子どもたちをはしかを始めとする感染症から救うには、ワクチン接種というアプローチは限界があり、子どもたちを貧困状態から解放し、衛生状態や栄養状態を改善し、医療水準を引き上げることが、唯一にして最大の解決策である。

 

貧困状態を放置し、予防接種キャンペーンを強化・徹底したところで、何ら本質的な解決にはつながらない。AC(公共広告機構)や「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」の広報に触発されて、途上国の子どもたちのために予防接種のために募金することが尊い善意だと信じている人には申し訳ないが、貧困や低栄養状態を直視することなく予防接種を推進するのはただの自己満足、偽善に過ぎないのだ。

 

 

 

【本ブログ内の関連記事】

・はしか(麻疹)流行騒ぎの愚かさ、馬鹿馬鹿しさ
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/27/010647

・はしか(麻疹)根絶という幻想と脆弱な社会
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2018/04/28/015846

・またしても、はしか(麻疹)狂想曲が奏でられている - 麻疹流行を騒ぎ過ぎる不健全な社会
 https://syakai-no-mado.hatenablog.com/entry/2019/02/17/165000